かるかん(明石屋公式サイトより)

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鹿児島県の代表的な菓子「軽羹(かるかん)」のメーカーが、原材料の確保に頭を悩ませている。

主原料の自然薯の調達が鳥獣被害などで難しくなり、新聞広告で取引先を求める事態となっている。

起源は江戸時代

老舗「明石屋」を営む明石屋菓子店(鹿児島市)は2022年1月28日、地元紙「南日本新聞」に「自然薯、買います」と切迫感が伝わる広告を出稿した。かるかんの原材料である自然薯が鳥獣被害などで確保が難しくなっているためだ。

同社のウェブサイトでは、かるかんはようかんの形をした和菓子で、「空気をたっぷり含んで蒸されるため、ふんわりと柔らかく、饅頭などの他の和菓子に比べても際立って白い」と説明している。

農林水産省によれば、起源は江戸時代にさかのぼり、「薩摩藩の第11代藩主であった島津斉彬が、保存食の研究のために江戸から招聘した明石出身の菓子職人・八島六兵衛によって考案されたという説が有力」だという。近年ではあんを生地で包んだ「かるかんまんじゅう」が一般的とする。

広告はツイッターで話題を集め、「かるかんは明石屋派の私としては見過ごせない...」「明石屋さんのかるかん、とっても美味しいから絶対に残してほしい」「どなたか自然薯を届けてあげてほしい」と応援の意味を込めた拡散が相次いだ。

東京にいる息子から「バズってるよ」

岩田英明社長は31日、J-CASTニュースの取材に、調達難は数年続いていると明かした。

仕入れる自然薯は、天然ものと栽培の大きく2つに分かれる。鳥獣被害対策として、後者は畑への電子柵導入が進んでいるが、自生の場合はそうはいかない。一時的な傾向ではなく「これからずっとそうなっていくだろうと予想されます」と肩を落とす。

広告は県内の関係者向けに去年から数回出しており、新規の取引先は5、6件増えた。「今回はSNSでかなり拡散されて、東京にいる息子からバズってるよなんて言われて」とこれまで以上の効果を期待する。

「関東圏内であれば、自然薯は高級料亭で使うような材料。例えばそこに収めている方が、形が悪いものを少し分けてもらえると嬉しいです」(岩田社長)