法円坂交差点(大阪府大阪市)

「法円坂交差点の先には高速道路の入口と、一般道の平面・高架と、あわせて3方向に分かれる地点があるのに、その手前には高速入口の標識しかないので、直前で車線変更する車が多いんです。通るたびに恐怖を感じます」

 大阪在住の本誌カメラマンは、そう強く訴える。

 毎年9月に日本損害保険協会が発表する「全国交通事故多発交差点マップ」。最新の全国ワースト1が、昨年22件の事故が起きた大阪府の法円坂交差点だ。ここは前回も16件でワースト2だったが、さらに事故が増えた形だ。

 本誌は今回、この5年で今年初めてランクインした10の交差点を抽出。すなわち、事故が急増した地点ということになる。法円坂交差点は昨年も入っていたが、それ以前の4年間はランクインせず、事故が増加したことを踏まえ、ここも含めて計11カ所を「事故急増交差点」とした。

 なぜ事故が多発するのか。その分析と解説を、元千葉県警交通事故捜査官で、交通事故鑑定人として活躍する熊谷宗徳氏に依頼した。さらに同氏には、東京都内の現場に同行してもらった。

 まず、法円坂交差点は2つの幹線が交わり、上に阪神高速が走る。

「交差点の西側に阪神高速の料金所があり、片側4車線のうち右側2車線が高速に向かう右折レーンになっているんですが、車線が交差点の途中で切れている。そこを右折車が並走するので、右折車同士の接触事故が多いと思われます。

 それと、交差点を曲がってすぐに、高速に入る車線と、一般道の高架および平面との3つに分かれている。『こっちじゃない』と急ハンドルを切ったりブレーキを踏んだりで、接触や追突が起きている可能性があります。

 また、交差点が大きく、曲がる距離が長い。すると右折車が交差点内に滞留し、信号が赤になっても無理やり突っ込んでしまうことが多い。それで右折車と直進車の “右直事故” が増えてしまうんです」(熊谷氏、以下同)

事故が急増した板橋中央陸橋交差点

■緩やかなカーブは減速しづらい

 大阪府は最新のワースト20に6カ所もランクインし、全国最多。讃良川交差点、樋之口町交差点も「事故急増交差点」で、それぞれ事故件数は16件、15件となっている。

「讃良川交差点は典型的な『X字交差点』。この形は左折は鋭角に、右折は鈍角になります。右折は緩やかなので、つい減速せずに曲がってしまう。さらに上には跨道橋(こどうきょう)と高速が走っており、橋脚で死角ができてしまうこと、交差点内が暗くて見えづらいことも事故の原因と考えられます。

 樋之口町交差点もX字に近い。横断歩道が長いので、信号の変わり際に歩行者との事故が多いのではないでしょうか」

 福岡の六本松交差点は文字どおり六差路。初めて運転する人は間違いなく戸惑うはず。

「片側3車線の大きなX字交差点に、信号のない片側1車線の市道が合流する。歩車分離式信号の設置など、交差点の改良が必要です」

 2020年度の交通事故の発生件数は東京都がワースト1で2万5642件。事故が急増した板橋中央陸橋交差点、高円寺陸橋下交差点は、それぞれ環状七号線と川越街道、青梅街道が交わる交差点だ。

「板橋中央陸橋交差点は、南北に走る川越街道の板橋方面(北)から池袋方面に向かって下りの勾配になっています。知らぬうちに加速して左折時にスピードが出ているため、歩行者に気づいても間に合わないのでは。

 自転車も同じように加速してくるので、左折車との接触事故が起こりやすい。高円寺陸橋下交差点は、高架の橋脚と交差点手前の植樹で死角ができる。横断する人に気づくのに遅れた車との事故が多いのでしょう」

 お台場中央交差点は、フジテレビのすぐ近くの交差点で、見通しもいい。ただ現場に行くと、事故原因がよくわかる。

「埠頭が近いので、トレーラーが非常に多いんです。歩行者は歩道橋を渡りますが、自転車は車道左側の自転車レーンを走る。左折時の巻き込み事故が多発していると思われます。警察が注意を促す看板をいくつも立てているのが事故が多い証拠です」

 日本自動車ジャーナリスト協会会長で、BOSCH認定CDRアナリスト(※)でもある菰田(こもだ)潔氏は交差点で起きる事故の特徴についてこう話す。

「今回のリストでとくに目立つのは、立体交差の下の大きな交差点。太い橋脚がある場合が多く、ドライバーにとっては死角になります。また、大きな交差点は曲がる角度が緩やかなのでスピードが出やすいうえ、車のフロントガラス横の支柱(Aピラー)の陰に横断者や自転車が隠れてしまう可能性があります」

 事故を防ぐためには、想像力のある運転と、信号機を変えることが必要だと言う。

「自分が見えている範囲に車や自転車、歩行者がいなくても、1、2秒後に現われるかもしれないと想定する。来ないだろうではなく、来るかもしれないと思って運転してください。

 また、矢印を使った右折分離式信号に信号機を変えていくことも大事だと思います。信号の変わり際にどうしても右折で突っ込んでしまい、右直事故が起こる。信号を変えるだけで減らせると思います。

 日本人はつい後ろの車に気を使いすぎて加速しがちです。『安全マージン(ゆとり)』を取り、後ろの車ではなく自分の身の安全を最優先した運転をしましょう」

 実際、2018年にワースト1だった福岡県の湯川交差点は、右折分離式信号を導入したところ、2019年の事故件数は大きく減ったという。

 運転者の意識向上と信号機の改良で、交差点事故はさらに減らせる。

※BOSCHが開発したCDRという機器を使って事故のデータを解析する専門家

写真・馬詰雅浩、福田ヨシツグ、国土地理院

(週刊FLASH 2021年10月19日号)