山道裕己・東京証券取引所社長

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「我々は世界の取引所と投資資金の争奪戦をしている」──こう決意を語るのは、東京証券取引所社長の山道裕己氏。現物、デリバティブとも存在感が大きいのは海外投資家だが、同時に大事なのは国内投資家の掘り起こし。個人金融資産2000兆円を投資に振り向けるには、その両者の好循環が必要だと山道氏。東証の市場としての役割も問われる。

システム障害の再発防止策は?
 ── 山道さんは2020年10月1日に発生したシステム障害を受けて、東京証券取引所社長に就任したわけですが、改めて抱負を聞かせて下さい。

 山道 昨年の障害では、結果的に丸1日システムが停止してしまいました。我々取引所運営会社は、公平・公正な売買機会の提供が、複数あるミッションの中でも一丁目一番地ですから、それが止まってしまったのは非常に衝撃的な出来事でした。

 その危機感を業界、あるいは金融庁にも共有していただき、早期に再発防止協議会を立ち上げて数カ月議論し、3月末に最終的な再発防止策を取りまとめて発表しました。今はシステム改修を含め、防止策に取り組んでいる最中です。

 今後は防止策の実効性をいかに担保するかが非常に重要です。システム改修は9月末から10月にかけて終了予定ですが、取引参加者の皆さんとの訓練はもちろん、この障害を風化させないために、いろいろな取り組みをしていかなければなりません。

 いわば再発防止策はスタートで、プロセス全体を実効性のあるものにしていくことが必要です。今回、売買を停止する、あるいは再開するための手順や基準をかなり明らかにしましたので、これらのルール自体が実情に合っているかを含めて検証していきたいと思います。

 ─ 従来はシステムを止めないことに主眼を置いてきたけれども、止まった時でも早く再開することを目指していくと。

 山道 そうです。東証のシステムは非常に堅牢で、止まることは少なかったのですが、今回は止めない努力を最大限しつつ、止まった時にどう復旧をさせるかという形で、一歩先に進んだものだと考えています。

 ── 2022年には市場区分の再編という大きな課題が控えていますが、日本の株式市場の魅力を高めるという観点でどういう取り組みになりますか。

 山道 日本の市場の魅力を高めるには、我々の取引システム、制度などがグローバルに競争力のあるものでなければならないのはもちろんですが、上場している企業、市場そのものの魅力を高めることも重要だろうと。

 現在の市場第一部、市場第二部、ジャスダック、マザーズという市場区分は、13年に東京証券取引所と大阪証券取引所(現・大阪取引所)が経営統合し、日本取引所グループ(JPX)を設立した際に、統合前の市場区分の枠組みをそのまま踏襲したものです。

 この現在の枠組みについては、各市場のコンセプトに重複やわかりづらさがあったり、マザーズから市場第一部、ジャスダックから市場第一部に市場変更する際の基準が違うといったことがあったため、上場会社の企業価値向上の動機付けの観点から課題が指摘されていました。そこで、市場区分の見直しを行い、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を支え、市場の魅力を高めていこうということになったのです。

 ─ 新たな市場区分は現在の4つから、プライム、スタンダード、グロースという3つとなりますね。

 山道 そうです。3つの新しい市場区分となります。特にプライム市場は世界中の投資家が「魅力ある投資先だ」と思えるような市場にしたいと考えています。グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場というコンセプトを掲げており、他の市場よりも一段高い水準のガバナンスが想定されています。具体的には、今回のコーポレートガバナンス・コードの改訂において、プライム市場上場会社向けの内容が含まれています。