先週、李克強首相などが見守る中で打ち上げに成功した大型ロケット「長征5号B」。宇宙飛行士が滞在する施設となるコアモジュールを搭載しており、宇宙ステーション「天宮」の完成を目指す中国にとって大きな一歩となるものだった。

・【映像】鈴木教授による解説

 ところがアメリカ宇宙軍が昨日、このロケットが近く大気圏に再突入する見通しで、軌跡を追跡中であることを発表。現時点では地上に落下してくる日時や地点の予想がついていないことから不安の声が上がっており、日本でもCNNの記事に含まれていた「制御不能状態」というワードがTwitterトレンド入りした。

 『ABEMA Prime』に出演した東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授は「制御不能になったというよりも、最初から制御するつもりがなかった、ということではないか」との見方を示す。

 「法的拘束力はないものの国際的なガイドラインがあり、コントロールをして人のいないところに落とすよう定められているが、これを中国は守っていないというのが現状だ。今回のコアモジュールというのは非常に大きいので、それを打ち上げるためのロケットも大きくなる。コントロールするためには、多くの燃料、余計な部品を付けないといけないが、そうすると今度は効率が落ちてしまうことになる。そこで“使い捨て”、言ってしまえば“ほったらかし”状態にするというのが中国の考え方だ。

 特に今の中国上層部としても“何でもいいからアメリカに追いつけ”とキャッチアップしている状況なので、国際ルールを守るよりも、言われた通りにやって成功すればいい、という発想がある。それはこれまでもそうだったし、ロシアも同様だ。長年やってこなかったからいいじゃないか、と努力をせずに意識が緩んでいるのが現実だ。しかし、これから宇宙ゴミ(スペース・デブリ)が増加により困ることが出てくる」。

 中国のロケットの部品が落下するのは、今回に始まったことではない。

 「去年も同じ長征5号が打ち上げられたが、やはりコントロールされないまま再突入し、一部の部品がコートジボワールに落ちた。ほとんどは燃え尽きるので、実際に地上に落ちてくる部品はごくわずかだが、今回も大きなものが落ちてくることがあり得る。8〜10日のどこかの時点で落ちると見られていて、落下地点はアメリカ大陸の可能性はあるが、おそらく海上だと考えられるので、それほど心配する必要はないのではないか」。

 中国は月面探査計画、さらには地上から衛星を破壊するための技術開発も推進している。

 「実験段階なので本当にできるかどうかはわからないが、地上からレーザーで撃ち落とすことを目指している。宇宙はミサイルやドローンを飛ばすためのインフラとして使われるので、相手の衛星をやっつけてしまえばアメリカ軍の能力が低下させることができる。米中対立が激化した場合、そうすれば自分たちに分があるという考えから、技術開発がものすごい勢いで進んでいる。

 一方、アメリカ軍の能力が低下するということは、日米同盟の力が下がるということにもつながる。日本としては、そうした中国の衛星破壊能力に対しては断固反対していかないといけない。しかし開発自体を止めることは無理なので、アメリカがやられた場合のバックアップを考えておくなど、二段構え、三段構えの措置を取っておく必要があるだろう。そのためにも、これまで同様、国際宇宙ステーションや月面の資源獲得を目指すアルテミス計画などに協力していくことが必要だと思う」。
 慶應義塾大学特別招聘教授でドワンゴ社長の夏野剛氏は「月面探査の話もそうだが、最近の中国は宇宙開発に威信をかけていて、アメリカを追いかけるところから、"並ぶぞ"、となってきている。一方で、共産党幹部は実態を正しく知らない可能性もあると思う。実際、ITビジネスでも、中国企業がGoogleやFacebook、Twitterなどと同じレベルにあると幹部は信じているが、そんなことはない。今回のことでもっと世界が騒げば、上層部は面子を失うことになるし、 今までは許されてきたかもしれないが、責任者の何人かは粛清されてしまうかもしれない。国際社会はもっと騒ぐべきだ」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)