本当に!?(画像はKosuke Sawa@kosukesaさん提供)

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秋の風物詩ともいえるコオロギ。夜になれば田んぼや公園から、他の虫たちとの大合唱が聞こえてくることでお馴染みだ。

ツイッターではこの鳴き声で、意外な情報が分かると話題になっている。


本当に!?(画像はKosuke Sawa@kosukesaさん提供)

それは「気温」だ。

こちらはツイッターユーザーのKosuke Sawa(@kosukesa)さんが投稿した画像。山梨県にある「富士ヶ嶺 おいしいキャンプ場」で撮影したという。そこに書いてあるのは、

「コオロギの鳴き声で今の気温が分かります!!
(X+8)×5÷9=気温
Xには15秒間にコオロギの鳴いた数が入ります」

という数式。つまり15秒間にコオロギが28回鳴けば、(28+8)×5÷9=20で、気温は20度になるというわけだ。まさかあの鳴き声にそんな能力があったとは...。

にわかには信じがたいこの数式に対し、ツイッターでは、

「コレ、ホントに?」
「ためにならんけど面白い豆知識」
「つまりコオロギの鳴きを抑制したり促したりすれば安定した気候に...!?」
「コオロギが号泣したら世界が終わる、、」

といった声が寄せられている。

キャンプ場に確認したところ、この掲示物は炊事場やシャワー室がある建物の壁に貼ってある。掲示したのはすでに亡くなった前のオーナーであるため、貼られた経緯などはわからないという。

この数式は事実なのだろうか。Jタウンネットは2019年12月9日、「夏休み昆虫研究大賞」を設ける日本昆虫協会の理事を務める木村義志さんに詳しい話を聞いた。

数式は正しいの?

木村義志さんは日本昆虫協会の理事を務めるほか、「生き物を飼うということ」(ちくま文庫)、「机の上で飼える小さな生き物」(草思社)などの科学図書を執筆している。

木村さんによれば、話題になった公式は子供向けの科学図書「Janice VanCleave's Biology For Every Kid: 101 Easy Experiments That Really Work」に掲載されている。


Janice VanCleave's Biology For Every Kid: 101 Easy Experiments That Really Work(画像はアマゾン公式サイトより)

この本は今から30年近く前に出版された。木村さんによればこれ以前から、日本の理科関係の本でも、温度によって鳴くテンポが変わることが書かれていた。しかしコオロギの種類や飼育条件によって差があるので、このような数値化はしないのが普通だったという。

ところで、コオロギの鳴く回数と気温はどのように関係しているのか。木村さんはその関係性について以下のように話している。

「昆虫を含む変温動物は周囲の温度によって代謝速度が変わります。当然音を出す(翅(はね)をこすり合わせる)筋肉の活性も変わります」

つまり気温によって筋肉がどれだけ活発に動くか(どれだけ音を出せるか)が変わるということ。木村さんによれば、コオロギが鳴くのに適した温度は20〜30度前後。当然だが、コオロギが気温を決めているわけではない。

温度と動物の関係性はわかったが、数式は絶対的なものではない。木村さんはその理由について、

「コオロギ(Cricket)は世界に何千種類がいて、それぞれテンポも鳴き方も違いますから、この数式で必ずしも温度が分かるというわけではありません。日本でやるなら種類ごとに計測して式の数値を変える必要があると思われます」

と話している。

あくまでもこの数式は気温を計るものではなく、「変温動物は気温の影響を受けて生きているということを体感する」のが目的。木村さんは「コオロギは温度と動物の関係を子供に教えるための古典的な教材です」としている。

もとは子供向けの本に載っていたとはいえ、大人にとっても驚きの数式。コオロギの鳴き声が聞こえてきたら、数えてみるのもいいだろう。