増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

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1.絶大なPR効果
広告宣伝とPRの違いはマーケティング専門家であればわかっていますが、一般的にはあまり知られていません。お金を出して好きな(伝えたい)メッセージを送る手段が広告で、PR、つまりパブリックリレーションズはその名の通り情報提供することであり、自らに都合の良いメッセージを伝えられるかどうかの判断はメディアが握っています。

基本的にPRは情報提供であるため広告費のようなコストはかかりません。中にはペイドパブといって、お金を払って取り上げてもらうPR風広告も実際にはあり、私のような無名企業をやっている人間のところにはひっきりなしに電話やメールで「テレビや新聞で取り上げられる企画のご案内」が来ます。(これでもちょっとはテレビも新聞も出てるのに。グスン)

代表的な番組は情熱大陸など、その人にフォーカスした追跡ドキュメントで、情熱大陸に出たことがきっかけで一気に世間にブレイクした人は数知れません。特に無名のビジネス系の専門家などが、こうした番組で取り上げられることで、一夜にして依頼が殺到し、ただちに書籍出版、別マスコミから取材と、あっという間に時代の寵児と化す・・・・・時代がかつてありました。いや今でもあるでしょうが、似たような番組も増え、かつてほどのインパクトは少なくなっているように感じます。

2.大戸屋事変
どん底まで仕事がなくなった有吉弘行さんが、大ブレイクしたきっかけとなったのはアメトーク「おしゃクソ事変」と呼ばれる、漫才コンビ品川庄司の品川さんへの毒舌あだ名でした。単なる事件ではなく「事変」≒戦争行為だと呼ばれるほどにインパクトだといわれたのは、この日を契機に有吉さんはどん底からバラエティのトップに立ち、片や品川さんはマルチタレント・文化人から「嫌われキャラ」に激変したからです。

大戸屋を取り上げたガイアの夜明けですが、もしかすると事変クラスのマイナス影響が相当あるかも知れません。社長自ら店長への檄を飛ばし、いかに店の収益を上げるか現場の映像を映しました。特に残業時間削減に頭を悩ます店長さんへの高圧的な発言は、ネット中心に「パワハラ」「クズは店長じゃなくて社長」といった批判が巻き起こっています。

飲食業界、特に居酒屋などでは常態的な長時間労働、その対局のコスト削減を現場に大きく依存することからパワハラ体質が指摘されていました。それらの解決を経営やシステム化ではなく社員の根性ややる気に原因を求める「やりがい搾取」という批判があります。大戸屋社長の言動は、正にこれに当たると一部の視聴者からは捉えられてしまったようです。恐ろしいことにこうした批判はネット中心に長く伝播していく可能性があります。

3.ワタミの再来?
国会議員にまでなられたワタミ創業者・渡辺氏は、やりがい搾取のシンボルのように批判を受けてきました。社員が自殺するなど、過重労働に代表されるその店舗運営スタイルは、ついにはワタミという社名を冠した店舗も変えざるを得ないほど、一般客からも支持を失っていったのです。新たにミライザカや鳥メロといったワタミ色を隠した店舗に衣替えし、何とか危機を乗り越えようとしているワタミですが、経営者の責任とはいえ、企業や店舗の印象はここまで大きく経営にダメージを与えるのです。

特に人手不足が厳しい飲食業界では、こうしたパワハラ的な体質が伝統的に存在します。これは単純なパワハラだけでなく、実際の店舗運営のデリケートな部分を根性論で押し切ってしまう、押し切らざるを得ない実態があるからでしょう。しかしそれでは経営者の責任であり、そこまで社員を詰めなければ回らない、コストが回収できないなら事業そのものがダメなのだという批判に答えられません。

ドキュメンタリー番組制作者はテレビ的な演出もあり、厳しい場面とその後の成功・達成を合わせた構成にしたかったのかと想像します。番組はそれでOKだと思いますが、放映された大戸屋にとってのPR戦略がどのようなものなのかはわかりませんが、イメージアップどころかこの先の採用や経営、何より客足への影響が懸念されてなりません。

※TBSテレビ「土曜☆ブレイク 危険回避バラエティ その手があったか!」2019年12月14日 (土) 14時〜。増沢隆太がひな壇芸人、いやひな壇専門家の一人として出演します。ぜひご覧下さい。