秋田犬の里&くまくま園がたまらない。もふもふの宝庫・秋田県へ!

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マタギというものがいる。狩猟を生業にした人たちのことだ。秋田県が有名で駅名にマタギと付いていたり、マタギ資料館があったりする。そして、マタギと共に狩猟をした秋田犬も有名だ。

私、地主恵亮は狩猟免許を持っていた。とても興味のある分野なのだ。ということで、マタギを学び、マタギと関係の深いクマや秋田犬とも触れ合う列車の旅に出かけたいと思う。

最初の目的地は「阿仁マタギ駅」。JR東京駅から秋田新幹線「こまち」に乗って約3時間でJR角館駅、そこから秋田内陸線に乗り換えて約50分で「阿仁マタギ駅」だ。列車の旅を楽しもうではないか。

東京駅

クマを目指して一直線

「狩猟免許を持っていた」と過去形になっている理由は更新するのを忘れて失効してしまったからだ。猟師は今も普通にいて、クマやイノシシ、シカなどを狩っている。そんな猟師界でも誰もが聞いたことあるのが「マタギ」なのではないだろうか。

この記事を書いている地主です!

日本において、狩猟を生業にするのは難しい。そんな日本で近年まで狩猟を専業で行っていたのが「マタギ」なのだ。

彼らの一番の獲物は「クマ」だ。マタギに限らず、猟師さんに話を聞くと、何十年も前にクマを撃った話を、まるで昨日のことのように鮮明に話してくれる。猟師にとってクマを狩ることは武勇伝なのだ。クマの肉は食用となり、内臓は薬となり、骨はすり潰し酢や酒と混ぜることで打撲の薬となった。そんなクマをまずは見に行く。

秋田内陸線に乗り換えます!

角館駅で秋田新幹線「こまち」を降りて、秋田内陸縦貫鉄道の秋田内陸線に乗り換える。1両だけのディーゼルカーだ。角館駅から松葉駅までは1970年に国鉄角館線として開業し、目指す「阿仁マタギ駅」は松葉駅のさらに先へ、秋田内陸線として1989年に開通した区間内だ。

秋田内陸縦貫鉄道は観光に力を入れているようで、いい景色があるところではアナウンスが入り、ゆっくりと走ってくれることもある。車内販売が行われることもあり、列車の旅としては最適だ。

窓の外には田んぼアート(見ごろは7月中旬〜9月上旬)があったり、

車内は秋田犬だらけだったり、

東京駅から4時間ほどで阿仁マタギ駅に到着!

阿仁マタギ駅

かわいいクマとの共同作業

阿仁マタギ駅は無人だった。駅前には何もない。ここから「くまくま園」に行く。どうやって行くのかというと、事前にお願いしておくと無料送迎車が駅まで迎えに来てくれるのだ。ありがたい。車は山道を走って行った。

無料の送迎車に乗って、くまくま園に到着!!!

くまくま園は、1990年に阿仁熊牧場として開園し、2014年にくまくま園としてリニューアルオープンした東北地方唯一のクマ牧場だ。48頭のツキノワグマと17頭のヒグマを見ることができる。ちなみにこの地のマタギが狙っていたのはツキノワグマ。ヒグマは北海道にしかいないので必然的にそうなる。

めっちゃ、クマがいる!

ツキノワグマには餌をあげることができるのだけれど、これがすごい。クマたちが餌をくれとアピールするのだ。話を聞けば、教えたのではなく自然にやるようになるらしい。子グマの頃は照れながらやるが、大きくなると堂々とアピールし出すそうだ。

かわいい!

餌を投げる!

完璧なキャッチ!

かわいいアピールに誘われ、餌を投げると完璧なキャッチをしてくれる。クマのキャッチ能力と、投げ入れる側のコントロールを必要とするので、クマと人間とのはじめての共同作業だ。もはやケーキ入刀。スローで見るといかにすごいかわかる。人間業ではない。クマだから人間業のはずがないんだけどね。

スローモーションです!

ちなみにくまくま園は11月上旬頃から4月下旬頃まで、基本的にはお休みとなる(※)。それはクマが冬眠するから。ツキノワグマより1カ月ほど遅れてヒグマも冬眠に入る。1カ月ほどずれるのは、もともとは住んでいる地域が違うからだ。

※編集部注:1月下旬〜3月上旬の冬眠見学にはお申し込みが必要です。公開される冬眠見学の日程は公式サイトにてご確認ください。

ヒグマは迫力がすごい!

阿仁マタギ駅

マタギのすべてを知る

クマを堪能し、くまくま園からまた無料送迎車をお願いして、車で約5分の「マタギ資料館」に送ってもらう。マタギ資料館に電話で送迎をお願いすると、阿仁マタギ駅、くまくま園、マタギ資料館のどの間でも送迎車を出してくれる。すぐに来てくれるので、時間を気にしなくて良いのが嬉しい。

マタギ資料館です!

マタギ資料館は「マタギの湯」の中にあるので、フロントで見学したい旨を伝える。館内はマタギが使っていた道具などが展示され、クマの剥製などもある。くまくま園ではかわいいと思ったけれど、これが実際に山で出てきたら恐怖だ。

ずっと見てしまう!

時間どろぼうですわ!

クマを仕留めるとマタギ独特の「ケボカイ」という儀式を行う。クマの頭を北に向け塩をふりかける。山の恵みに感謝する儀式だ。マタギは「自然」に感謝する心を忘れない。すべては恵みなのだ。マタギが狩猟をするのは冬と春。夏になると薬を売って歩いたりした。熊の胆などで薬を作る。

熊の胆は高いです!

マタギは山に入ると「山ことば」を使用した。クマは「イタズ」、男性は「セタギ」、女性は「ヘラ」、手袋は「テキャシ」。全く聞きなれない言葉だ。これは山の神に対する敬虔な配慮と獲物に気づかれない隠密のため。知らないことだらけだ。私は地方に行くと、必ずこういう資料館の類に寄ってしまう。その土地の文化を知ることは面白い。私は地域文化のある意味マタギなのだ。

外にマタギ小屋もあります!

JR東大館駅

レベルの違う料理に出会う

マタギ資料館から、また無料送迎車に乗せてもらい阿仁マタギ駅に戻った。そこから秋田内陸線に乗り1時間半ほどで鷹巣駅。そこからJR鷹ノ巣駅に歩き(30秒くらい)、奥羽線で大館駅(20分ほど)に。さらに大館駅から花輪線に4分ほど乗って東大館駅に到着だ。

東京を朝早く出たので、列車の揺れが気持ちよく、結構眠ってしまった。到着した頃はもう真っ暗。今日の晩御飯のお店に行こうと思う。もうお腹ぺこぺこで、今ならクマ並みにご飯をキャッチできると思う。

日本料理みうらに来ました!

駅から徒歩12分ほど、「日本料理みうら」にやってきた。個室とカウンターがあり、夜のメニューはおまかせコースが中心。こんなところで食事をしたことがないので緊張してしまうが、大丈夫だった。むしろ幸せな時間だった。

食べるペースに合わせて、

料理が、

出てくる!

ご主人はもともとこちらが地元で、銀座と神奈川で修業していた。めちゃくちゃ優しく、会話も弾む。良いタイミングで料理が出てくる。作っている手際の良さが見える。最高の環境だ。こういったもてなしが最高の料理を生むのだ。

中トロ、シメサバ、イシナギ、ヒラメ、タイ、カンパチ

素材の味を引き出すためにシンプルにする、とご主人は言う。私は3500円(税別)のコースを頼んだけれど、東京だと8000円以上するとのこと。そりゃそうでしょ、鮎は大きいし、松茸は出てくるし。私に料理の知識があればもっと語れると思うのだけれど、ないのだ。わかることは過去最大級に美味しいということだ。

美味しすぎて泣きそうだった

2時間ほど食事をした。話しながらだけれど、こっちのペースで話してくれる。料理もこっちのペース。味も環境も最高だった。値段も安い。最高の1日の締めくくりだった。

大満足で宿に向かい、1日目は終了。

東大館駅

秋田犬がかわいいんです

朝になった。大館に来たのは秋田犬を見るためだ。渋谷の待ち合わせで有名な「ハチ公像」のハチは大館市生まれなのだ。秋田犬保存会の本部があり、その3階が「秋田犬博物室」になっている。ホテルから徒歩5分ほど、まずはそこに行く。

秋田犬博物室です!

受付に秋田犬がいました!

秋田犬と言えば、茶色に白を思い浮かべるけれど、上の写真のような黒っぽいものもいれば、白いものもいる。耳は三角形でピンと立っており、鼻筋はあまりとんがっていない。尻尾は太く力強く巻いているのが特徴だ。ちなみに秋田犬博物室の秋田犬は職員さんが飼っている犬で、朝一緒に来て夜一緒に帰って行く。

秋田犬博物室で秋田犬のことを、

知ることができます!

秋田犬が誕生したのは明治時代のことだ。土台となったのは「マタギ犬」。マタギが狩猟の時に使う猟犬を「マタギ犬」と呼んでいた。昨日、マタギについていろいろ学んだけれど、それは秋田犬に繋がる話なのだ。

こういう感じで猟をしていたらしい!

マタギ犬は中型犬だったけれど、幕末から明治時代にかけて、闘犬が流行し、体格の良いマタギ犬を掛け合わせ、さらに大型の洋犬も掛け合わされ大型化し、昭和6年には国の天然記念物にも指定されている。

ヘレン・ケラーも秋田犬を飼っていました!

この当時の秋田犬は現在の秋田犬と違い、洋犬の趣が強くみられるようだ。諸説あるが、その理由は土佐犬との闘犬で秋田犬が完敗だったことにある。土佐犬は闘犬用なので一度噛むと離すことはないけれど、秋田犬はもともと猟犬なので、噛んでは離し、猟師に獲物を撃たせるようになっている。そのため闘犬としては弱く、改良のためにより洋犬の血を入れたといわれているのだ。では、どうやって今の秋田犬の姿になったのか、それは昼食の後に。

ハチ公も現在の秋田犬っぽくないね!

大館駅

昼食後にまた秋田犬

秋田犬は大きかった。私は犬が怖いため、ちょっと怯えていた。だって大きいんだもん。目がつぶらでかわいいが、仕方がない。もしかしたら、私の前世はクマで、マタギに捕らえられたのかもしれない。そんなことを思いながら、大館駅まで30分ほど歩き、昼食にする。大館といえば、駅弁「鶏めし」だ。

「花善」が販売している駅弁の「鶏めし」だけれど、ここでは普通にお店で食べることができる(もちろん駅弁も売っている)。昔は大館駅のホームで立ち売りも行っていた。昭和22年に発売開始され今も愛されるロングセラーだ。

鶏めし御膳をいただきます!

御膳なので、鶏めしを温かい味噌汁と一緒に食べられる! 味の方はもちろん美味しい。甘い味付けがご飯に合うのだ。幸せだ。ちなみにこの建物の2階は「花善ギャラリー」になっていて、工場見学や歴代の掛紙のコレクションがあり、さらに先の写真にもあるような立ち売りの写真を撮ることもできる。

最高の昼食を食べて、最後はなんだと思いますか? はい、そうです「秋田犬」です。2019年5月に大館駅前に「秋田犬の里」という施設ができたのだ。秋田犬の歴史は面白いので、こちらにもぜひ行きたかったのだ。花善から徒歩1分ほど。

ハチ公像もあるから待ち合わせもできます!

こちらでも秋田犬の歴史などを知ることができる。先にも書いたように一度は洋犬のようになったといわれる秋田犬だけれど、その後、保存の声の高まりなどから、山村などの僻地に残っていた本来の姿の秋田犬を土台として、今の秋田犬の姿へとなっていった。さらに秋田犬の展示も行っている。

秋田犬の展示ですよ!

午前と午後で別の秋田犬が展示室にいる。上の写真のように見ることができることもあれば、運よく触れ合えることもある。犬次第なのだ。犬とお客さんの安全を考えて展示形態が変わる。これは大切なことだ。

運が良いと触れ合えます!

先に伺った秋田犬博物室では怖がっていた私だけれど、だんだんとかわいくなってきて、触れ合ってしまった。お手をしてくれた。しかも、飼い主さん(※)が「バーン」と言ったら、コロッと撃たれた真似をしていた。かわいい。とにかくかわいい。

※編集部注:展示室にいる秋田犬は飼い主さんと一緒に来ています。

さらに運が良いと、子犬にも!

生後3カ月の子犬も見ることができた。毛がファーファーだ。フアフアの最上級がファーファーである。成犬もかわいいけれど、子犬だけが持つ可愛さもある。秋田犬最高である。最近は大館が秋田犬の聖地になっているそうで、秋田犬を連れてここにやってくる人も少なくないそうだ。

買いました!

あんまりにもかわいいので、思わずぬいぐるみを買ってしまった。彼と一緒に東京へと帰ろうと思う。マタギを学び、クマや秋田犬の可愛さに癒された旅だった。帰りは大館駅から奥羽本線でJR新青森駅を経由して東京へ帰る。このルートだと東北新幹線の「こまち(行き)」にも、「はやぶさ(帰り)」にも乗ることができるので得した気分だ。

はやぶさで帰ります!

「ハチ公くん(まんじゅう)」を、

食べながら、

帰りました! (目があうと気まずい!)

掲載情報は2019年11月28日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

東京駅