米国が新次元の対中政策、中国をソ連と同じ敵性国に

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米国のトランプ大統領。ホワイトハウスにて2019年10月21日撮影(写真:AP/アフロ)


(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 米国のトランプ政権が、米国内に駐在する中国人外交官の行動を厳しく規制する措置を打ち出した。米国のこの対応は、東西冷戦時代にソ連に対してとった厳しい措置と似ている。

 米国が中国を敵性国家と位置づけ、いよいよ全面対決の姿勢を明示した動きとして注目される。

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米国外交官の活動を規制する中国

 10月16日、米国務省は同省報道官を通じて、米国に駐在する中国の外交官が米国の政府職員や地方の州、市などの地方自治体の職員と面会したり、米国の大学や研究機関を公式訪問する際には、米国務省への事前の通告を必要とする新たな措置を発表した。

 米中両国が1979年に国交を樹立して以来、米国は在米の中国の大使館や領事館の外交官に対して、この種の規制を課したことはなかった。今回の措置は、対中政策が新たな段階に突入し、米中関係が公式に「米中冷戦」とも呼べる状態になったことを示している。

 10月17日、国務省で中国を含む東アジア・太平洋問題を担当するデービッド・スティルウェル次官補は、「この措置の最大の目的は、在米の中国外交官の活動を抑えることではなく、中国に駐在する米国外交官の活動に対する中国側からの規制や妨害を減らすことにある」と説明した。つまり、中国政府の在中米国外交官への処遇に対抗する措置だというわけだ。

 中国では、米国政府を代表する外交官が中国側の民間の機関や個人に直接接触することは厳しく規制されており、通常は中国政府による事前の許可を必要とする。また近年は、中国の主要都市にある「アメリカ文化センター」の活動にも圧力がかけられ、中国内の米国の大使館や領事館からの同センターへの運営指示が中国当局によって阻まれることが多くなってきたという。

 米国ではこのところ、政府でも議会でも、中国当局による「統一戦線工作」活動(中国共産党の敵を倒すためにありとあらゆる影響力を行使する活動)への警戒が急速に高まってきた。今回の国務省の措置もその対抗策の一環だといえる。

冷戦時代のソ連と同じ敵対国に

 今回の措置についてさらに注視されるのは、その内容が東西冷戦中に米国がソ連外交官に対して課した規制と同じだという点である。

 つまり現在の中国は、冷戦時代のソ連と同じ敵対国としての扱いを米側から受けるようになったというわけだ。今回の措置は、現在の米中関係がかつての米ソ関係に等しい緊迫した対決になってきたことを意味する。

 米国上院の外交委員会有力メンバーのロブ・ポートマン議員(共和党)は今回の措置について、全面的な支援を示すとともに、「米国政府は長年にわたり、中国外交官を米国内で自由に活動させることによって、中国政府も米国外交官の中国内での自由な活動を認めるようになると期待してきた。だが、そうした相互主義への期待はまったく空しいことが証明された。中国政府は、代償を払うことの必要性を認識するまでは自己の行動を決して改善しようとしないのだ」と論評した。

 米国議会でも、中国政府の非民主的な行動への反発が超党派で高まってきた。

 たとえば「チベット相互アクセス法」が上下両院で2018年12月に可決され、トランプ大統領の署名を経て法律となった。中国政府が米側の官民代表のチベットへの立ち入りや接触を禁じていることに対して、その禁止措置に関わる中国側当局者の米国への入国を禁じる法律である。

 この10月には、トランプ政権は中国政府の新疆ウイグル地区でのウイグル人弾圧に抗議して、弾圧に関わった中国側の当局者の米国入国を禁じる措置も公表した。

 さらにトランプ政権は、中国側の官営メディアの米国内での活動も規制するようになった。国営の新華社通信や中国中央テレビ(CCTV)をもはや通常の報道機関とはみなさず、中国政府の政治的な「外国代理人」として扱い、その活動内容を米国司法省に届け出ることなどを義務づけた。

 今回の中国外交官への措置も、米国でのこうした大きな潮流の一環だといえる。米国のトランプ政権は中国への対決や封じ込めの構えを、また一段と強めてきたことになる。

筆者:古森 義久