By Rawpixel

2019年10月13日、アメリカカリフォルニア州で、学校の始業時間を公立中学校は朝8時以前、公立高校は朝8時半以前に設けることを禁止する法案が可決されました。

Bill Text - SB-328 Pupil attendance: school start time.

http://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billNavClient.xhtml?bill_id=201920200SB328

California's new law bans schools from starting before 8am - Quartz

https://qz.com/1727790/californias-new-law-bans-schools-from-starting-before-8am/

この法律の対象となるのは、一部地方の学校を除くカリフォルニア州のチャーター・スクールを含む公立中学校・高校で、カリフォルニア州立法府に提出された(PDFファイル)報告書によると、カリフォルニア州に存在する学校の約半数が該当します。各学校は、「2022年7月1日」ないしは「従業員との3年間の団体労働協約が失効した日」のうちより遅いほうの日から、この法律に基づいた授業時間の制限を開始しますが、始業前に高度ないし専門的な選択授業を受講できる「ゼロピリオド」というカリキュラムは、今回の法律は適応外となっています。

この法案が提出された背景には、「子どもの睡眠時間」に関する問題があります。アメリカ小児科学会は2014年の政策声明において、「睡眠不足が青少年の身体的・精神的な健康を害しており、その結果学業成績の悪化にもつながっている」と表明しており、中学生・高校生が8.5時間から9時間の睡眠をとれるように始業時間を遅らせる政策を支持していました。



By Wavebreakmedia

アメリカの3つの州の高校生9000人を対象とした2014年の(PDFファイル)調査によると、朝8時35分以降に始業時間を設けると、数学・英語・科学などの主要科目の学業成績や、州単位ないしアメリカの全国統一学力試験の結果、さらに出席率や遅刻率などが著しく改善するとのこと。

睡眠時間が青少年に与える影響は、以下の記事を読むとわかります。

10代の少年少女には圧倒的に睡眠が足りていない - GIGAZINE



by AndrewExtra

カリフォルニア州議会の政策立案用の分析によると、学校の始業時間は両親の勤務時間に合わせて推移してきたという経緯があります。1970年代と1980年代においてほとんどの学校の始業時間は午前9時でしたが、20世紀末頃の女性の社会進出に従って、「自分たちが出勤する前に子どもの安全を確保できる学校に子どもを預けたい」という両親の要求に応え、始業時間はしだいに前倒しになったそうです。

そのため、学校の始業時間を遅らせる政策に対しては、「始業時間が遅くなると、子どもを預ける場所がなくなる」という批判が存在するとのこと。しかし、アメリカの中学校・高校の一般的な終業時間は午後3時となっており、今回の法案に関わらず両親側の勤務時間に子どもの授業時間は即していないという現状があるそうです。