韓国による日韓GSOMIAの破棄表明から10日あまり。先月29日、文在寅大統領は「日本は正直でなければならない。日本は経済報復の理由すら正直には明らかにしていない。過去の過ちを、認定も反省もしない、歴史を歪曲する日本政府の態度が被害者の傷と痛みをこじらせている」と話した。また、先週末には、韓国の国会議員団が竹島に上陸。菅義偉官房長官は「竹島は歴史的事実や国際法上も明らかに日本国有の領土であることに照らし、到底受け入れることはできない」と述べた。

 一方、日韓議員連盟幹事長を務める河村建夫元官房長官はソウルで李洛淵首相と会談後、「GSOMIAとホワイトリスト、セットで一緒に元へ戻すということはどうだろうか、というのは話し合った。スタートは元徴用工問題だから、これはこれで検討しなければならない(と応じた)」と明かした。

 2日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、現職議員を交えて、この問題について議論した。
 

■小西議員「事の本質を安倍政権は見誤った」

 まず、自民党の中谷元衆議院議員は、輸出管理とGSOMIAは「次元が違う話」とし、「安全保障を盾にし、経済取引と歴史問題を対等に扱うこと自体がおかしい。日本としては、輸出管理について3年前から質問していたのに答えがないので今回の措置に至っている。そのことでGSOMIAを破棄し、取引するということはあってはならない。国家元首として、国の安全保障をまったく理解していない。今回絡めてGSOMIAを持ち出しているがアメリカも呆れている。東アジアの平和と安全を脅かす事態だ。韓国側にボールはあるので、ちゃんとやっているということを証明すれば貿易ができる」と厳しく批判。

 また、国民民主党代表の玉木雄一郎衆議院議員は「ホワイトリストの問題は純粋に貿易管理の問題。WTOがあっての自由貿易の原則からしても、安全保障に関する時だけは規制して良いという例外措置が認められているし、その元で日本政府もやっている。だから安全保障上の問題があるんだということをしっかり説明する義務が日本政府にもあるし、韓国政府は問題ないということを立証する義務があると思う。ただ、これは安倍総理にも直接申し上げたが、最初の説明のときに、安倍総理も官房長官も、慰安婦の問題があるから約束を破ったとか、徴用工の問題があるから今回のことをやるといったような、報復的な説明をしていた。これは問題だったと思う。私は今の日本政府がやっていることには賛成だ。ただ、やった以上は負けないでほしいと総理にも申し上げた。負けないためにも、これを他の慰安婦や請求権協定の問題とは切り離して、純粋にきちんとした物品管理や貿易管理の問題として、法と証拠に基づいてやりきってほしい」と話す。

 一方、立憲民主党小西洋之参議院議員は「"別問題"というのが日本政府の主張だが、事の経緯と中身を見ると完璧な外交上の失敗だ。何か手を打つ以上は、相手がどう反応するかを、相手の国内事情も完全に読まないと国益は守れない。世の中の理解には間違いがあり、まず3品目の半導体製造の部品の規制だが、悪いのは韓国企業ではなく、貿易管理をきちんとできていなかった日本企業が悪い。それを経産省が確認したので、管理するようにしたというのが経産省の説明だ。だから7月1日の、世耕大臣の鬼の首を取ったような会見は一体なんだったのかということになる。もう一つ、ホワイト国除外については、韓国企業には兵器を作れるような物資を輸出しているのを規制するルールがなく、審査体制も日本の約120人に比べて韓国政府は10人くらいと弱いと経産省は説明する。ただ実体を考えれば、経産省には韓国企業から中国などへの輸出を取り締まる権限はない。必要なら、経産省が権限を有する輸入先の日本企業を取り締まればいいだけだ。それを徴用工問題が燃え盛っているときに、報復措置として出すというのは、完全に国益を損なっている。その証拠に、外務大臣も輸出規制を発動することを当日まで知らなかった」と指摘、「もう半年待てなかったのか」と反論した。

 そこで小西氏に対し、作家・ジャーナリストの門田隆将氏が「なぜそんなに韓国に遠慮をしているのか?なぜ今やってはいけないのか?」と尋ねると、小西議員は「日韓請求権協定は正しいと思うし、韓国の大法院判決は矛盾していると思う。徴用工問題という国際問題を解決するために、論点を増やし"パッケージ"で解決するやり方を日本政府は狙ったのかもしれないが、韓国政府も判決に従うというようなことを言っている中、それを変えさせるために新たに放火をし、燃えさせてどうするのか」と主張した。

 しかし門田氏は「国家と国家の間には一定の節度と敬意が必要だ。日本はこれまで謝罪もし続けたし、譲歩もし続けた。その上で韓国が、節度と敬意を日本に対して払ったのかということだ。小西さんは"今なぜやるのか"ということをおっしゃったが、今までもやらないといけなかった。今、その第一歩が始まっている。韓国はこれから日本に対して今までのように舐めて、日本に対してはどんなことをやってもいいんだというようなことができなくなってきた。これが重要なことだ。小西さんが総理大臣だったら何をするのか?」と再反論。

 すると小西議員は「従軍慰安婦問題の日韓合意取りやめなど、約束が守られないことはあってはならないことだと思う。そういう意味では韓国には改めてもらわないといけないと思う。しかしこの状況で問題を解決するためには、韓国の政府と国会が動かない限り、司法手続きが発動されて日本企業は財産を取られてしまう。結果、動かせてないし、逆にGSOMIAを破棄された。私の見立てでは、年内に日本企業の資産の現金化が行われる可能性がある。また、韓国は来年の春に総選挙がある。ベストなやり方は、韓国で法律を作り、韓国の責任で徴用工の皆さんに補償をする。1965年の請求権協定上、従軍慰安婦の皆さんがおっしゃっていることは終わっているが、2回にわたって日本国民の税金を基金に入れて問題の解決を図った。場合によってはそうしたことも視野に入れるということだ。GSOMIAの破棄までやられていて、中国と韓国が接近したらどうするのか。北朝鮮の拉致問題は永久に解決できない。GSOMIAは実質的な損はなくても、日米韓の象徴的な意味がある。一方、韓国と北朝鮮は何度も首脳会談をやっている。皆さんに想像してほしいが、韓国とこじれたままで拉致問題は解決するのか。韓国は扱いにくい国だと思うし、最高裁の判決はけしからんが、事の本質を安倍政権は見誤った」と重ねて批判した。

 また、恵泉女学園大学の李泳采教授は「1965年は冷戦時代で、韓国は軍事政権。非常に大変な中、14年間お互いに骨を削りながらやった重要なものであることは確かだ。しかし、民間人は意思を反映することができず、未払金をもらうので精一杯だった。一生寝たきりになっているのに、企業から一度もお金をもらえていない。だから当時、日本の外務省の担当者も"これで全て解決だと思っていない"という文章を書いている。個人請求権は世界的にも認められるもので、日本政府も最近まで引き継いで認めているし、河野大臣も認めている。私たちは冷戦時代、国に余裕がなかった。しかし今、日本と韓国は余裕がある。また、ドイツは大統領がポーランドに行って謝罪をしている。それなのに日本が1965年で全て解決済だ、これで全てだと言い続ければ、本当に歴史に向き合っているのか、誰が加害者で、誰が被害者か分からなくなってしまう。日本は戦後賠償をしたかもしれないが、戦後補償、賠償に関する法律が1つもない。1965年の経済協力以外、何もない」との見方を示した。
 

■玉木代表「河野大臣発言、工夫の余地があったのでは」

 外交の点では、河野外務大臣が外務省で7月19日、南駐日韓国大使に対し「ちょっと待ってほしい。韓国側の提案はまったく受け入れられるものではない。国際法違反の状況を是正するものでないということは、以前に韓国側にお伝えをしている。それを知らないふりをして、改めて提案するのは極めて無礼だ。この旧朝鮮半島出身者労働者の問題を他の問題と一緒に、あたかも関連しているかのように位置づけるのはやめて頂きたい」と強い調子で指摘した。このときの対応についても話が及んだ。

 中谷議員は「日本政府を代表しているので、政府の姿勢としてははっきりと言うことは、相手の大統領や外務大臣に伝わる。まして持ってきた案がまったく話にならず、以前と同じ案だったので、"人をバカにするな"という思いだったのではないか」、門田氏も「毅然とした姿勢を見せるという意味で重要な発言だった。文在寅さんが"盗っ人猛々しい"と言ったのに比べると大したことはないし、日本の毅然たる姿勢を示すという意味で非常に大きなシーンだったと思う。高く評価する」とコメント。

 玉木議員は「2つある。1965年の請求権協定は絶対に動かしてはダメだ。日韓基本条約もそうだが、締結するまで14年間くらい、両国の先輩たちが色々なことを苦労してやった。そして、ここでピン止めをして、未来志向でやっていこうと決めたのが請求権協定だ。その後の日韓関係は、ここから築かれている。これをひっくり返してしまうと、まさにパンドラの箱を開けるようなことになるので、絶対にやってはいけない。8月1日に韓国の与野党の議員が来たので、これだけは何があっても絶対に両国で守ろうと、強く申し上げた。もう一つ申し上げたことは、我々政治家は色々なやり取りをするし、総理大臣や大臣に対しても色々なことを言うかもしれないが、日本の象徴である天皇陛下に対して礼を失した物言い、行動は止めてくれということだ。ただ、私も外務省にいたが、外交にはプロトコルというものがあるし、お互いのメンツがあるので、テレビの入っている所では礼を持って接することが必要だ。私も韓国の議員に対しては厳しく言ったが、そこはしっかと守ることが大事だ。その上で、河野大臣が言ったことは正しいが、ちょっと若干パフォーマンスもあるのかなと思うし、工夫の余地があったのではないか」と指摘。

 小西議員は「外務大臣の相手は外務大臣なので、その意味では韓国大使は格下だが、国際法上は全権を代表している。そういう方に対して、テレビの前でいちいちやる必要があったのかと。せめて"失礼だ"くらいにすればよかった。枝野代表も"河野大臣のやり方は礼を失しているのではないか"と言っていたが、そこは間違いなく指摘できる。あの場で"日韓の請求権協定で日本は5億ドルの、韓国の国家予算の1.6倍の賠償をしている。それで韓国は徴用工の方々にちゃんとやるはずだった。それをなんでやっていないのか。"最高裁の判決が出ていることは承知しているが、韓国政府、国会の力でやってください"ということを日本国民と韓国国民の前で言えば良かった。また、経産相の役人が韓国の役人と輸出規制の話をする様子が報じられていたが、あれは経産省の別館の共用会議室だ。私は経産省で働いていたが、ちゃんとした会議室がある」と批判。

 李教授は「今回の問題で両国の外務省は排除され、日本は経済産業省と官邸が、韓国では大統領府が決めている。外務省は外交関係を宥和させて解決する所で、国益を踏まえて長期的な戦略をお互いに考えるべきだ。そこで外交が政府の広報団体のようになってしまえば破綻してしまう。河野さんは、お父さんの河野談話もあり、韓国では信頼されていて、大臣としての期待も高かった。だからこそ、韓国では河野さんに失望がある」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)