鹿児島実業高校の男子新体操部【写真:平野貴也】

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インターハイ新体操は6日開幕、ユニークなパフォーマンスで話題の鹿児島実業・男子新体操部の魅力に迫る連載最終回

 南部九州総体2019(インターハイ)に出場する鹿児島実業高校の男子新体操部は、例年、コミカルな演技で話題を呼んでいる。全員丸坊主で一休さんに扮したり、モヒカンカットにウルトラマンのコスチュームを着こんでウルトラセブンの曲で踊ったり……。体操の技を見せるだけでなく、流行の曲やギャグを織り込み、観衆を楽しませる演技は、数々の失敗を重ねながら磨かれてきた。同部の魅力を全3回に分けて、紹介する。最終回は樋口靖久監督のインタビュー後編。

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――今では、コミカルな演技が定評を得ていますが「ふざけている」という印象を与えてしまうなど、受け入れられない部分で苦しんだこともあったのでは?

「2002年くらいに観客に受け入れてもらったあたりから、生徒はコミカルな演技ばかり作るようになり、今度は私が『そんな変な動きばかりじゃダメだ』と技を取り込んだり、演技のつなぎの部分を考えたりするようになり、役割が逆転しました(笑)。ただ、観客が認めてくれても、新体操の世界では『なんだ、あれは』という声は根強かったですね。それでも、07年頃から、動画投稿サイト『YouTube』が流行り始めて、誰かが投稿した私たちの演技が広く知られるようになりました。すると、テレビ局の撮影など取材をしていただく機会も出てきて、生徒も周囲も前向きになっていきました」

――全国大会で上位に入るよりも注目を集めている現状をどう感じていますか。

「今の状況は、不思議に感じています。競技というのは、古くから強くて勝って注目されるものでした。それが逆転してしまっています。下手で弱いのに、注目されているのですから。でも、子どもたちを見ると、周りから見られるようになったことで、何か自信を持てるようになったのだと感じます。下手ですけど、全国大会でも堂々と演技をできるようになりました。コミカルな演技にしたのは、元々の狙いがそこだったので、良かったなと思っています(インタビュー前編を参照)」

――様々な工夫が凝らされていますが、これまでの作品で苦労した部分は?

「グレーゾーンを攻めていくことが多いので、かなり怒られています(笑)。毎年、審判に呼び出されるのが恒例になっていますね。2012年に『一休さん』をやったときは、生徒が丸坊主になって演技をして、私も坊主頭なので、白い和風スーツを着て一緒に演技をしてみたのですが、めちゃくちゃ怒られました。

 指導者の服装は、大会前に高校体育連盟には確認してみましたけど、規定はなかったのですが。あとは、演技の最後に生徒が監督席の前に来て、私を指さすような仕草をして、それに合わせて私が動くので、演技中に生徒とコンタクトを取ったということで、これも怒られました。生徒だけを見てくれればと思ったのですが……(苦笑)」

――どこまでネタに走るか、難しいところですね……。

「次の年は、ヴィジュアル系バンドのゴールデンボンバーさんが流行っていたので、白塗りのメイクをしている樽美酒研二さんを模して、演技に使う滑り止めの白い粉(炭酸マグネシウム)を顔に塗りました。どこに塗ってはいけないという規定はなく、顔を持つ演技があるので、滑り止めとして使用した結果……と言ってはみたのですが、これも怒られました(笑)。

 極めつけは、2016年の『ウルトラセブン』です。髪型に規定がなかったので、生徒が全員モヒカンにして演技をしたのですが、私は反省文を書くことになりました……。それで、昨年は(18年5月に亡くなった西城秀樹さんの曲の)「ギャランドゥ」をやって、下腹部から胸元までの体毛を模したコスチュームにするなどいろいろとやったのですが、もう怒られるのは嫌だなと思って、演技の最後に和田アキ子さんの『笑って許して』を入れて、生徒が頭を下げるポーズにしました。演技構成は基本的に生徒のアイデアを入れ込んで作るのですが、最後のポーズだけは、僕のためにやってもらいました。それでも怒られて『笑って許してもらえなかった』というオチがつくかなと思っていたのですが、初めて怒られず、許してもらえました(笑)」

観客を楽しませることが第一の「真剣にふざけた」演技で勝負

――今年の県大会は、昨年と同じ演技構成でした。全国大会の演技は、どんなネタを考えているのですか。

「練習はしているのですが、まだ仕上がっていません。試行錯誤で、加えたり、削ったり、戻したり……と。ネタも、今年は、何が流行っているのかというのが少し分かりにくいのが、悩みどころですね」

――男子新体操は、地元の鹿児島県で開催されます。楽しみに観に来る方も多いと思いますが、どのような演技を見せたいですか。

「コミカル路線で、とにかく、見に来るお客さんを楽しませることですね。新体操に限らず、採点競技は、素人には分かりにくいものです。極端な上手、下手の違いは分かると思いますが、上位争いなどは、どういう部分で勝った、負けたというのが、素人には分かりません。それでは、競技が広まるのは難しいだろうと思います。やり方はいろいろあると思いますが、各チームが、新体操の個性を大切にすれば、お客さんももっと楽しめると思います。各チームが他チームにない個性を発揮することで、この競技は、世界に広まるのではないかと考えています。だから、最後まで、この『真剣にふざけた』演技で戦っていきたいと思っています」

樋口靖久(ひぐち やすひさ)
1971年4月28日生まれ。鹿児島市出身。鹿児島実業高、新体操部OB。国士舘大で日本一に輝く。大学卒業後、1995年から鹿児島実業高でコーチを務め、2001年から監督に就任。コミカルな団体演技を作り上げており、脚光を浴びている。

◇インターハイの新体操は6日から2日間に渡り熱戦が繰り広げられる。今大会は全国高体連公式インターハイ応援サイト「インハイTV」を展開。インターハイ全30競技の熱戦を無料で配信中。また、映像は試合終了後でもさかのぼって視聴でき、熱戦を振り返ることができる。(平野 貴也 / Takaya Hirano)