“コの字カウンター”と聞くとどうも大衆酒場をイメージしがちだが、ここ最近はレストランでもコの字カウンターでシェフや客同士でコミュニケーションを楽しむ店が増えている。

一人で行ってもシェフと会話ができて楽しめるし、恋人と行っても自然と周囲に交流が生まれて盛り上がったり。

視線や会話が縦・横・斜めに飛び交うのはコの字型ゆえ。きっと楽しい時間が過ごせるコの字型カウンターをご紹介しよう!



スタンディングで楽しむコの字カウンターは、吹き抜けで開放感溢れる空間
異国情緒を感じさせるワインと料理の店 『バル マラケシュ』

神田神保町一丁目奇数番地エリアにある『バルマラケシュ』。

同店があるエリアはかつて「神田村」と呼ばれた、書籍・雑誌の小規模取次店が数多く並んだ界隈。2003年に再開発が完了し、その数は減ったが、まだいくつかは残る。

そんな、とある本の仲卸店倉庫を改造した店舗は、1階奥のキッチン前と手前ドリンクスペースとにカウンター席、2階にテーブル席を有する。

吹き抜けとなった手前ステンレス製コの字カウンターはスタンディング席。ハイスツールの用意もあるので、時と場合に応じて、自由な展開が可能な空間だ。ふたりで立ち呑み、グループでテーブル席と、お客側も自在に使い分けができる。



子羊モモ肉のタルタル タイムのアクセント。子羊のパンチある風味に、塩気と酸味をきっちり効かせて

ワインは、スペイン、モロッコ、クロアチア、レバノンなど、ヨーロッパ、アフリカ、中近東にわたる多彩なリストを揃える。

ボトル、グラスを用意し、レバノンやチュニジアの蒸留酒なども置く。



ひな鶏のフリカッセソテー キノコとクリィムのアニス風。メリハリある味でごはんはもちろん、酒も進む。仕入れ状況などにより、メニューは異なる。写真は一例

寄り添う料理は、異国情緒あるワインの香りと厚みのある味に負けない、スパイシーかつ塩気をきっちり利かせたパンチあり系フレンチだ。

コの字カウンターなら、新しい味に出会うためにサクッと寄ってみようかという気軽さがある。きっと近々足を運んでみたくなるレストランだ。


スタッフの活気もスパイスになり、場が盛り上がる!



キッチンをぐるりと囲むコの字型のカウンターが特等席
あの人気店の2号店はやっぱり肉に強い! 『カンティーナ カーリカ.リ』

2013年に開店し、またたくまに“予約が取れない店”の仲間入りを果たした、学芸大学『オステリアバル リ.カーリカ』。満を持して、2015年9月に2号店が登場。その名も『カンティーナ カーリカ.リ』。“カンティーナ(酒場)”と冠してある時点で、ワインラバーに嬉しい店であることは言わずもがな、だ。

東横線の高架下という、アクセス抜群の立地。中央に、キッチンをぐるりと囲むコの字型のカウンターがあり、スタッフの活気が店全体を盛り上げる。



「黒毛和牛のステーキフリット」は、銘柄は定めずに良い状態の肉を選ぶ。伝統的なキャンティ・クラシコの造り手「ポデーレ エ ボンチエ」は最高の相性。メニューは一例

肉料理のクオリティとボリュームで名を馳せた『リ.カーリカ』同様、こちらのメニューでも肉料理がやはり充実。

黒毛和牛のステーキを筆頭に、会津の馬肉、北海道産の鹿などがメニューを賑わせる。

自家製のパテやシャルキュトリなど、手間暇かけた品も数多く。



左.「北海道産鹿のハンバーグ」はりんごとさつまいものマッシュ添え。凝縮感や奥行きを感じさせるピエモンテの「サン・フェレオーロ」と。右.「シャルキュトリ盛り合わせ」(2人前)は、自家製プロシュートコット、十和田の羊ポルケッタ、鴨の生ハム、レバーのコンフィetc.、が山盛り。オレンジ色を帯びた白ワイン「サッソカルロ」と。メニューは一例

そうした料理の名パートナーたるワインは、自然派の造り手のもののみで「ざっと100銘柄はあると思うけれど数えきれない」と苦笑するのは、オーナーシェフの堤亮輔氏。

しかもグラスワインで常時20種類以上提供と、客の心をくすぐるツボをしっかり心得ている。



「肉料理と一緒にたっぷりの野菜料理もぜひ!」 2号店を預かるシェフ・角田直也氏。若いスタッフを牽引するリーダーとして、厨房で腕を振るう。堤氏も、『オステリアバル リ.カーリカ』とこちらを行き来している


コの字カウンターの王様?『フロリレージュ』をご紹介!



「川手劇場」とも言われるカウンター席。黒を基調とした店内は、シックでクールでありながら、どこか温かみも感じられるのは不思議
臨場感満点のカウンターでいただく至福のフレンチ『フロリレージュ』

日本の風土を表現するフランス料理を追求し、革新的な皿を提供し続ける『フロリレージュ』。

まず目を引くのは大胆な内装。広々としたオープンキッチンが中央に位置し、それをぐるりと取り囲んでカウンター席がある。

おしゃれなコの字カウンターが増えたのは、この店からかもしれない。



日本産の食材を用い、フランス料理の枠を超えた独自のスタイルを発信する川手シェフ。シェフの調理シーンも間近で楽しめる

シェフズテーブルの進化系と言うべきだろうか。客は席に着いた瞬間から厨房と一体化し、全身で調理と料理を味わうという何ともドラマティックな仕掛けである。



「未来へつながる料理・牛」では、経産牛の干肉、クズ野菜から取ったコンソメを使用

皿ごとに「出逢い」「投影」といった発想の基点となる言葉がタイトルに付くが、たとえば「未来へつながる料理・牛」という料理は、今まで加工肉にしかならなかった経産牛にスポットを当て、文字通り、未来へつながる食材の可能性を発信したものだ。



カウンター席がメインだが、厨房脇には半個室のスペースも用意されている

このひと皿に代表されるように、「現状の既成概念を打ち破り、社会全体の食に訴えかける情報を発信したい」という想いが川手シェフにはある。

そんな食の未来まで見据えた新境地を、コの字カウンターの目の前でぜひ体験してほしい。


パリの名店さながらの味をカジュアルに楽しめる!



まるでカフェなカジュアルな雰囲気の店内で、本格的なフレンチタパスが楽しめる
ワンコインから楽しめるパリの名店さながらの美味『kiki』

長いコの字を描く、ちょっと珍しいカウンターは野田雄紀シェフ自らが設計したものだ。

パリの『タイユヴァン』で修業した後、神楽坂『ルグドゥノム ブション リヨネ』で3年間スーシェフを務めた。

たったひとりで始めたこの店では、ガストロノミーの技を凝縮したフレンチタパスがカウンターで気軽に楽しめる。



左.料理は一から作るものと、あらかじめ仕込んだものが半々 右.店内のランプシェードは、アッシュ・ペー・フランスのバザー・エ・ガルド・モンジェにて購入した

「フレンチは敷居が高いと考えている人への意識改革に挑戦したい」と、料理は500円前後、1000円前後、1500円前後の3プライス制。

ほぼ日替わりで、全て黒板に書き出される。



左.メニューはほぼ黒板にて。すぐに提供できる料理を充実させるため仕込みには時間を掛ける 右.インカの目覚めのフライドポテトと温野菜。自家製タラマ(タラコとサーモン)ソース¥980

「ガストロノミーの魅力を充分に知りながらも、実際、自分がフランスで通いたくなったのはカウンターの店だった」

そんな自身の経験を活かした店のカウンターは、アンティークや中古家具など、ひとつひとつの椅子をシェフが吟味して集めた。さながらカフェのように気軽な雰囲気の店内だが、提供される料理は本物の凄みを持つ。



動線とひとりでの接客を考慮して配置されたカウンター内部。ひとりの料理人には充分なスペース

例えば、シャルキュトリーの盛り合わせや玉子のファルシーなど、簡単なオードブルや肉料理も、仕込みに膨大な手間を掛ける逸品。1皿入魂の料理は、装飾を極力排除し、その分素材に原価を掛けているという。

ワインはブルゴーニュのお手頃な銘柄をセレクト。半分以上は自然派で、それをグラス680円から用意する。食後にはアルマニャックやマールといった食後酒まで完備するのも心憎い。



自家製リエットのタルティーヌ¥580。パンはフランスより生地を取り寄せ、店で焼いたもの

「スタイルはカジュアル。けれど本物を提供する店でありたい」と、若きシェフの志は高い。

カウンターに座れば、誰もがその想いを感じられるはずだ。


焼き鳥だけどオシャレ!デートで使えるコの字カウンター!



「しっかりと焼かないと肉の旨みは出てこない」。30年近く、日々切磋琢磨する中で見つけた和田さんの持論だ
銀座に相応しい品格を醸す人気焼鳥店『BIRD LAND』

焼鳥は威勢の良さが身上のように思われがちだが、さにあらず。

焼鳥界の巨匠・和田利弘さんの?焼き?は、極めて静かだ。なぜなら「肉はできるだけ返さないこと」、これが、和田さんの肉焼き全般に対するポリシーだからだ。



左から「手羽先」¥594、「つくね」¥540、「ねぎま」¥486、「皮」¥432、「スジ」¥486

じっと串を見つめ、ひっくり返す頃合いを見計らうその姿は、あたかも手練れの剣客が、僅かな隙も逃さず相手の動きを見極めんとするかのようだ。

鶏肉の微妙な変化を一瞬たりとも見逃すまいと、真剣そのものだ。



焼き場を中央にして配されたコの字型のカウンターはまさに和田さんのステージだ

「頻繁に返すことで鶏肉の旨みが損なわれることは、化学的にも立証されています。場所は変えても、返す回数は1〜2回で十分。あまりいじらずギリギリまで待つ、そこが肝心なんです」。

だが、そのためは炭の置き方が大きくものを言うことになる。炭の火力は中央部が強くなる。この事実をよく念頭に置き、火力にムラができぬように並べる、これがスムーズに焼くためのポイントなのだ。

そう、焼きの極意は、炭の置き方、ひいては串打ちの段階から既に始まっていると言っても過言ではないだろう。また、肉の状態や部位によっても、当然焼き方は変わってくる。すべては、その独自の焼きの美学から生み出されたスキルなのだ。


店主のトークにほれぼれ!一人でも楽しめるコの字カウンタ-はここ!



特等席のカウンターで小野木氏との会話や仕事姿を見れば楽しさ倍増!延々と飲めてしまいそう。
一人でもデートでもしっぽり飲める新和食酒場『広尾 小野木』

天現寺からほど近い場所に誕生したここは、渋谷の『食幹』で腕を振るってきた料理人・小野木茂樹氏の名を冠した一軒。

1人でも楽しめる居心地良い空間は、永く熟成された無垢を大胆に使ったカウンターにどっしり構えるダイニングテーブルの存在感、打ちっ放しのコンクリートと無垢のコントラストが最高にカッコイイ。



「海老”び”の炊き込みご飯」

料理は、小野木氏のオリジナリティが光るメニューが日替わりで並ぶ。

フルーツの白和え、生ウニと塩トマトのさっぱりジュレなど、おすすめを盛り合わせた前菜や、肉屋も驚く「肉盛り合わせ」など幅広く、自由闊達な小野木氏の発想と手練な技術が融合。



フレッシュなオマール海老を豪快に炊き上げる

看板料理の「海老”び”の炊き込みご飯」は驚きのビジュアルで迫力満点。フレッシュなオマール海老を豪快に炊き上げたご飯は旨味が溢れ満足感もアリ!目の前で海老の身が丁寧にほぐされごはんに混ざると、白米がほのかに海老色に変わり、赤出汁とも相性抜群の〆ご飯の完成。

残ったご飯は持ち帰りもできるが、この美味しさは完食間違いナシなのである。