ポケモンGOですっかり知られるようになった位置情報ゲームや位置情報を使ったアプリ。
GPS(Global Positioning System)自体はもともと軍用のシステムで、それが商用としてカーナビに使われるようになり、次第に小型のGPS受信機が携帯電話に搭載されるようになる。
iPhoneが標準でGPSセンサを組み込んだこともあり、スマートフォンのモバイルアプリで活用されて注目されてきたという背景がある。

スマートフォンで標準的な機能になったとはいえ、iPhoneとAndroidとで位置情報の求め方や精度が異なるという難しさもありつつも、当時、かなりの位置情報アプリが登場しては消えたりしていた。ユーザーが(PCよりもはるかに)身近に持ち歩くスマートフォン、その取得可能なデータとしての「位置情報」はそれだけ、非常に魅力的だった。

◎GPSの仕組み
GPSは人工衛星を使った現在位置を測定するシステムのこと。

ざっくりいうと、GPS衛星から送出される電波を受信機が受け取って受信機の位置を測定するという仕組み。
衛星からの電波にはその衛星の「宇宙での位置」と「電波を出した時刻」が含まれている。
このデータを元に、自分が衛星からどれだけ離れているかという距離を計算して割り出すのだ。

実は、1つではその衛星と自分の距離しかわからない。
そこで、2つ3つとデータを取得する衛星の数を増やし、複数の衛星からの距離から受信機の場所を特定しているのだ。現在では最低4つの衛星を使っているそう。

この手の位置情報を使ったアプリでは、デバイスのGPS情報を取得しサーバと通信することで、アプリを起動している場所の情報を元に、ユーザーに対して何らかのアクションを起こすという仕組みになっている。
アプリが提供する機能にもよるが、常にシステムリソースを使い続けるという設計はマレで、必要なタイミングでGPS情報を取得し通信するということのほうが多い。
ポケモンGOを起動しているスマートフォンが非常に高熱になるのは、かなりの頻度でGPS情報を取得しながら通信も行っているからだと思われる。

ポケモンGOで、アプリを起動したまま地下鉄に入ると「GPSの信号を探しています」と表示され、左上のアイコンが回転状態になり、ゲームを続けることができなくなってしまう。この場合Wi-Fiをオンにすることで多少改善したりする。

このように、現在ではGPSだけではなく、Wi-Fiの基地局を使うなど、より誤差を少なく、途切れることなく(GPSは建物内や地下など、衛星からの電波が遮蔽されると取得できないという弱さがある)位置情報が求められるような仕組みを取ることが多い。

◎位置情報の「情報」としての意味
スマートフォンで位置情報が取得できることがどうして魅力的なのかというと、
・誰がどこにいるのか
・その人がどういう嗜好の人か
・どういう商品の購買歴があるか
など、ユーザーの行動を取得し、行動に紐づけることにより、ダイレクトにマーケティング活用できると期待されたからだ。

安直だが、ユーザーの位置情報を使って、近くのレストランやカフェなどの広告を表示するCMなどは、すぐに考えつくだろう。

一方、位置情報には物理的にいる場所を特定される怖さ、ちょっとした「気持ちの悪さ」もある。

結果からをいうと、マップアプリなどの活用を除けば、位置情報を利用したサービスはこれまで多く登場したものの、あまり流行らなかった。

理由はいろいろあるだろう。
前述のように、場所を特定されることへの抵抗感、「位置情報」自体のわかりにくさ。
しかし、逆にいうと、これまでは、位置情報と絡めて受け取りたいサービスがあまりなかったのではないか。

今回のポケモンGOのブームを考えると、特にそう思う。
「ポケモン」というコンテンツのおもしろさがあって、成り立つゲームシステムで、そこに異論があるわけではないのだが、そのゲームで遊びたいなら位置情報を送信し続けてもかまわないと人は思うのだ。

もちろん、SNSへの投稿、写真データに含まれる位置情報について、セキュリティ的に注意する必要はある。

ただ、もうちょっと気楽に考えてもいいのかもしれない。

セキュリティ的に大きな問題である、プライバシーの問題だから、と必ずしも過敏になり過ぎる必要はなく、ゲームを遊ぶ楽しさや、サービスで得られる利便性とのトレードオフに目を向けてもよいのかもしれない。

現状のポケモンGOでは、広告類の表示はない。
各アイテムを課金することで収益を上げる課金モデルになっているからだ。

これがフリーミアムモデルであったらどうだっただろうか。
表示される広告をクリックすることでアイテムが入手できるなら、やはり我々は喜んで受け入れられたかもしれない。


大内孝子