もし大谷翔平がセ球団入りしていたら… 登板試合限定の“二刀流”効果は?
大谷の二刀流のインパクトは? 登板試合限定の可能性を探る
北海道日本ハムの大谷翔平投手の投打“二刀流”の挑戦が3年目に突入する。二刀流そのものを疑問視する声は未だあるが、2014シーズンの好成績のインパクトは大きく、現段階で投手と野手どちらに専念すべきかを自信を持ってジャッジする解説者などは見かけなくなった。
そんな折、ある解説者が「セ・リーグのチームに入っていたら、話はもう少し簡単だったんですけどね」と漏らしていた。セ・リーグの球団で先発投手を務める一方で、登板試合には打席に入り打力を発揮するという簡易的な二刀流であれば、大谷投手が投手専任のかたちをとっても「打者としての才能を無駄にした」と受け取られなかったのではないか、というのだ。確かにそうかもしれない。
ところで、大谷投手がセ・リーグの球団に入り自身の登板した試合に打席に立っていたら、チームの得点力をどれだけ上げることができるのだろうか。投手の打率は1割ほどで、野手と比較すると四球も少なく、長打もほとんど期待できない。打線の中では大きな弱点だ。このような位置に野手と比べても優れている大谷投手が打席に入れば、チームの得点力は大きく変わるはずだ。
そんな「もしも」を確かめてみよう。やり方としては「セ・リーグの平均的な打線」から投手の成績を除き、代わりに大谷投手が加わったと仮定した場合の得点力を求めてみた。
2014年のセ・リーグ6球団の平均打率は.264、出塁率は.329、長打率は.391だった。詳しい数字は以下のようになる。
打席:33163
打数:29273
安打:7723
二塁打:1301
三塁打:108
本塁打:738
四球:2662
死球:279
犠飛:198
また、この成績からアウトを27個取られるまでに奪えると予想される得点であるRC27(注1)は4.38となる。(実際のセ・リーグの平均得点は4.22。実値は理論値より少し低めに出ている)
そして、この1試合で約4.4点を奪う打線から投手の打撃成績を除く。
打席:33163(総数)−1692(投手)=31471(野手)
打数:29273−1458=27815
安打:7723−175=7548
二塁打:1301−17=1284
三塁打:108−3=105
本塁打:738−3=735
四球:2662−39=2623
死球:279−0=279
犠飛:198−2=196
投手成績を除いた「平均的な野手による打撃成績」で、再度RC27を計算すると4.72となる。1番から9番まで、平均的な選手だけで打線を組むと、推定される得点はやや増える。
平均的野手8人+大谷投手の打線の攻撃力は?
最後に、この平均的野手で組んだ打線に大谷投手を組み込む。平均的野手8人と大谷投手で組む打線はどんな攻撃力になるのか。
これを計算するには、大谷投手:平均的野手=1:8という比率で成績を足し合わせればよい。大谷投手の2014シーズンの打席数である234の8倍の1872打席当たりの平均的野手の安打、二塁打、本塁打、四死球等の数を求め、これを2014年の大谷投手の成績と足す。
打席:31471×0.059483=1872 1872(野手8人)+234(大谷)=2106
打数:27815×0.059483=1655 1655+212=1867
安打:7548×0.059483=449 449+58=507
二塁打:1284×0.059483=76 76+17=93
三塁打:105×0.059483=6 6+1=7
本塁打:735×0.059483=44 44+10=54
四球:2623×0.059483=156 156+21=177
死球:279×0.059483=17 17+0=17
犠飛:196×0.059483=12 12+1=13
この成績から計算すると、平均打率は.272、出塁率は.338、長打率は.416、RC27は4.86となる。投手も含めたセ・リーグの平均的な打線のチームのRC27は4.38だったので、大谷投手を打線に加えると、その試合の1試合当たりの平均得点は0.5点上がると推定される。
2014年にリーグトップの得点力を見せたヤクルトの平均打率は.279、出塁率は.339、長打率は.412、RC27は4.87。「平均的野手8人+大谷投手」の数字とほぼ同じ。大谷投手が登板する試合について、平均的な得点力のチームがヤクルト打線並の得点力になる――。そう考えると、こうした形の“二刀流”にも、それなりの影響力があるようにも思える。
もちろん、2014年の大谷投手は、投手として登板した試合は打席に入っておらず、打撃成績は野手として残したものだ。同じ試合で投手を務めながらの打撃で同じパフォーマンスが出せるかはわからない。また234打席は規定打席数の半分程度の打席数に過ぎず、この攻撃力を継続的に発揮できると見なすには少なすぎるという問題もある。しかし、こうしたシミュレーションは、大谷という存在の大きさを教えてくれるものだろう。
(注1)RC27:Runs Created per 27out
出塁に関わる貢献と進塁に関わる貢献の兼ね合いから、打者が創出した得点数を推定するRuns Created(RC)を用いて、打線が1試合分に当たる27アウトを喫する間に創出する得点を推定したもの。
RC={(A+2.4×C)×(B+3×C)÷(9×C)}−0.9×C
A=安打+四球+死球−盗塁刺−併殺打 B=塁打+{0.24×(四球−故意四球+死球)}+0.62×盗塁+{0.5×(犠打+犠飛)}−0.03×三振 C=打数+四球+死球+犠打+犠飛
RC27= RC÷(打数-安打+盗塁刺+犠打+犠飛+併殺打)×27
DELTA・市川博久●文 text by DELTA ICHIKAWA,H
DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1〜3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。http://www.deltacreative.jp
