こんにちは、神戸市上海事務所の張文芝です。今回は、三菱商事の華東地区でのビジネスを担う三菱商事(上海)有限公司董事長兼総経理の山口力さんに、ビジネスの展望や人材現地化への取り組み、上海日本商工クラブ理事長としての活動などについてお話を伺いました。

写真拡大

【張文芝の国際人探訪】

 こんにちは、神戸市上海事務所の張文芝です。今回は、三菱商事の華東地区でのビジネスを担う三菱商事(上海)有限公司董事長兼総経理の山口力さんに、ビジネスの展望や人材現地化への取り組み、上海日本商工クラブ理事長としての活動などについてお話を伺いました。

常に他社の一歩先を目指す

 張文芝: 山口さんは三菱商事(上海)有限公司の代表として、華東地区におけるビジネスの陣頭指揮を執るほか、今年、上海日本商工クラブの理事長に就任されるなど、八面六臂の活躍をされています。実は神戸とも縁があると伺っています。

 山口力さん: ええ、大学進学まで神戸で過ごしました。今も母が神戸に住んでいます。神戸は海と山に囲まれ、自然と街が一体となった魅力的な国際都市ですね。神戸市上海事務所でも中国で観光PRをされていると思いますが、中国の方々にもっともっと神戸を訪れてほしいです。

――神戸市の観光PRに関して、何かアドバイスをいただけないでしょうか。

 神戸単独のPRもいいですが、関西の他都市とも連携し、地域で一体となって神戸の魅力、関西の魅力をPRされるといいのではないでしょうか。

――ありがとうございます。私は95年に神戸に留学しましたが、その際、奨学金をいただいたのが三菱グループでした。本日、こうして山口さんにお会いできるのも、留学時代に三菱グループに助けていただいたお陰です(笑)。さて、三菱商事は日本を代表する商社として、中国でも非常に存在感があります。常に他社の一歩先を行くビジネスを展開している印象があります。そうした企業のリーダーを務めている山口さんは、広い知見と、開拓者としての勇気をお持ちなのだと思います。三菱商事が他社に先駆け、中国でのビジネスを再開したのは、中日国交正常化の1972年ですね。

 そうです。72年、三菱グループで訪中したのをきっかけに、ビジネスをスタートしました。81年に上海で外国企業の中でいち早く駐在員事務所を設け、92年には現地法人を設立しました。

――中国でも多方面でビジネスを展開されていますね。

 三菱商事は、世界80カ国・地域に200超の拠点を持つ日本最大の総合商社です。地球環境事業、新産業金融事業、エネルギー事業、金属、機械、化学品、生活産業など、幅広い産業を事業領域とし、ここ中国でもほとんどすべての部門が事業展開しています。中国では現在、消費、環境・省エネ、新エネルギー、インフラがビジネスのキーワードになっていることから、これらの関連事業に注力しているところです。

――消費カテゴリーでは、食品流通や自動車販売にも注力されています。環境分野にも強いですね。

 食品関連では、日系メーカーが中国で生産した食品、あるいは日本からの輸入食品の販売のお手伝いをしています。例えば、上海良友集団と合資で設立した上海良菱配銷有限公司を通じ、流通・卸のサービスを提供しています。自動車分野では、三菱自動車との折半出資で09年に設立した三菱汽車銷售(中国)有限公司が、三菱自動車製品の輸入・販売を行っています。三菱自動車の得意分野であるSUVを中心に、三菱自動車製品の拡販に努めているところです。さらに、環境分野で注力しているのが排出権ビジネスです。中国国内の水力発電などの温室効果ガス削減に貢献するプロジェクトで削減される温室効果ガスを、国連のルールに則り排出権にして、日本や欧州の電力事業者を中心とする需要家に販売を行っています。

現地社員の活躍がカギ

――御社の社員数はどのくらいでしょうか?人材現地化に積極的で、たくさんの現地社員が活躍していますね。

 社員数は中国の三菱商事全体で730人、上海拠点の当社だけで330人になります。上海拠点は、世界200拠点の中で社員数が最大規模となっています。これは日本からの駐在員が多いのではなく、現地の社員が多くなっているためです。中国でビジネスを成功させるためには、やはりナショナルスタッフが活躍しなければなりません。こうした考えの下、人材教育、現地社員の育成に積極的に努めており、優秀な人材が育ってきています。

――人材育成の一環としての日本本社への研修制度などもあるのでしょうか?

 幹部候補の人材には、日本本社に一定期間出向してもらっています。これまで、OJT(職場内訓練)からOffJT(職場外研修)まで、いろいろなプログラムを整備し、取り組んできました。手応えもありますが、一方でまだまだ道半ばだと考えています。できるだけ早く、ナショナルスタッフからトップを輩出できるよう、今後も人材育成に取り組んでいきます。

活力ある環境で自己成長

――山口さんとお話しているととても親しみを感じます。大企業のトップである偉い方ですから、多少緊張していたのですが、まるで親しい友達と話しているような錯覚を覚えます。誰とでもすぐに打ち解けられるのは、国際的なビジネスパーソンの必須条件ですね。

 私は商事会社の人間ですから、相手に会いたくないと思われたら終わりです(笑)。張さんにそう感じていただけるのは、もしかしたら私が中国での仕事に非常にやりがいを感じ、楽しんでいることが影響しているのかもしれません。中国で現地社員といっしょに働きながら、学ぶことがたくさんあります。上海に来て4年ですが、街は毎日成長し、ビルは背が高くなり、地下鉄のトンネルがどんどん伸びている。街行くひともみんな目を輝かせている。会社のスタッフも同じで、活き活きと働いている。こうした環境にいると、自分も負けていられないと元気になりますね。

――中国の環境が山口さんにはすごく合っているようですね。海外で働くビジネスパーソンは、やはりその国のいいところも悪いところも受け入れられる、そうした度量が必要だと思います。悪いところばかり見ていないで、すべてを受け入れ、自分の成長に繋げる姿勢が大切です。

 張さんを受け入れないひとはまずいないでしょう(笑)。

――…ありがとうございます(笑)。

 今回の東日本大震災に際しては、中国の方々の心の深さを改めて感じました。子供から老人まで義捐金を出していただき、大変感謝しております。中国人の困っているひとを助けようとする姿勢は、大変貴重です。日本人が忘れつつある、人間らしい温かさだと思います。

――山口さんはご本業でお忙しい中、今年、上海日本商工クラブの理事長に就任されました。

 私の役割は、商工クラブの各活動を通じ、会員企業の円滑な事業活動を側面からご支援するとともに、日中経済交流の発展と日中友好の促進に寄与することです。商工クラブはこれまで、市政府との間に太いパイプを築いてきており、今後も重要な役割を果たしていけると考えています。

――それでは最後に、三菱商事(上海)有限公司のトップとしての抱負をお聞かせください。

 中国がWTOに加盟した01年から現在までの10年間で、中国の社員数は2.5倍になり、売り上げは15倍の規模に拡大しています。中国は消費市場として、今後も内陸部を中心に成長が見込まれ、当社のビジネスチャンスもまだまだ拡大すると考えています。例えば、食の安全管理だとか、流通の効率化、環境・省エネなど、現在の中国が必要としている日本のノウハウは多いです。今後もこうしたノウハウを持つ日本のパートナーと、中国企業や消費者の皆さんを繋ぐ仕事に尽力していき、中国と一緒に成長、発展したいです。(2011/08/01)(情報提供:ウェネバー/ビズチャイナ/ビズプレッソ 取材担当:岩下祐一 編集担当:水野陽子)

==================================================================プロフィール:山口力(やまぐち・ちから)

1975年、東京大学工学部卒業。同年、三菱商事(船舶部)入社、ロンドン勤務、船舶・鉄構部、機械担当役員付、会長業務秘書、船舶ユニット、機械GCEOオフィス、中国事業戦略オフィス等を経て、07年4月、執行役員・中国副総代表、上海事務所長、三菱商事(上海)有限公司董事長・総経理に就任、現在に至る。