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厚生労働省が2025年7月に発表した『令和6年簡易生命表』によると、2024年の平均寿命は女性87.13年、男性81.09年となり、国際比較では、女性は40年連続で世界1位を維持し、男性は6位となったそうです。そんな中で、東京大学名誉教授である血液学者の北村俊雄さんは「100歳を超えても、元気で楽しく健康に生きられる――。近未来の医療でかつてない長寿社会が実現します」と語ります。そこで今回は、北村さんの著書『東大名誉教授が教える 死なない生き方 科学でひもとくアンチエイジングと健康寿命』より一部を抜粋し、「『健康寿命100歳』を手に入れるための対策」をお届けします。

【図】筋肉量増加が期待される!「分岐鎖アミノ酸」の効用

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ロイヤルゼリー

前回に続き、効果が期待できるかもしれないサプリメントを紹介する。

ミツバチの世界では、遺伝子が同じにもかかわらず集団の中で1匹だけ選ばれた女王バチは、働きバチが運んでくるロイヤルゼリーを食べることによって、体の大きさが働きバチの2〜3倍近くになる。

寿命に至っては、働きバチの約1か月に対して数十倍の3〜4年も生きる。この事実によってロイヤルゼリーは、長寿の薬として古来多くの人が服用してきた。私の祖母もロイヤルゼリーを食べつづけていた。

専門的になるので詳しくは述べないが、ロイヤルゼリーの効用には、単なる栄養というだけではない科学的根拠がありそうだ。ロイヤルゼリーにはDNAの転写を高める(結果として蛋白質が増える)効果があり、それが女王バチの身体が大きくなり寿命が延びる原因であると報告されている。

一方、人間では高齢化により必要な遺伝子の発現が徐々に低下することが知られており、ロイヤルゼリーがこれを回復させることが期待される。

N-アセチルシステイン

N-アセチルシステインは、日本では「ムコフィリン」という吸入薬と「あゆみ」という内服薬として販売されているが、いずれも処方箋が必要な薬である。

前者は痰の切れをよくするため、後者はアセトアミノフェン過剰摂取の解毒剤として処方される。N-acetyl cysteinの頭文字をとってNACと呼ばれることも多い。


『東大名誉教授が教える 死なない生き方 科学でひもとくアンチエイジングと健康寿命』(著:北村俊雄/日経BP 日本経済新聞出版)

NACはグルタチオンの前駆体であり、グルタチオンになってさまざまな解毒作用を発揮する。たとえば、造血幹細胞などの細胞が酸化ストレスで傷つくのを、抗酸化作用で防ぐことが示されている。我々もその効果を確認している。

こういう背景もあり、欧米では研究者や医師を中心としてかなりの人がNACを服用している。

コエンザイムQ10

コエンザイムQ10は、ミトコンドリアでのエネルギー産生を促し、抗酸化作用も示すと言われている。

目立った副作用はなさそうだし、抗酸化作用は前述のビタミンCやビタミンE、NACも同様にあるので、老化防止に役に立つ可能性はある。

コエンザイムQ10はミトコンドリアに多く含まれていて、ミトコンドリアが産生する活性酸素を中和すると言われている。そのため、スポーツ後に筋肉などの回復目的で使用されることが多い。

しかしながら、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所によると、いくつかの報告では、効用として謳われている疲労回復などに、明らかな効果は認められなかったという。また科学的な総説論文でも可能性はあるが、議論が多いところとされている。

BCAA(分岐鎖アミノ酸)は筋肉量増加に効果がある

アミノ酸は全部で20種類あるが、そのうちバリン、ロイシン、イソロイシンを含む9種類のアミノ酸は体内で合成することはできないので、栄養として摂取する必要がある「必須アミノ酸」と呼ばれている。中でもバリン、ロイシン、イソロイシンは筋肉を作る際に重要な原料と考えられており、この3つのアミノ酸を含むサプリメントは数多く販売されている。この3つはBCAA(分岐鎖アミノ酸)と総称されるグループに属する。

実際、ロイシンとイソロイシンは、筋肉へのエネルギー源としてのグルコース(糖)の取り込みを増加させ、筋肉細胞におけるグリコーゲン産生を高める(図)ので、筋肉量増加や運動による筋肉損傷の修復に役立つだろう。

興味深いことは、造血幹細胞や白血病細胞もバリンを抜くと増殖が著しく抑制されることだ。また、マウスでバリン欠乏食を与えると、欠乏感が強いらしく、仲間のマウスや自らの身体の一部を食べることが観察される。

ロイシン、イソロイシンを含む他のアミノ酸の欠乏では、このように激しい症状は出ないので、バリン欠乏の生命体への影響がこれほど大きい理由にも興味が持たれる。

プロテイン

筋肉量を保つため、あるいは増強するためのプロテイン(蛋白質)は、いろいろな種類の製品が出まわっている。ボディビルダーたちもプロテインを食べてすごい筋肉をつけているので、効果はもちろんあるに違いない。

ボディビルダーたちの寿命はどうだろうか? 短命だという結果と逆に長命だという結果が報告されている。ボディビルダーたちは、プロテイン以外に男性ホルモンなど、副作用がありうる薬も飲んでいることが多く、それが若年における急死につながる可能性がある。一方、無理なく、できるだけ生理的に筋肉をつけて健康管理がしっかりできていれば、少なくとも平均寿命が短いということはなさそうだ。

プロテインは、吸収されやすさやカロリーなど、さまざまな差があるとしても、結局は消化されてアミノ酸になって吸収される。アミノ酸サプリメントでも同様の、あるいはBCAAなら同等以上の効果が得られるだろう。

普段の食事で蛋白質をたくさんとるように意識することは、特に高齢者では大事だ。

朝食の時などに、たとえば魚肉ソーセージや竹輪など、蛋白質性のものを少し余分に食べるようにするとよい。成人女性の蛋白質の1日推奨摂取量は50グラム以上、成人男性のそれは60グラムである。魚肉ソーセージや竹輪には、大きさにもよるが、1本4〜15グラムくらい含有されているので、十分蛋白質補充になるだろう。

※本稿は、『東大名誉教授が教える 死なない生き方 科学でひもとくアンチエイジングと健康寿命』(日経BP 日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。