「ドーンっていう音」自宅の擁壁が突然崩落…住宅の基礎が“宙に浮いているよう”全国で相次ぐ擁壁崩落「専門家による無料調査」制度ある自治体も
高低差がある場所で土をせき止めるためにつくられた壁を「擁壁(ようへき)」といいます。この擁壁の崩落が、全国で相次いでいます。
【画像で見る】壁が突如バラバラと…全国で相次ぐ『擁壁崩落』 その瞬間
大阪府吹田市では住宅地にある擁壁が崩落するトラブルも発生しています。なぜこのような事態が起こってしまうのでしょうか。
崩落の主な原因は「擁壁の老朽化」とみられる
雨の中を走行中、斜面のブロックが土砂によって道路へ押し流され車が巻き込まれました。崩れたのは、国道沿いに設置されていた擁壁。
東京都杉並区では去年9月、高さ約5mの擁壁が崩れ、その上の木造2階建て住宅が倒壊。擁壁は約60年前に造られたものでした。住人は避難するなどして無事でした。
大阪では5年前、建設工事をしていた土地のそばの擁壁が崩れ落ち、上に建っていた住宅が倒壊しました。崩落の多くは、「擁壁の老朽化」が主な原因と見られています。
老朽化した擁壁『全国に200万か所以上』推計 豪雨で危険性増す
(東京理科大 高橋教授)「日本は高度経済成長期の頃は元気で、1960年代、80年代前半ぐらいまで、みんな持ち家をけっこう建てた。母数が多かった何百万戸(の擁壁)が寿命を迎えてきている。コンクリートの寿命は50年を超えるのはきついぐらい、30~40年たったものは本当は(擁壁の)コンクリートの寿命が終わっているぐらいのものが多い」
東京理科大学の高橋教授の推計では、老朽化した擁壁は全国に200万か所以上、近年は、頻発する豪雨によって、危険性が増しているといいます。
短時間の大雨で排水能力を超える水が地中に溜まると、擁壁に強い水圧がかかりひび割れや崩落につながるのです。
深刻なトラブル事案も
擁壁崩落をめぐっては、深刻なトラブルも起こっています。
「夢にも思いませんでした。まさかこんなことになるとは……」
「ドーンっていう音」自宅の擁壁が突然崩落
夫婦と息子の3人で2階建ての一軒家に住んでいます。
2年前、自宅の擁壁が突然崩落したといいます。
(中村毅さん)「ここが崩落した擁壁の部分で、ブルーシートがかかっている部分がそうですね。約6mぐらいの範囲にわたって崩壊しました。その時は家が壊れていくような恐怖もあってどうなるのかなって」
当時、隣の土地ではアパートの建設工事が行われていました。その最中、中村さんの家の擁壁の一部が音を立てて崩れたのです。
(中村あやさん)「ドーンっていう音だった気がします。いや、今までに聞いたことのないような音」
(中村毅さん)「近所の方もそれを聞きつけてこられて、飛んでこられました」
自宅は“宙に浮いているような感じ”
崩落したのは中村さんの家の南側の擁壁24mのうち約6m。1年半ほどが経った今も擁壁は直っていません。土が流出しないようベニヤ板で応急処置しています。
擁壁の崩落で…住宅の基礎支える土砂が流出?
住宅に影響はないのか。建築士に家の状態を見てもらいました。注目したのは、擁壁が崩落して土が流出した家の基礎部分。
(一級建築士 木津田秀雄さん)「35cmぐらいは(基礎の)下が空洞になっている。下に隙間が出ているので、少し宙に浮いているような感じ」
擁壁の崩落により住宅の基礎を支えている土砂が流出しているようにみえます。
(一級建築士 木津田秀雄さん)「土砂が流れ出てしまったら、先ほど見た基礎の下がどんどんえぐれていくので、建物の角が下がってく可能性はあります」
不動産会社は「擁壁自体が問題」と主張
中村さんは、アパートの建設を発注した不動産会社に「擁壁をつくり直してほしい」と要望。しかし、交渉は折り合いませんでした。
その後、中村さんは工事を差し止める仮処分を申し立て認められましたが、不動産会社側は工事を続行。そうしたことから、中村さん側は強制執行に基づき、公示書を設置するなどの対応を行いました。
その後工事は進み、擁壁が崩れた状態のなか、アパートは完成しました。
(中村毅さん)「1年半、ずっとこの状態です。雨も降って、地震もあったらどうなるか。そんなことを考えると心配で心配で仕方ない」
中村さんは、擁壁の崩落はアパートの建設工事が原因だとして、擁壁を造り直す費用など4153万円の損害賠償を求めて、現在、大阪地裁で調停が進んでいます。
不動産会社は「工事が原因ではなく擁壁自体が問題」と主張
不動産会社は調停の中でこう主張しています。
「擁壁の崩落は工事が原因ではなく擁壁自体が問題。擁壁には鉄筋が入っておらず危険な状態で土の圧力に耐えきれず崩落した」(不動産会社の主張)
MBSの取材に不動産会社は、「係争中のためコメントできない」としています。
調布市では「専門家による無料調査」制度も
こうした擁壁をめぐるトラブルを未然に防ごうと動き出した自治体もあります。
おととしから、東京都調布市はGPSを用いた機材を用い、市内に擁壁がどれほどあるのか測量会社と調査しています。
その結果、市内には高さ2m以上の擁壁や崖が約2300か所あることが判明。定期的にデータを取ることで、擁壁の傾きなど異変を事前に察知することにも役立てるといいます。
また、市民が自宅の擁壁が安全かどうか気になる場合、専門家が調査を無料で行ってくれる制度も。
60年以上前から石積みの擁壁を持つAさん。今すぐにでもつくりなおすことが必要との診断を受けました。
(Aさん)「ここを歩く人に被害があったら大変なのはすごく怖い。人に危害を加えるような擁壁だと心配で」
「任があるということも含めて伝えられるのは行政しかない」
市によりますと、昨年度は20件、専門家を派遣したということです。
市の担当者は、実感しづらい擁壁のリスクを市民に意識してもらえるように努力していきたいと話します。
(調布市都市整備部 鈴木紀恵建築安全担当課長)「擁壁が安全になっても日常生活に変化がない点が手を付けづらい要因。責任があるということも含めて伝えられるのは行政しかないところがあると思う」
忍び寄る擁壁崩落のリスク。手遅れになる前に、手を打つ必要があります。
(2026年5月15日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)
