「ベローチェ買収」でますます激化する“カフェ戦争” 今後は「脱コーヒー」がカギを握りそうなワケ〉から続く

 居酒屋チェーン「甘太郎」を筆頭に、多くの飲食店ブランドを展開するコロワイドが、「カフェ・ベローチェ」「珈琲館」などカフェチェーンを複数展開するC-Unitedを買収した。

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 コロワイドといえば、これまで「かっぱ寿司」「牛角」「大戸屋」などの有名チェーンを傘下に入れてきた経緯があるが、果たして今回の買収のシナジーはどこにあるのか。

業界5位のカフェ企業「C-United」の強みとは?

 昨今の外食トレンドとして、明るく広々とした店内でコンセントも完備しつつ、ワンドリンクでもゆったりくつろげるような「カフェ化」が進んでいる。その最たる例が、ゼンショーホールディングスの「ゼッテリア」と言えるだろう。かつてカフェ業界の専売特許であったものが、いまやこうした“門外漢”チェーンの参入によって競争がかなり激しくなっている。

 とはいえ、現在カフェ市場では5位の店舗数を展開するC-Unitedも、各社のカフェ化が進んだ時期に統合・会社再編を繰り返したし、しっかりと店舗へ投資、改装を進めてきた。年季が入った店も多かった珈琲館・ベローチェも含めて、今やかなりの店舗でコンセントが用意され、ゆったりした席で過ごせるようになったのはありがたい。

 現代風にリニューアルしつつ各ブランドの個性を生かした店舗づくりは意識しているようで、特に目立つのがベローチェだ。各社が喫煙スペースを削っていくなか、かつて同ブランドの象徴でもあった喫煙ブースを高確率で広く取っている。筆者の知人でも、かつて愛煙家の拠り所だった「コメダ」が喫煙スペースを縮小したことで、ベローチェに通うようになった人がいる。


喫煙者ニーズを捉えているベローチェ(筆者撮影)

 C-Unitedの3ブランドは、前記事で触れたように「フード充実」もそうだし、こうした「座席改良」といった点で、同じベクトルを向いていても、それぞれ独立を保っていることが分かる。

 この戦略は功を奏しているようだ。2021年に会社が発足して以降、200億円台だった売上は300億円を超え、2019年の合併前の各社合算と比較すると、2024年には利益率が約530%にも達している(2019年数値は「珈琲館」「シャノアール」「ポッカクリエイト」3社を合算して概算)。

ドトール・コメダがぶつかった壁も、乗り越えられる?

 カフェ業界3強で圧倒的な店舗数を誇る「スタバ」「ドトール」「コメダ」は出店しすぎて今や飽和状態に達している。密集地帯だと、新宿エリアだけでもスタバ・ドトールが30軒近く出店しており、これ以上の出店はカニバリに繋がりかねない。

 そこで各社は、新たな看板となる「サブブランド」に取り組んでいる。例えばドトールなら、邸宅風の広々とした店舗が特徴の「ドトール珈琲農園」、コメダなら、あんみつ・五平餅などの和食スイーツが豊富な「おかげ庵」などが該当する。

 既存店で飽和した地域でも、別ブランドならカニバリを起こさず、双方が順調に出店できる――と思いきや、そううまく行くわけでもない。例えばドトール珈琲農園・おかげ庵は全国20店を越えず、爆発的な成長を見せる気配も今のところない。

 その点、C-Unitedは、1970年創業の珈琲館に加え、2021年にベローチェ(株式会社シャノアール)、2023年にクリエ(株式会社ポッカクリエイト)が合流した経緯があり、それぞれのブランドがすでに強固な顧客層を有していた。極端に言えば各ブランドが至近距離・横並びで出店しても良いわけだ。そう考えると、C-Unitedが目標とする「2030年までに合計1000店」はかなり現実的である。

 こうした特徴は、フランチャイズオーナーにとってもきわめて好都合である。「クリエのオーナーが珈琲館を開業」「ベローチェオーナーがクリエを開業」といった具合に、フランチャイズからメガフランチャイズに進化してもらいやすい。

コロワイドとの合流で期待できる「新業態」とは?

 C-Unitedとコロワイドが一体になることで予想できる展開の1つが「カフェ居酒屋化」だ。

 カフェ業界のなかでは「プロント」が、17時以降に店舗を居酒屋仕様に変える「キッサカバ」で、人気拡大に成功している。17時以降になるとサワー・ハイボールなどがメニューに加わり、山盛りのウインナーや居酒屋メニューをみんなでシェアして、ワイワイ騒ぐ――コロナ禍からの回復基調に上手く乗ったこの業態は、居酒屋から歴史が始まったコロワイドのノウハウを転用しやすい。

 フードで言えば、コロワイドの代表的ブランドである居酒屋「甘太郎」の唐揚げや1ポンド赤身ステーキ辺りは良さそう。さらに、男性サラリーマンの支持が厚く喫煙スペースも確保されているベローチェなら、「タバコOKの居酒屋」として人気が出そうだ。

 実はベローチェは、プロントが2021年にキッサカバを始める2年前から、カフェを居酒屋化する「Vバル」なる業態を、都内7店舗で展開していた。しかし、間の悪いことにコロナ禍が直撃。その後は経営難や新会社発足で「Vバル」どころではなくなってしまい、その間にプロントが颯爽とキッサカバで成功を収める……という何ともベローチェにとっては不運な展開だった。

 コロナ禍も遠ざかり、コロワイド傘下に入った今がVバルリベンジのタイミングとも言える。今回の買収劇のシナジーとして、実現を楽しみに待ちたいところだ。

死角はコロワイドの“悪癖”か

 話題を呼んだコロワイドによるC-Unitedの買収劇だが、こうして見ると期待感は大きい。居酒屋業態に強いコロワイドと、カフェ業態がメインのC-Unitedで事業領域は被らないし、互いにノウハウを得ることができる。ここ数年、フードを強みに店舗数を倍増させたコメダのような成長曲線を描く可能性も十分にあり得る。

 あえて懸念点を挙げるなら、「コロワイドが“合理化癖”を発動しないか」、という点だ。

 これまでコロワイドは、アトム(「ステーキ宮」「アトム」などを展開)や、レインズインターナショナル(牛角など)を次々と買収。祖業の居酒屋(甘太郎)が業界ごと伸びを欠く中、買収した会社の経営改善で、利益を挙げてきた。

 しかし、M&Aは必ずしも順風満帆ではない。2014年に買収したかっぱ寿司は黒字化が遅れ、回転寿司業界の1位から滑り落ちたまま戻れない。2020年に大戸屋ホールディングスを買収した際にはセントラルキッチンの導入を巡って現場と対立するなど、どことなく危なっかしい印象は否めない。

 また、従業員の昼食時間を巡る対立で会長が「生殺与奪の権は、私が握っている。さあ、今後どうする。どう生きて行くアホ共よ」と社内報でメッセージを送る(2023年6月14日・現代ビジネス)など、企業としての体質も不安ではある。

 もしコロワイドが必要以上の合理化を目論んでいるのであれば、まずは各チェーンのカウンターに座って、黙してコーヒーを飲みながら「あえてバラバラな要素を残しているチェーンの強み」について考えてみるのが良いだろう。下手に合理化・統一化すれば、圧倒的に先行するスタバ・ドトール・コメダと大差なくなり、珈琲館・ベローチェ・クリエともども業界の隙間に埋もれてしまうのは間違いない。

(宮武 和多哉)