先月上旬にオープンした若手芸術家を対象としたシェアハウス

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 東京都三鷹市が先月、三鷹の森ジブリ美術館など文化施設が点在する市内の地域に、若手芸術家を対象としたシェアハウス「三鷹ヴィレッジ 森のアトリエ」をオープンさせた。

 次世代の芸術家を育成するとともに、住民の文化活動も促進したい考えだ。地域おこしや魅力創出につながるとして、都や他自治体も芸術家支援に取り組んでいる。(長谷裕太)

 シェアハウスは2棟あり、定員6人。居室内に階段があるメゾネットタイプで、2人1組で1階の共用部にある「創作活動室」を利用する。活動室は約7畳で、彫刻や絵画など芸術作品を自由に制作できる。2階には約7畳の居室が2部屋ある。

 JR三鷹駅から徒歩約15分の距離にあり、井の頭自然文化園にも歩いていける。家賃約3万円、共益費1万3000円で、周辺の物件に比べ格安だ。

 入居する彫刻家の淺井颯人(はやと)さん(24)によると、彫刻は材料費が月に3万〜5万円かかるうえ、展示会は会場費だけで数十万円になり、支出が多いという。作品の売り上げや貯金を生活費などに充てており「彫刻制作に必要な広さを安く確保できて助かる」と喜ぶ。

 日本画家の淵田紗葵(さき)さん(26)も「都内は家賃が高く、制作スペースも確保できる物件は理想的」と話す。

定員の3倍応募

 市が2023年春、土地と建物の寄贈を受けたことをきっかけに計画が始まった。市は有識者らによる研究会を設置し、活用方法を検討。この中で「若手芸術家は創作に使える場所が限られ、経済的な不安も抱えている」といった意見が出され、市が昨年度、約8565万円をかけて改修した。

 運営主体となるNPO法人「三鷹ネットワーク大学推進機構」が、今年2〜3月、30歳代前半までを対象に入居者を募集すると、定員の3倍を超す22人から応募があり、実績や面接を通して入居者が決まった。入居者は原則、3年間利用できる。

交流イベント

 2棟のうち1棟には、地域交流スペースが設けられ、水〜日曜日の午前10時〜午後5時に近隣住民が自由に出入りできる。

 26日には、地域住民ら約120人が参加して交流イベントが開催された。淺井さんら入居者が過去の作品を展示し、意図を説明したほか、地域住民らも交流スペースの活用法を考えるなどした。近くに住む森脇多恵子さん(70)も参加し、「高齢化が進む地域に、若い力が加わるのはありがたい。地域としても芸術家を応援していきたい」と話した。

 入居者による体験講座も今後開かれる予定で、市の担当者は「創作の現場を身近に感じられる、地域に開かれた場所にしたい」と期待を寄せる。

他の自治体でも

 都や都内の他自治体も芸術家を支援している。

 都は演劇の稽古場やアトリエの確保が難しい芸術家に対し、都営住宅などに併設する空き店舗や改装した都立日本橋高校の旧校舎(中央区)を割安で貸し出している。

 台東区は、区内で開催する音楽会や若手作家らによるトークイベントなどの文化芸術活動について、赤字分を最大240万円まで助成している。採択されると区から委嘱された専門家から助言やサポートを受けられる。

 文化政策に詳しい立教大学大学院の佐藤李青特任准教授は「行政からの支援は若手芸術家にとって経済負担の軽減になるうえ、様々な人と触れあうことで作品の新たな方向性を見いだす可能性がある。地域にとっては活性化につながる面もあり、双方にメリットがある」と話す。