●記憶に残る非常階段の踊り場シーン「あそこから始まった」
『カルテット』『大豆田とわ子と三人の元夫』『エルピス―希望、あるいは災い―』の佐野亜裕美氏がプロデュース、『きのう何食べた? season2』『ひらやすみ』の松本佳奈氏がチーフ演出を務めるドラマ『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系、毎週月曜22:00〜 ※FODで配信中)が好評だ。

選挙を裏で仕掛ける“選挙参謀”の主人公・星野茉莉を黒木華、「政治は遠くにあるもの」として過ごしてきた“政治素人の都知事候補”月岡あかりを野呂佳代が演じる、異色のバディものが誕生した。

本格的には初共演となる2人を直撃。互いの印象に始まり、佐野プロデューサーからもらった言葉、現場で覗く素顔を聞いた――。

(左から)黒木華、野呂佳代 撮影:蔦野裕

○たった一言で「やばい、頼もしい!」

――第1話のクライマックス、夜のビルの非常階段の踊り場にいた茉莉が飛び降りると思って、追いかけてきたあかりが慌てて手すりから引き離し、2人で座り込みながら語るシーンが大きな反響を呼びました。

黒木:今、ようやくチームができてきて、ひとりで世界に向かっていた茉莉に、足りないところを補ってくれる仲間が加わり、「アベンジャーズ」のようなチーム感で一緒に向かっていくシーンが多くなっています。ひとりではないという気持ちになれますし、現場も賑やかで楽しくて。そのスタートとして、1話ラストの非常階段の踊り場での2人のシーンは記憶に残っています。あそこから始まったという気持ちがあるので、とても好きなシーンでもあります。

――あのクライマックスは、脚本を読んだ段階から泣き、放送でもっと泣きました。演じているおふたりは、脚本を読まれる際、まずは演じることは考えずに読むのでしょうか。

黒木:そうですね。私はまず物語として全体を読んで、改めて自分の役を意識して読み直すのですが、あのシーンは泣けますね。

野呂:私はだんだん「こうやったほうがいいかな」って思いが入ってきちゃって、一時中断みたいになっちゃうんですよね。でも最近は慣れてきて、まずはフラットに読めるようになりました。フラットに読んだことで自然に出てくる感情もありますし。泣くという点では、今回の作品は特に、登場人物がみんな一生懸命で、何回読んでも泣けます。

――本格共演は初となります。最初の印象と、撮影を経て変わったこと、発見したことを教えてもらえますか?

黒木:テレビで拝見していた時は、明るくてかわいらしい方だなと思っていたのですが、共演してさらに素敵な方だなと思い、より好きになりました。ご自身も「素直」とおっしゃっていますが、その素直さが人への気遣いとして出ていたり、お芝居にも出ていてとても心に響きます。

野呂:黒木さんって、笑顔を見るとホッとするような感じの方ですけど、同時に、結構キビキビ動いている役柄も多いじゃないですか。だから最初はちょっと緊張していたんです(笑)。本読みの時もなかなか顔を見られなくて。そんな中で黒木さんが「大丈夫です」って一言言ってくれて。そのたった一言で「やばい、頼もしい!」って。

 実際にお芝居をした時にも、私はこんなにたくさんセリフが多い役が初めてだったのですごく緊張感があったんですけど、投げたら全部受けてくれることに気づいて。その瞬間に最初の「大丈夫です」がつながって、それからはもう信頼してお任せしちゃっている、みたいな感じです(笑)

(C)カンテレ

○「すごいじゃん。すごいじゃん、私(涙)」

――蛭田直美さん(『しずかちゃんとパパ』『舟を編む 〜私、辞書つくります〜』など)のオリジナル脚本ですが、おふたりへの当て書きだとか。脚本を読んでいて、「ここが当て書きなのかな」と感じた部分はありましたか?

黒木:「蛭田さんから見た私はこうなのかな」と思いながら読んでいます。茉莉は、突っ走って人の気持ちを置いてきぼりにしてしまう時がありますが、かわいらしくて面白くもあるので、蛭田さんが想像するところから、さらに広げることができたらいいなと思っています。

野呂:私は、人のことがどうしても気になってしまうところが、脚本の中のあかりに近いかなと思います。あかりは、助けたい思いから気になってしまい、純粋に人を思う気持ちが強くなる人。自分もここまで人に相当助けられてきたと思っているので、その部分はとても気持ちよくやらせてもらっています。

――視聴者にもとてもファンが多い佐野プロデューサーと交わした言葉で、何か印象に残っているものはありますか?

黒木:最初の本読みで、私が今とは異なるお芝居をしていた時に、「もうちょっと柔らかい感じで。迷っているところがちゃんとあるほうがいいです」とアドバイスを頂きました。現場にもいつもいてくださるので、安心感が半端ないです。

(C)カンテレ

――野呂さんは、もともと佐野プロデューサーの X(Twitter)をフォローしていたそうですが。

野呂:そうなんですよ! 佐野さんには、最初に私がやらなかったら「キャラクターを変える」とおっしゃっていただいて、今までに感じたことのないうれしさがありました。自分がこんな素晴らしい環境で仕事をさせてもらっているんだなって、日々ふっと実感して、泣きそうになる時があります。

――うれしさで泣きそうに?

野呂:黒木さんもそうですし、チームで楽しいなと思った後に、ぼ〜っとしていると急に泣きそうになって。「ここ、すごいじゃん。すごいじゃん、私」みたいな(笑)

黒木:たしかに、ぼ〜っとどこかを見られているとき、ありますね(笑)

野呂:そうなんです(笑)。ぼ〜っとしながら上を見て、なんかいいなみたいな。お恥ずかしいんですけど、結構あります。

●何か少しでも政治に関わる人たちに伝われば
(C)カンテレ

――今回の作品に関わることで、社会や政治に対する見方が変わってきた部分はありますか?

黒木:さらに興味を持てるようになりました。選挙の裏側も知れて面白いですし、あかりさんが純粋に驚くことが、私自身が普段の生活で感じていたことだったりもして。茉莉とあかり両方の視点から政治を見られるのも面白いですよね。

野呂:「政治は生活」だけど、みんながどれだけ声を上げても変わらないって感じるもどかしさは、みなさんあると思うんです。変わりたいという気持ちが相当みんなの中に溜まっている。そんな中で、撮影している側として、壮大なことは言わないけど、少しでも何か政治に関わる人たちに伝わるといいなと思います。そういう前向きな気持ちや希望に1ミリでもなれたらいいなと思いながらやっています。

○「黒木さんでよかった」「野呂さんでよかった」

――ちょっと話は変わりますが、取材前のコメントで「黒木さんが誰も見ていないところでボケている」とありました(笑)

野呂:(笑)。ボケを打つんですよ。

――どんなボケを?

野呂:ダジャレとか、何か一言言ったら返すボケとか、いろんなジャンルをお持ちで(笑)。それをツッコんでもらえる時もあれば、誰もツッコまない時もあるんです。私、ずっと横にいるから、それが面白くて(笑)

 黒木さんとずっとお仕事されているスタッフさんは、接し方が分かっていらっしゃるみたいなんですけど、最初に見た時は「これを放っておくの!?」ってびっくりしました(笑)。でも「あ、それでいい人なんだ」「すごく愛らしい人なんだ」というのがさらに分かりました。

黒木:野呂さんといると楽しくて、ついついふざけすぎちゃう時があります(笑)

――黒木さんから見た野呂さんの現場での様子はどうですか?

黒木:真面目で、お芝居に対してもすごく真摯(しんし)で、どんどん吸収されていく姿も素敵です。一緒にふざけてくれる時もあってうれしいです。撮影が続いて疲れている時の野呂さんも見ていたいんですよね。「疲れてる、頑張ってるな」って(笑)。一挙手一投足が気になっちゃうから、ついつい見ちゃいます。

――撮影を重ねて、お芝居の面でも変化は感じていますか?

野呂:あかりとしての自分も、私自身も「しっかりしてきたな」みたいな感じがありますね。セリフにもあるんですけど、ちゃんと成長してきたなって思います。

――最後に、バディを組んで時間を重ねてきた相手への一言をお願いします。

野呂:「黒木さんでよかった」しかないです。本当にそれに尽きます。黒木さんに相談したいなって思って、聞いたら本当に受け止めてくれて。日々の感謝も込めて、ほんとに黒木さんで良かったなと感じています。映像を見ても改めて思えて、本当にうれしいです。

黒木:私も、「野呂さんでよかった」と感じています。なんだか、毛布にくるまれている気持ちになるんです。野呂さんという存在が、幸せです。



●黒木華1990年3月14日生まれ、大阪府出身。2010年にNODA・MAPのオーディションに合格し舞台デビュー。12年のNHK連続テレビ小説『純と愛』でドラマ初出演を果たし注目を集める。14年、映画『小さいおうち』(山田洋次監督)で、第64回ベルリン国際映画祭・最優秀女優賞(銀熊賞)を日本人最年少の23歳で受賞。今年の待機作に映画『マジカル・シークレット・ツアー』(6月19日)と『時には懺悔を』(8月28日)、7月15日より主演舞台『N O R A』。『銀河の一票』でカンテレ制作ドラマ初主演となる。

●野呂佳代1983年10月28日生まれ、東京都出身。AKB48・SDN48の元メンバーで、SDN48ではキャプテンを務めた。卒業後はバラエティ番組を中心に活躍し幅広い知名度を得る。近年は演技の仕事が急増し、2024年は大河ドラマ『光る君へ』、ドラマ『アンメット』『西園寺さんは家事をしない』など複数作に出演。25年は1月期から全クールドラマ出演を果たした。『銀河の一票』では、政治素人のスナックのママ・月岡あかり役で主人公の相棒をつとめる。

【黒木華】

スタイリスト:山本マナ

ヘアメイク:下永田亮樹

【野呂佳代】

スタイリスト:MaiKo yoshida

ヘアメイク:MAKI

衣装:シャツジャケット、スカート(ル フィル)、サンダル(チャールズ&キース/チャールズ&キース ジャパン)、ピアス(ラブ・エージェイ/ZUTTOHOLIC)、ブレスレット、リング(ワンエーアールバイウノアエレ/ウノアエレ ジャパン)

望月ふみ 70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビュー取材が中心で月に20本ほど担当。もちろんコラム系も書きます。愛猫との時間が癒しで、家全体の猫部屋化が加速中。 この著者の記事一覧はこちら