婚活アプリで「年収証明」が当たり前に…数字で選別される恋愛市場と高騰する結婚のハードル
結婚を望みながらも、将来への不安や出会いの機会不足から、最後の一歩が踏み出せない男女の背中を行政が力強く押す時代となった。
東京都が運営するAIマッチングシステム「TOKYO縁結び」が利用者の裾野を急速に広げている。民間アプリが婚活の主戦場となって久しいが、偽装やトラブルといったリスクに疲弊した人たちにとって、公的機関が提供する安全性の高さは大きな魅力だ。
東京都生活文化局によれば、今年3月末時点で、登録者数は約1万4000人を数え、真剣交際へと発展した組数は631組、成婚に至ったケースも185組にのぼるという。独身証明書だけでなく「年収証明」の提出が必須であり、オンラインでの面談まで経なければならないこの手続きは極めて面倒だ。
だが、その手間こそが不誠実なユーザーを排除する強力なフィルターとなっている。
「年収証明」に対するニーズの高まりは、民間の婚活アプリにおいても同様。大手マッチングアプリが公的書類を活用した簡便な年収証明機能を導入するなど、プロフィルに「年収証明マーク」が付いているかどうかでマッチング率に明確な差が生まれる状況は、すでに婚活市場の新しい常識となりつつある。
希望条件をすべて満たす相手が存在する確率は3.8%
一方で、条件を過度に数字で判断する風潮には、ネット上でも「年収や学歴といった数字だけで人を選別するシステムに違和感を覚える」「証明書があるのは安心だが、スペックばかり見て人間性を見落としてしまいそう」「効率を求めるあまり、恋愛に不可欠なドキドキ感が置き去りにされている気がする」といった声も散見され、いつの間にか婚活が“シビアな品定め”へと変質していることに戸惑う人も少なくない。
国立社会保障・人口問題研究所が発表した「第16回出生動向基本調査」では、男女ともに結婚の最大のハードルは「結婚資金」であると報告されており、とりわけ女性においては、相手の職業や年収を重視する傾向が顕著だという。
また、2025年に内閣府経済社会総合研究所が発表した論文の試算によると、婚活市場で希望条件をすべて満たす相手が存在する確率はわずか3.8%程度に過ぎない。
女性には自分と同等かそれ以上の経済力を相手に求める「上方婚志向」が見られ、自身の年収向上に伴って相手への希望条件も自然と上がってしまう「結婚年収のインフレ」が重なって、マッチングの成立を難しくしているのが実情だ。
条件を満たさない相手は最初から検索対象から外れて、ますます結婚のハードルが高くなる。「年収証明」で安全を担保するほど、ときめきは遠ざかり…。
