夢の全固体電池の実用化を阻む「樹枝状結晶(デンドライト)」が形成される理由が明らかに

一般的なリチウムイオンバッテリーではアノード(負極)とカソード(正極)の間を満たす電解質に液体が使われますが、この電解質をすべて固体にした全固体電池はエネルギー貯蔵量や寿命の面でメリットがあるとされています。そんな全固体電池の実用化を妨げる「樹枝状結晶(デンドライト)」の形成メカニズムを、ドイツのマックス・プランク研究所のチームが明らかにしました。
Mechanically driven Li dendrite penetration in garnet solid electrolyte | Nature
Understanding the short circuit in solid-state batteries
https://www.mpie.de/5151287/short-circuit-solid-state-batteries
今日ではスマートフォンから電気自動車に至るさまざまな製品がバッテリーに依存しており、バッテリーのエネルギー貯蔵容量や寿命、安全性は電動化の未来を大きく左右します。バッテリーに関する次世代技術の中で実用化が有望視されているもののひとつに、通常は液体の電解質を固体に置き換えた全固体電池が挙げられます。
全固体電池は電解質を固体にすることで、エネルギー密度や安全性の向上、バッテリー寿命の延長などを可能にします。全固体電池が実用化されれば、スマートフォンは毎日充電しなくても数日間使用可能になり、電気自動車の航続距離も約3倍に伸びると期待されているとのこと。
しかし、全固体電池には「充電中にデンドライトと呼ばれる微細な針状の構造物がアノードから成長し、固体電解質を貫通してカソードとつながり、電池内でショートを起こしてしまう」という課題があります。
以下の図は、左が液体電解質を採用した通常のリチウムイオンバッテリー、右が全固体電池を表したものです。全固体電池ではアノードからデンドライトが成長し、カソードと触れ合ってショートが起きてしまうことが示されています。

全固体電池におけるデンドライトの形成は直感に反する現象です。マックス・プランク持続可能材料研究所の研究者であり、論文の筆頭著者を務めるユーウェイ・チャン氏は、「電極や形成されるデンドライトはグミのように柔らかいリチウム金属で構成されていますが、デンドライトはセラミックの電解質を貫通してショートを引き起こす可能性があります。柔らかいデンドライトが、硬い固体セラミックをどのようにして破壊するのでしょうか?」と述べています。
柔らかいデンドライトが硬い固体電解質を貫通するメカニズムとしては、「固体電解質の粒界(結晶同士の境界面)に沿って電子が漏れて、後に相互接続するリチウム核の形成が促進される」という説と、「デンドライト内部に応力が蓄積されて固体電解質の機械的破壊を引き起こす」という2つの説があるとのこと。
研究チームはこれらの仮説について検証するため、複雑な試料調合と特性評価テクノロジーを用いて、酸素・水・電子ビームの影響を受けない真空および極低温下での特性評価を行いました。その結果、デンドライトの先端より先にリチウムの濃縮はみられず、粒界に沿って電子が漏れている説は否定されました。
一方、亀裂内に閉じ込められたデンドライトを分析したところ、析出したリチウムが相当な静水圧応力を発生させ、これが固体電解質に引張応力を引き起こしていることが判明。これにより、デンドライト内部の応力が固体電解質を機械的に破壊するという説が裏付けられました。
チャン氏は、「柔らかいリチウムは岩を貫通する連続的なウォータージェットのように、硬いセラミック電解質を貫通することができます。私たちの計算によれば、デンドライト内部の静水圧応力が最終的に固体電解質の脆(ぜい)性破壊を引き起こすことがわかりました」と述べています。
デンドライトがショートを発生させるメカニズムを解明した研究チームは、その防止策を模索しています。考えられるアプローチとしては、「固体電解質の靱(じん)性を高めて亀裂の発生を遅らせる」「微細な隙間を作ってデンドライトの成長方向を変える」「電極をコーティングしてデンドライトの成長を抑制する」といった方法が挙げられているとのことです。
