不育症の「着床前診断」とは?染色体異常による流産を防ぐ仕組み【医師解説】
妊娠はするものの流産や死産を繰り返し、出産まで至らないことを「不育症」と言います。流産を繰り返すことで自分を責めたり、抑うつ的になったりすることもあり、医療の介入が必要です。今回は不育症治療について、「はやしARTクリニック半蔵門」の林先生に、詳しく解説していただきました。
監修医師:
林 裕子(はやしARTクリニック半蔵門)
早稲田大学第一文学部卒業、名古屋市立大学医学部卒業、名古屋市立大学大学院医学研究科修了。その後、名古屋市立大学産科婦人科学教室、東邦大学産科婦人科学講座で経験を積む。2024年、東京都千代田区に「はやしARTクリニック半蔵門」を開院。医学博士。日本産科婦人科学会専門医・指導医、日本生殖医学会専門医、日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会専門医、日本超音波医学会専門医、日本不育症学会認定医、母体保護法指定医。
編集部
夫婦の染色体異常(均衡型転座)というのは、どのようなことですか?
林先生
染色体均衡型転座とは、染色体の2カ所が切れて入れ替わることを言います。卵子や精子ができるときに、染色体の分配によって遺伝子の不均衡が生じると流産になります。
編集部
その場合、治療法はあるのですか?
林先生
均衡型転座保因者の流産に対する治療としては、体外受精によって得られた胚の細胞の一部を取り出し、染色体検査で不均衡ではないと診断された胚を移植することで流産を防止する「着床前診断」があります。転座を治すのではなく、不均衡な転座を持たない胚を選択するという治療法です。着床前診断により、流産率の減少が期待されます。
編集部
最後に、胎児染色体異常について教えてください。
林先生
胎児が持つ染色体に異常が起きることで流産や死産になるものです。そもそも、妊娠の15%に流産が起こり、そのうち50~80%に胎児・胎芽の染色体異数性(数の異常)がみられます。多くが偶発的な染色体異常です。
編集部
その場合はどうしたらいいですか?
林先生
均衡型転座保因者の流産に対する治療と同様、胎児染色体異常の場合にも着床前診断が有効です。これにより、異数性のある胚を移植しないという選択をすることができます。
編集部
胎児染色体異常は、治療の必要がないのでしょうか?
林先生
検査の結果、特別な原因のない染色体異常であることがわかれば、薬剤などによる治療はおこないません。一定の確率で出産できるとされており、平均的な年齢の患者さんが妊娠した場合、2回流産なら80%、3回70%、4回60%、5回50%の方が次の妊娠で出産できると言われています。
編集部
原因にあった治療法が必要なのですね。
林先生
そうですね。不育症は正しい検査や治療をすることで、妊娠出産に至ることは十分可能です。しかし、不育症の女性は自分を責めたり、自尊心が低下したりすることが多く、抑うつ、不安障害に悩む人も少なくありません。ご自分で「不育症ではないか」と思う場合は、ぜひ不育症の専門医にご相談ください。正しく適切な治療を受けることで、妊娠出産へのサポートが得られると思います。
編集部
検査は保険で受けられますか?
林先生
はい、検査は保険診療の対象になっています。もし気になることがあれば、気軽に専門医に相談していただければと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
林先生
不育症の患者さんでときどき見受けられるのが、「繰り返す流産で妊娠をためらってしまい、多くの時間を費やした結果、年齢が上がって今度は不妊に悩むようになってしまった」というケースです。そうしたことにならないよう不育症で悩む場合は、ぜひ適切なタイミングで受診するようにしましょう。検査によって原因がわかれば、医師から次の妊娠のサポートを受けられます。健康に妊娠・出産ができる年齢には限りがあるため、時間を無駄にすることがないよう、ぜひ早めに相談してほしいと思います。
※この記事はメディカルドックにて<「不育症」を引き起こす4大原因をご存じですか? 不妊症との違いや治療法も医師が解説!>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
