熱海でも箱根でもない。都心から90分、“ふふ 城ヶ島”が示す新しいラグジュアリーステイのかたち
“日常のちょっとだけ外側”へ――。プライベート感やアクセスの良さを求める旅のニーズに応えるように、近場の高級宿が増えている。都内からわずか90分で行ける三浦半島の最南端・城ヶ島。その岬の先端に建つ「ふふ 城ヶ島 海風のしらべ」は、そんな高級宿の新潮流を象徴する最新の宿だ。
圧倒的な自然と無二の香りでお出迎え

ロビーからも海が見える
荒々しい岩肌と、波打つように重なる地層に圧倒される城ヶ島。約1500万年から400万年前にかけて起きたとされる南洋の海底火山活動によって生まれたこの景観は、ほかにはない迫力を放っている。
「ふふ 城ヶ島 海風のしらべ」は、そんな城ヶ島特有の岩肌や地層をイメージしたデザインで統一されている。ロビーの壁には地層を思わせるしっくいが塗られ、館内の随所に岩礁のオブジェが置かれている。まるで海外リゾートのような熱帯植物が配置され、空間全体に“自然の力強さ”と “非日常”が共存する。

館内は、海をイメージしたアロマの香りに包まれる
特筆すべきは、海をテーマにしたオリジナルアロマの香りだ。ふふグループの宿では「YOKOU(余香)」というブランド名でアロマオイルを作っていて、それぞれの宿が異なる香りを選定。ここ城ヶ島ではスペアミントやローズマリーをブレンドした「BLUE EARTH」という香りが採用されている。客室に足を踏み入れた瞬間、その香りに包まれ、異次元空間へと誘われる。
1.5時間で手に入る「ルーフトップラウンジ」の開放感

雨の日はこちらでくつろげる
首都圏から近い温泉リゾートといえば、熱海や箱根が定番だ。城ヶ島は温泉地ではなく、高級リゾートのイメージもこれまで強くはなかった。そんな場所に高級宿が誕生したと聞けば、「あんなところに…?」と驚く人もいるだろう。こうした“意外な立地”が選ばれるのも、近年の高級宿の新潮流といえる。
三浦半島の最南端という立地を生かし、抜群のロケーションに造られた。

カクテルは自分で作る

ルーフトップバルコニーから富士山が見える
最上階にある「ルーフトップラウンジ 宵星」からは、圧巻の海景が広がる。チェックイン後はまず、このラウンジに足を運びたい。赤ワインや白ワイン、自分で作るオリジナルカクテルなどをフリーフローで楽しめる。目の前に広がるのは、遮るもののない太平洋。青い海に白い波が立ち、潮風が心地よく頬をなでる。晴れた日には富士山のシルエットが浮かび上がり、夕暮れ時には茜色に染まる美しい夕日が海を照らす。

夕暮れ時にはライトアップされる
大浴場を置かない「究極のこもり」

客室に温泉が引かれている
この宿には大浴場がない。全客室に温泉を満たした風呂が備わり、客室でゆっくりと過ごすことができる造りになっている。温泉のイメージがない城ヶ島だが、近くの油壺温泉の湯を運び入れており、保温効果の高い、ナトリウム−塩化物泉が冷えた体を温めてくれる。

潮風を感じて、テラスでくつろぐことができる
「他のお客さんとはあまり会わず、なるべく客室で過ごしたい」というニーズに応えるように、客室には海を望むテラスも設けられている。ソファに身をあずけ、ハーバルティーをゆっくり味わう。ほうじ茶をベースに、ハッカやクロモジをブレンドしたオリジナルティーは、湯上がりにぴったりだ。

タオルやガウンは今治製
シモンズと共同開発したベッド、肌触りのよい館内着やパジャマ、オーガニックアロマが香るオリジナルアメニティ、ふかふかのバスタオルなど、細部まで“こもる”時間を心地よくする工夫がされている。非対面でサービスが受けられるよう、ルームサービス用の「ユーティリティBOX」を設けるなど、プライベート性へのこだわりも徹底している。

対面せずに物の受け渡しができる「ユーティリティBOX」
夕食は「全皿魚介」のサプライズ

メイン料理は炭火焼き

組肴の皿は海をイメージさせる藍色。すべての料理に魚介が使われている
食事のコンセプトも独創的だ。「海」をテーマにした宿らしく、水菓子を除くすべての皿に、三崎のマグロをはじめ、アマダイ、ホタルイカ、サザエ、アワビ、車エビなど、旬の魚介が組み込まれている。ただし、備長炭で焼き上げるメインディッシュでは、大蛤やカマス、ブリといった魚介料理に加え、上質な肉料理も選べる柔軟性も備えている。
ワインや地酒のペアリングメニューも充実している。「ワイン・地酒のペアリング」は3・4・5種、「日本酒ペアリング」は4種などから選べる。日本酒ペアリングでは、日本酒スパークリングや神奈川の地酒に加え、「飛露喜」や「十四代」といった銘酒も揃う。一品一品丁寧に仕上げられた日本料理を、その皿に合わせたお酒とともに味わえるのが魅力だ。

海の幸をふんだんに使った炊き込みご飯
極めつけは、磯の恵みをたっぷりと閉じ込めた、アナゴやイイダコ、ホタテ、タチウオ、そして生ウニやイクラを贅沢に使った炊き込みご飯。海の近くとはいえ、温泉リゾートでここまで魚尽くしを堪能できるコース料理は、そう多くはないだろう。
相模湾を隔て、海に浮かぶ富士山を仰ぐ

「ふふオーシャンスイート」の客室
海のリゾートならではで、客室の窓からも隆起した荒々しい岩肌と青い海が広がる。客室の風呂に浸かり、冷蔵庫のドリンクを楽しんだあと、再びテラスに出て潮風を感じる。遠くまで足を伸ばさなくても、まるでアジアンリゾートのような開放感に浸れて、とても得した気分になる。

風呂に入りながらドリンクも飲める
翌朝、ルーフトップバルコニーでコーヒーを飲んでいると、目の前に堂々たる富士山が姿を現した。ただ景色を眺めているだけで、心がゆっくり整っていくのを感じた。
【施設データ】
『ふふ 城ヶ島 海風のしらべ』
住所:神奈川県三浦市三崎町城ケ島693
電話:0570-0117-22
料金:1室2名利用時1人4万9650円(消費税・入湯税込)〜
取材協力:ふふ 城ヶ島
文・写真/野添ちかこ
温泉と宿のライター、旅行作家。「心まであったかくする旅」をテーマに日々奔走中。「NIKKEIプラス1」(日本経済新聞土曜日版)に「湯の心旅」、「旅の手帖」(交通新聞社)に「会いに行きたい温泉宿」を連載中。著書に『旅行ライターになろう!』(青弓社)や『千葉の湯めぐり』(幹書房)。岐阜県中部山岳国立公園活性化プロジェクト顧問、熊野古道女子部理事。
