イラン人の心をつかんだ日本カルチャー(BalkansCat/shutterstock.com)

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 当事者のアメリカ、イスラエル、そしてイランのみならず世界経済に暗い影を落とすイラン情勢。ところで、日頃ニュースではよく耳にしても、イランになじみがある日本人はそう多くないだろう。国際社会の命運を握るかの国を“親日国家”という視点から分析する。

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視聴率90%超えを記録した日本ドラマ

 意外にも恋愛に情熱的なイラン人(一つ前の記事【キスしたり“その先”まで進む若者も… 在日イラン人女性が証言するイスラム体制下の「恋愛」のリアル】を参照)が、イラン・イラク戦争中の1980年代、情熱的に観賞していたのがNHK連続テレビ小説「おしん」である。

イラン人の心をつかんだ日本カルチャー(BalkansCat/shutterstock.com)

「イランの国営放送で『おしん』が放映されていた夜8時ごろには、道路を歩いている人なんていませんでしたね」

 そう振り返るのは、東京・高円寺でペルシャ料理店を営む在日イラン人男性のボルボルさん。

「みんな家やカフェのテレビにかじりついて見ていましたよ。おしんの“何があってもあきらめないで頑張る”姿が、戦争中だったイラン人たちの心に響いたのだと思います」(同)

 30代の在日イラン人女性のサラさん(仮名)も、こう後を継ぐ。

「戦争中だったから、夫が戦場に行ってしまった女性がたくさんいました。おしんのように、我慢して我慢して頑張りたいと思う女性が多かったのではないでしょうか」

 実際、視聴率は90%を超えることもあったという。

 それだけではない。

「黒澤明監督の『赤ひげ』や『七人の侍』をイランで見ました。かっこいい映画でしたね。『おしん』や黒澤映画のイメージがあったから、外国に行くなら日本がいいなと思っていたんです」(ボルボルさん)

街中では許されないコスプレを日本大使館で

 また“日本びいき”はこんなところにも。

「私はイラン・イラク戦争で従軍したことがありますが、軍用車はみんなトヨタのランドクルーザーでした。砂漠でも砂利道でもパンクしたのを見たことがないくらい優れた車でした。イラン人は“メイド・イン・ジャパン”と書かれているものなら、中身を確認しないで買ってしまうほど日本製を信用しています」(ボルボルさん)

 サラさんもこう言う。

「回転ずしやファミレスの配膳ロボットをユーチューブで見て、“すごいテクノロジーの国だ”と日本に憧れる若い人が多いです。やっぱり家電や車、バイクなどの技術力がリスペクトされています」

 ジャパンカルチャーの代名詞であるアニメも人気。元駐イラン大使の齊藤貢氏によれば、

「私は大使館にアニメグッズなどを飾ったアニメ部屋を作りました。訪れた若いイラン人は、街中では許されないコスプレをして楽しんでくださっていました」

 しかも、イラン人の心をつかんだアニメが渋い。

「視聴率が60%だったこともあるという『キャプテン翼』や、『一休さん』を見て育ったイラン人はたくさんいます」(国際部デスク)

みんな大好き“変なおじさん”

 ここまでくると、かの地の人々は相当な“日本通”とお見受けしたくなる。

 目下、在日イラン人たちがもっとも愛好するのは、故・志村けんさんなのだそう。

 ボルボルさんが言う。

「ユーチューブやテレビの再放送で彼を見た人は、みんな大好きですよ。特に“変なおじさん”や“ひとみばあさん”が面白くて好きですね。6年前に彼が亡くなったとき、日本のイラン人たちはお葬式をやりました。みんなが集まって、イラン式にごはんを近所に配ったり、志村さんの写真を飾ったりして、冥福を祈りました。あんなに面白い人は他にいないから、本当に悲しかったです」

 日本の芸能人の死に際して葬式を挙げたのは、この一回きりだというから、思いは本物。バカ殿ならイラン情勢をどのように解決するだろうか。

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 4月2日発売の「週刊新潮」では、六つの視点からさらに詳しく「日本人の知らないイランの国内事情」について報じている。

「週刊新潮」2026年4月9日号 掲載