宍戸錠さん(C)日刊ゲンダイ

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【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#284

宍戸錠さんが語った「性との戦い」初体験と1日30人コース

 宍戸錠さん

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 1970年代、私の子供時代の宍戸さんといえば「ゲバゲバ90分」や「どっきりカメラ」でコントやギャグに登場する、イケメンというより、ほっぺたが膨らんだ面白いオジサンでした。

 ちょうど頬のふくらみを除去された直後にお仕事でご一緒しました。「言えることはなんでも言うから、遠慮なく聞いてね」とハスキーボイスで切り出されて、まるで近所のオジサンとでも話しているような、それでいてちゃんとスターのオーラも持ってらっしゃる。声がけしただけで、楽屋の空気が一気に“宍戸色”に染まりました。

「顔のシワは増えていくのに、ここ(頬)だけ張りがあったら変じゃない。普通の爺の顔になりたいなと思って」と除去手術をされたきっかけを語ってくださいました。

「なんの躊躇もなかったですよ。これで仕事がなくなればそれだけのものだったっていうことだから」とあっけらかんとしていてビックリ。

 そもそも頬を膨らませることになったのも「二枚目には旭(小林旭さん)がいたから、悪役をつくりたかったんじゃないのかな。俺も若い時はけっこうイケメンだったからね」と笑い、頬を膨らませる提案を受けた時も「どうなるかわかんないけど、面白そうじゃない?」と抵抗もなかったそうです。

“自然の流れを受け入れる”のが基本スタンスで、テレビのバラエティー番組に出演するときも変わることはなかったそう。「自分に声をかけてくれてるんだから感謝してやらなきゃと俺は思う方だね。だってスターなんてひとりじゃ何もできないんだから」と温かい目線をまっすぐに向けて話しておられました。

■「お笑いの素人なんだから、うまくできるわけないじゃない、プロの言うことはちゃんと聞かなきゃね」

 コントの撮影の時は「エースのジョー」時代を知る年長のスタッフが気をつかってるのを察して「遠慮なく何でも言ってよ!」と話しかけてくださる。それでも、若い演出家が厳しいダメ出しをすると、先輩スタッフはハラハラ、ピリピリ。でもご本人は「お笑いの素人なんだから、うまくできるわけないじゃない、プロの言うことはちゃんと聞かなきゃね」と積極的に吸収して、血肉に変えていたそうです。

 一時代を築かれた大スターなのにフランクで、スタッフを仕事をする「仲間」として認めていらっしゃるのがよく伝わってきました。

 NSCの授業でも「どんなスターでもひとりではなにもできないんだから周囲への感謝を忘れないこと」と伝えていますが、まさにお手本のような方でした。

 あの全てを達観されているような温かいまなざしが忘れられません。

(本多正識/漫才作家)