PayPay株はアメリカで「大化けの可能性」も…クレジット大手VISAとの提携が示す「QRコード決済の勝算」

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PayPayがナスダックに上場したワケ

ソフトバンクグループ(SBG)が出資する、モバイル決済大手“PayPay(ペイペイ)”が米証券取引所ナスダックに上場した。3月12日、新規株式公開(IPO)当日の初値は、公開価格16ドルを19%上回る19ドルだった。13日は21.14ドルに上昇して引けた。イラン戦争で世界経済の先行き不透明感が高まる中、今回のIPOはほぼ順調な滑り出しとなった。

PayPayの上場は、様々な点で注目を集めている。同社は東京証券取引所を素通りして、米ナスダックを選択した。

米国は大手金融機関とフィンテック企業がしのぎを削るITの本場であり、日本市場に比べ期待成長率も圧倒的に高い。知名度向上を狙う舞台としてこれ以上の場所はない。PayPayのグローバル展開やSBGの合従連衡を進める上でも戦略的なメリットは大きい。

もう一つ注目したいのは、IPO計画から上場までの期間の短さだ。

背景には、SBG会長兼社長の孫正義氏が資金確保を急いだことがあるのだろう。競合他社に比べて投資が遅れたり規模が縮小したりすると、競争に勝ち残ることは難しくなる。何といってもタイミングが大切だ。AI関連分野の成長実現に、データセンターや推論モデルへの投資積み増しの必要性が高まる今こそ、その時期とみたのだろう。

今後のポイントは、世界経済の環境変化に対応しながら、投資を積み増せるか否かにある。

この点については、SBGといえど不確実性は残る。リスクを下げるため、今後、SBGは追加の保有資産売却やリストラを実施する可能性はあるだろう。その上で、SBGがいつ、どのような企業(起業家)に資金を投じるのか、今後のAI関連分野、そして世界経済の展開を考える重要な視座になるはずだ。

急ピッチだった米国上場

上場の経緯をみると、PayPayとSBGはかなり急ピッチで上場実現に取り組んだことが分かる。昨年8月中旬、PayPayは、米証券取引委員会(SEC)に登録届出書を提出した。同社は9 月から機関投資家向けマーケティングを開始。当初、12月のIPOを目指したようだ。IPO成立後の時価総額は3兆円程度になるとの観測もあった。

申請から4カ月ほどで、上場を果たすのはかなり早い。

通常、海外企業が米国市場に上場する場合、6〜12カ月の準備を要すると言われている。SBGに英アーム上場のノウハウがあったとはいえ、今回のPayPayは日本企業だ。言語、法規制などのハードルをクリアするための労力は多い。SBGは高値でのIPO実現をめざし、かなり急いで準備を進めたとみられる。

昨年夏場から10月末にかけて、世界的にAI関連やIT先端企業の株価上昇は鮮明化した。

企業の事業や財務内容より、AI関連か否かで銘柄を選ぶ投資家は多かった。その結果、株価上昇の勢い(モメンタム)がついた。そうした環境を活かすことで、SBGは上場による利得を極大化しようとしたのだろう。

しかし、10月、想定外の事態が発生した。

米政府閉鎖の影響で当局の審査が止まった。その時点で、PayPayは審査が止まったこと以外の情報を公開しなかった。事の成り行きが見通せない状況になったのだろう。ようやく、11月半ばごろから、米国当局はPayPayの上場審査を再開し、今回のIPOに至った。想定外の事態に直面しつつも、IPO実施スピードは極めて速かった。

QRコード決済の勝算

PayPay上場で、SBGの投資戦略はより明確になった。

同社は米国のAI関連市場を一段と重視している。SBGは投資先企業の事業領域の拡大を実現し、今後の新規案件についても可能な限り米ナスダック市場への上場を目指すだろう。上場した後、SBGの投資先企業は、提携や買収戦略で業績拡大を目指すと予想される。

PayPayはインドのPaytm(ペイティーエム)の技術提供を受け、電子決済の一形態であるQRコード決済ビジネスを開始した。ただ、今のところ、米国ではクレジットカードやデビットカード、アップルペイ(NFCベースの非接触型決済)が主流だ。QRコード決済の比率は低い。

ということは、逆の見方をすれば、米国でQRコード普及の余地はあると考えられる。

シェア獲得に、PayPayは米VISA(ビザ)と合弁会社の設立を発表した。目指すのは、QRコード決済とカード決済の結合である。QRコードメインのPayPayにとって、VISAの持つカード決済基盤は米国事業の成長に必要だ。また、機器の導入や決済手数料の点でQRコードはクレジットカードよりも運用コストが低い。

しかも、PayPayは米国の同盟国であるわが国の企業だ。

中央銀行デジタル通貨(CBDC)の研究開発などによって、電子決済のニーズは増えるだろう。その中で、米国が新しい決済手段としてQRコード方式を導入することは、経済運営の効率性向上に寄与する。

米国の中小企業やスタートアップ企業が、効率的な資金決済手段を導入するためにQRコード決済への需要が高まる可能性はある。

つづく記事〈孫正義会長は《株式相場の異常な過熱》を見抜いていた…エヌビディア株全売却が示す「ソフトバンクGトップの冷静な相場観」〉では、SBGがエヌビディアを筆頭に保有株の売却に動き出した裏側を解説する。

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