「好きでもないのに吸わないと体調が悪い」“毎日5本のタバコ”がやめられない30代男性の奇妙なポリシー
ただ、朝に5本吸えば済む話なので、近所の喫煙所を引っ越し前にくまなく探したのだが、この時代そんな都合のいい場所は存在しない。
いよいよ、引っ越しの日が近づいてきたため、不動産屋に相談したところ、「電子タバコなら匂いも出ないから大丈夫だと思いますよ」と言われた。そこで、数日後に電子タバコを買った。禁煙という選択肢はなかったのである。
それまで、「電子タバコを吸ってる奴は男じゃない」などと豪語していたが、あっさり切り替えられた。自室にこもって窓を開けて、外に向かって見えない煙を吐き出す……。よく、「焦げたとうもろこしの匂いがする」と喫煙者の間では言われているのだが、そんなことよりもタバコの匂いが衣類に付着しないから、もう普通のタバコは吸えない。
それに、これまでは紙巻きタバコを5本連続で吸わないと体調は元に戻らなかったのだが、電子タバコは3本で事足りるようになった。電子タバコのパッケージにはニコチンとタバコの含有量が記載されていないため、それはそれで怖い。なぜ、3本で落ち着けているのだろうか……?
さて、電子タバコに変えたことで、歯にもヤニが付着しなくなった。吸う本数も減ったため、経済的ではあるが、物足りなさを感じたのも確かだ。
そこで、電子タバコを吸い始めてしばらくして、以前吸っていた紙巻きタバコを吸ってみたのだが、味が気持ち悪くてもう吸えなくなってしまった。
その代わり、1日に飲むストロング系の量がとうとう10缶を超えてしまった。結果、「γGT 2410(平均値は40〜60)」という数字を出してしまった。ここでドクターストップがかかり、酒を断つことになる。
「酒をやめたんだから、朝の吐き気、嗚咽、熱っぽさからも解放されるのか」
そう思っていたのだが、結局1日のはじめに電子タバコを3本吸わないと、以前ほどではないが、今も体調は悪い。吐き気と嗚咽はなくなったが、みぞおちあたりが痛くなり、落ち着きがなくなる。ということは、やはりニコチン依存症なのだろうか?
また、酒をやめてから、夜に睡眠薬をノンアルコール飲料5本で流し込むのも虚しいため、寝る前に2本追加で吸うようになった。
医者に聞いても「意味がよくわからない」と言われてしまう。しかも、吸う量も1日に5本のため「その程度なら自力で禁煙できないものですかね?」と言われたこともある。それはそうだ。
20代のときに稼いだ金はほとんど酒とタバコに消えた。しかし、結局残ったのは中途半端に不健康な体だけだった。
<TEXT/千駄木雄大>
―[今日もなにかに依存中]―
【千駄木雄大】
編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「ARBAN」や「ギター・マガジン」(リットーミュージック)などで執筆活動中。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)がある
