四国山地の隠れ里、廃校の中に並ぶ大量の本 千葉からUターンの男性が始めた私設図書館

山と清流に囲まれた四国山地の隠れ里、徳島県三好市の東祖谷地域。廃校になった高校の校舎に、いつでも出入りできる私設の図書館がある。生まれ育った土地にUターンした市岡日出夫さん(78)が「読む人が少なくなっても、本との関わりは必要」と始めた。
車が行き違うのもやっとの細い道に「徳島県立池田高等学校祖谷分校」の看板が残る。階段を下りた先にひっそりとたたずむ木造2階建て校舎の中には、黒板や生徒の絵が掲げられたまま。ジャンルを問わない大量の本が、教室や廊下に所狭しと並んでいた。
地域に生息する人懐こい野鳥にちなみ名付けられた「やまがら文庫」は常に開放され、気に入った本があれば自由に持ち帰れる。寄付も受け付けていて、県外の人から本が送られてくることもある。「何冊あるか数えようと思ったが、多すぎてやめた」と市岡さん。
高校卒業で地元を離れ、大学を出て千葉県の郵便局で働いた。転機は40代の頃に参加した同窓会。生まれ育った集落は家が13軒から3軒に減り「自分の帰る村がなくなっていく」。2年後に仕事を辞めて帰郷し、自宅の畑で野菜を作ったり、建設業などを手伝ったりしながら過ごしてきた。
学生時代はほとんど読書の機会がなかったものの、仕事での必要に迫られて手に取ると、本に気付かされたり、教わったりして好きになった。
地域に書店はなく、本との接点は市役所支所の図書室と月1回の移動図書館のみ。本好きな人が立ち寄ってくれる場所をつくろうと空き家の活用を模索する中、2005年に閉校した県立池田高祖谷分校の活用を思い付き、2018年にオープン。机やロッカーを本棚に、自身で集めた本や寄付された本を並べた。たくさんの人が集まって本を読んだり話したりする場所になってほしい。「みんなの暇つぶしになれば」と笑顔を見せた。




