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毎月の奨学金返済に苦しんでいたMさん(28歳)は、「減額返還制度」を利用して支払いを半額にすることに成功。生活費に余裕が生まれ、我慢していた美容院にも行けるようになり喜んだのもつかの間、今後の返済スケジュールを見たMさんは言葉を失います。月々の負担は減っても借金総額は減らず、完済は46歳という長すぎる現実に落胆する20代女性の事例を紹介します。

「減額返還制度」で生活のゆとりを取り戻す

「月々の支払いが半分になって、これでやっと普通の生活ができると喜んだんです。でも、よく考えたら支払いを先延ばしにしているだけでした」

Mさん(28歳)は、中堅メーカーの事務職として働き、現在の年収は約370万円です。一人暮らしの生活費を切り詰めながら、大学時代に借りた有利子の奨学金約350万円を毎月約2万1,000円ずつ返済してきました。

しかし、昨今の物価高の影響で生活費の負担が増え、毎月のやりくりに限界がきそうでした。そんなとき、Mさんはネットニュースで奨学金の「減額返還制度」の存在を知ります。調べてみると、自分の現在の年収でも利用できることがわかり、すぐに申請手続きを行いました。

「月に1万円浮くだけでも、スーパーで少し高いお肉を買えたり、我慢していた美容院に行けたりして、本当に心が軽くなりました」

無事に申請が通って、毎月の引き落としが約1万円に減り、苦しかった生活にゆとりが生まれ、Mさんは安心しきっていました。

奨学金完済までの「長すぎる道のり」

数日後、ふと新しい返済スケジュールを確認してみようと機構のマイページにログイン。画面の数字を見て、Mさんは思わずため息をつきました。

「返済総額が減るわけじゃないから、当たり前なのはわかっていた。だけど、あまりにも長すぎる……」

毎月の返済額を半分にしたため、これからの返済にかかる期間は2倍に延びていたのです。もともと15年で返し終わる予定だった奨学金ですが、計算上、完済までさらに18年かけて返すことになります。

「卒業してから今まで払ってきた期間を差し引いても、このペースで返し終わるのは私が46歳のときです。40代の後半まで、ずっとこの借金を払い続けなきゃいけないなんて……」

現在は独身のMさんですが、将来は結婚して子どもがほしいと考えています。もし子どもが生まれれば、自分たちの子どもの教育費を貯めながら、同時に自分自身の学生時代の借金も払い続けなければなりません。目先の生活を楽にしたくて返済期間を延ばしたのは、借金を先送りにして将来の自分を苦しめているだけだったのです。

「50歳がみえてくる年齢になっても毎月引き落としがあると思うと、一生借金が続くようでつらいです」

毎月の負担減と引き換えに、果てしなく続く返済期間を手にしたMさん。心のゆとりは消え去り、憂鬱な気持ちを抱えながら、今日も働きに出ています。

「減額返還制度」の条件と注意点

日本学生支援機構(JASSO)のデータによると、大学の学部生で奨学金を利用している人の平均借入総額は、第一種で208万円、第二種で336万円にのぼります。社会に出た瞬間から300万円以上の負債を抱え、平均して約15年間という長期にわたって返済を続けるのが一般的なスケジュールです。

こうした若者の返済負担を少しでも和らげるため、日本学生支援機構は「減額返還制度」の条件緩和を2024年に行いました。これは、病気や経済困難などの理由で本来の返還額を支払うのが難しい場合、毎月の返還額を3分の2、2分の1、3分の1、あるいは4分の1に減額して返還を続けられる制度です。

以前は利用できる本人の年間収入上限が325万円以下でしたが、現在では年間収入400万円以下にまで引き上げられています。これにより、年収300万円台の会社員でも制度を利用しやすくなりました。手取りが少なく生活が苦しい若手社会人にとって、月々のキャッシュフローが改善されるこの制度はまさに命綱となります。

しかし、Mさんが直面したように、この制度はあくまで「1回あたりの返還額を減らし、そのぶん返還期間を長くする」仕組みです。支払う総額(元金や利息)が減免されるわけではありません。返済期間が20年、30年と延びれば、結婚資金、住宅ローン、子どもの教育費といった人生の大きな出費のタイミングと奨学金の返済が重なることになります。

制度を利用して当面の危機をしのいだあとは、収入が上がったタイミングで繰り上げ返済を検討するなど、長期的な視点での家計管理が必要不可欠です。

[参考資料]

日本学生支援機構(JASSO)「奨学金事業に関するデータ集」