「辺野古の海は恐怖」「船には重大な故障が…」 「辺野古・転覆事故」船長(71)は「航行の危険性」を十分認識していた!
3月16日、沖縄県の名護市辺野古沖で、プレジャーボート2隻が転覆。女子高生と男性船長が亡くなった。痛ましい海難事故はなぜ起きたのか。死亡した船長は、この海で20年も米軍普天間飛行場移設の抗議活動に携わっていた経歴の持ち主。その著書では、この海域の危険性と、船の老朽化を繰り返し述べていたが……なぜその経験と危機意識は、最悪の事態の回避に繋がらなかったのか。
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【写真を見る】操舵室が見る影もなく破損…変わり果てた姿で帰港した抗議船
波浪警報が出ていた現場
事故が起きたのは、16日の午前10時過ぎ。転覆したのは「平和丸」(長さ約8メートル、定員13名)と「不屈」(長さ約6メートル、定員10名)の2隻である。「平和丸」には乗組員2名と同志社国際高校の2年生10名、「不屈」には船長1名と同校の生徒8名が乗船していた。死亡したのは「平和丸」に乗船していた武石知華さん(17)と、「不屈」の船長・金井創さん(71)である。同校は沖縄に研修旅行中。その日は7つのコースに分かれて班行動が行われていたが、その中に平和教育の一環として同船に乗船し、船で海から移設現場付近を見るコースがあったという。はじめに「不屈」が転覆し、救助に向かった「平和丸」も続けて転覆したと見られている。

転覆当時、同海域には波浪注意報が出され、白波が立ち、船も揺れていたため、監視警戒中の第11管区海上保安本部は2隻に安全運航を呼び掛けていた。転覆後に調査に入った那覇海上保安部所属の巡視船登載艇も転覆するほど波が荒かったというから、海が危険な状態にあったのは間違いない。
フロートを乗り越え…
既に報じられているとおり、この「平和丸」「不屈」の2隻は、移設工事に反対する「ヘリ基地反対協議会」が運航している船だ。
沖縄在住ジャーナリストによれば、
「協議会は辺野古漁港や、キャンプシュワブ・ゲート前でのテント座り込みなど、さまざまな基地反対活動を行っています。その中のひとつが、2004年以来、『辺野古・大浦湾海上行動』と題して、工事現場の沖に船で出て行う抗議活動です」
その頻度は概ね週に3回ほど。そこに出張るのが、「平和丸」「不屈」などの船だという。その活動は非常にハードである。
「現場では、政府によって、工事の海域の沖側に中への立ち入りを禁止する『臨時制限区域』が設定されています。境界にはフロートとオイルフェンスが設置してある。抗議船は、その周辺までカヌーをけん引する。そしてカヌー部隊が船を離れてフロートやフェンスを乗り越え、区域内に入り、工事の妨害を試みるのです。それを海保は拘束しようとします。海上で捕り物をやっているわけですから、非常に危険。重傷者が出たこともあります」
仲間が転覆した経験も
船長の金井氏は1954年、北海道岩内町生まれ。早稲田大学政経学部、東京神学大学大学院を経て、日本キリスト教団富士見町教会副牧師、明治学院大学牧師などを務めた。2006年、日本キリスト教団佐敷教会牧師となり、沖縄へ。海上での反対行動に携わるようになった。2014年に「不屈」が就航してからは船長を務めている。
大変変わった経歴だが、根っからの海人ではない。その金井氏は生前、『沖縄・辺野古の抗議船「不屈」からの便り』(2019年)とその続編(2025年)の、2冊の著書を刊行している。その中では、辺野古の海の危険性を繰り返し述べていた。
同書によれば、辺野古の海は「ここで一カ月(船長を)やったらほかの海で一年やったのと同じ」と呼ばれるほど難しく、座礁の恐れのある個所もあちこちに隠れているという。
沖縄の3〜4月は海がしばしば荒れる。旧暦2月には「ニングヮチ・カジマーイ」と呼ばれる、穏やかな南風が急に強烈な北風に変わる現象が起きるという。地元の漁師でも最大の恐怖と震え上がるほどだそうだ。
実際、金井氏の仲間はボートで転覆した経験もあるといい、
〈行動を終えて辺野古に帰るときにこの海況は追い風で、かつ追い波になります。あっという間に転覆して船長二人は海に投げ出されてしまいました。本当に海は命の危険と隣り合わせです。事故は必ず起こるものと心して、気を引き締めていかなければなりません。〉(前掲書続編)
船長の責任は重い
金井氏は同書でこうした危険性を記した上で、繰り返し述べている。
〈どんなに慣れていても海はその時々で全く様相が違うことがあります。〉
〈海では簡単に人が死にます。ですから船に同乗している人たちの命を預かる船長の責任は重いのです。〉
〈自分の命も、仲間の命も最大限大事にしながら、海では人は簡単に死ぬことを肝に銘じて、無事に帰ってくることを第一にこれからも活動していきたいと思います。〉
〈私たちの行動は命を守るためのものです。自分たちの命も本当に大切にし、安全には最大限、気をつけてこののちも基地建設を食い止める行動をしていきたいと思います。〉
これほどまでに海の恐ろしさを認識していたのに、しかも、抗議活動とは関係のない生徒を多数載せていたのもかかわらず、なぜこの日、金井氏は出航の決断を下したのだろうか。高校によれば、教員が当日、打ち合わせした際に金井氏は、注意報への言及はなく、出航に疑念も呈さなかったという。当人が亡き今、その判断の謎は解けることはないが、遺族は恨んでも恨みきれないであろう。
傷みが激しい
金井氏は「不屈」の操縦の難しさについても述べている。
〈小柄な人には前方がほとんど見えない、ハンドルやギアレバーが固い、キャビンという構造物があるせいで風の影響を非常に受けやすい、ほかの船とはハンドル、レバーの位置が逆で戸惑う〉(前掲書、2019年刊行)
海保の保安官ですら、操縦に手間取るほどだという。
船の老朽化も目立っていた。
「不屈」の就航は先に述べたように2014年だが、
〈辺野古での行動では船もカヌーも傷みが激しいです。通常ではない過酷な使い方をしていますから無理もありません〉(前掲書続編)
2022年には、
〈(「不屈」は)台車のタイヤが使い物にならなくなってしまい、中古のタイヤを買ってきて取り付け、ほっとしたのもつかの間、今度は台車そのものの鉄パイプが経年劣化で曲がってきてしまいました。そのまま車でけん引すれば、いつ折れてしまうかわからない状態です〉
「平和丸」も、
〈やはり台車の車軸が錆のためタイヤを取りつけられなくなりました。いま車軸そのものの交換作業を進めています〉
他の抗議船も、エンジンオイル漏れ、船底に穴、台車が折れる、バッテリーの故障など、ガタが来ていたと述べている。
海上保安庁の捜査
その後もトラブルは続いたようで、金井氏のものと見られるFacebook(現在は非公開)には、2025年3月17日付でこんな投稿があった。
「不屈の船外機(エンジン)がついに寿命になりました。新しいエンジンを載せなければなりません。どうぞご協力をお願い致します」
投稿によれば、エンジンの耐用年数は一般的に1500時間と言われるところ、「不屈」は10年でそれを超えてしまったという。
「ついに寿命を示す重大な故障が発生し、専門家に診断してもらって載せ替えが必要との結論に達しました。これを機に船体の傷んでいるところを補修し、万全の状態でまた抗議活動に従事したいと思っております。どうぞお支えをお願い申し上げます」
として150万円のカンパを募っているのだ。
こちらの修理が完了していたかどうかは不明。また、老朽化と今回の事故との関連性も不明だが、船が“万全の状態”でなかったことは疑われる。
現在、この事故については、海上保安庁が「業務上過失往来危険」と「業務上過失致死傷」容疑で捜査中だが、尊い命は二度と戻ってこない。
「出航の判断と、同船に生徒を任せた学校側の判断は、今後、厳格に問われていくことになりそうです」(前出・ジャーナリスト)
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デイリー新潮編集部
