顔認識AIを信じ切った警察のせいで無実女性が6ヶ月拘束される事件発生
行ったことも見たこともない場所なのに…。
アメリカのノースダコタで起きた銀行詐欺の容疑者をめぐって、とんでもないトラブルが起きてしまいました。犯人として警察に拘束されたのは、2,000km以上も離れたテネシー州で暮らす50歳の女性。
顔認識AIが出した「一致」という結果が全ての始まりでした。
AIの顔認識が誤認定
アンジェラ・リップスさん(50歳)は、テネシー州とノースダコタ州の2つの刑務所に計6ヶ月近く収容されました。
そのきっかけは、ノースダコタ州のファーゴ市警が銀行詐欺捜査でAIの顔認識ソフトウェアを使い、彼女を主要な容疑者と誤認定したことです。
2025年4〜5月、ファーゴ市内の複数の銀行で詐欺事件が発生。監視カメラの映像に写っていた女性が犯人らしい、と捜査員が顔認識AIに通すと、出てきた名前が「アンジェラ・リップス」だったわけです。
さらに担当刑事はリップスさんのSNSアカウントとテネシー州の運転免許証の写真を確認し、顔の特徴・体型・髪型が一致すると判断。逮捕に踏み切ります。
リップスさんは「ノースダコタ州に行ったことなんて一度もない。あの州に知り合いさえいない!」と訴えましたが聞き入れられず、連邦保安官チームに2025年7月14日に逮捕されてしまいました。
まずはテネシー州内の刑務所に逃亡犯として収容され、保釈もなし。しかも、ノースダコタ州の担当者が彼女を引き取りに来たのは、逮捕から108日後の10月30日のことでした。
拘束されて5ヶ月目に、ようやく事態が動く
事態が動いたのは、弁護士のジェイ・グリーンウッド氏が登場してからです。グリーンウッド弁護士はすぐにリップスさんの銀行記録を取り寄せました。
銀行記録には、ファーゴで詐欺が行われていた時刻と同じタイミングに、テネシーのガソリンスタンドでタバコを購入し、ピザを注文し、キャッシュアプリでUber Eatsを利用していた履歴が残っていました。そう、立派なアリバイがあったのです。
ファーゴ市警が初めてリップスさんに話を聞いたのは12月19日と、拘束からすでに5ヶ月が経過したあとのこと。いや何でそんな遅いん?と謎は深まるばかりですが…。
そうして証拠がそろった5日後、リップスさんはクリスマスイブに釈放……されたまではよかったのですが、なんとそのまま外へポイ。逮捕は夏で、釈放は冬。鬼か。
夏服しか持っていなかった。コートもない。雪が積もって、寒くて、どうやって家に帰ればいいかもわからなかった。
地元の弁護士たちが自腹でホテル代や食費を出し、非営利団体の協力者が車を出して、どうにか帰宅できました。ファーゴ市警は一切の費用を負担しなかったといいます。鬼か。
実はこれ、単なる失敗例ではありません。2025年1月のワシントン・ポスト紙の調査では、顔認識技術の一致判定をきっかけに誤認逮捕された事例が少なくとも8件記録されており、いずれのケースでも捜査員はアリバイの確認や体格の照合といった基本的な確認作業を怠っていたとされています。
2025年初頭時点でアメリカの15州が顔認識技術の利用を制限する法律を持っていますが、ノースダコタ州はその中に入っていません。
顔認識AIが出した「答え」を起点に捜査が一直線に突き進んでしまう構造的な問題は、法整備が追いついていない地域では今後も繰り返されるリスクがあるわけです。
確かにAIの精度は上がり続けています。でも「AIが出した答えを、人間がどう扱うか」の設計は、もっと向き合わないといけないことのはずです。
Source: Grand Forks Herald, Futurism, Tom's Hardware, KATV, Stateline

