「NISAで月7万円」の積み立て投資を始めた〈手取り27万円〉34歳サラリーマンの後悔。まさかの事態に襲われ、〈損失確定〉で泣く泣く売却したワケ
手取り27万円・貯金10万円にもかかわらず、ネットの情報に焦ってNISAで「月7万円」の積み立て投資を始めたRさん(34歳)。しかし半年後、車検と歯の治療で約30万円の急な出費が発生します。手元の現金が足りず、相場が下落しているタイミングで泣く泣く投資信託をマイナス売却することに。生活防衛資金の確保を軽視して投資を優先したことで損失を確定させてしまった、30代男性の事例を紹介します。
貯金10万円で始めた毎月7万円の積み立て投資
「とにかく早く投資を始めないと損をする。そんなネットの情報を見て、貯金もないのに焦ってしまいました」
地方の中堅メーカーで働くRさん(34歳)は、一人暮らしをしています。毎月の手取りは約27万円。これまで計画的に貯金をする習慣があまりなく、銀行口座の残高は常に10万円程度でした。
そんなRさんが新NISAでの投資を始めたのは、SNSで流れてくる投資関連の投稿がきっかけでした。「早く非課税枠を埋めた人が得をする」「銀行に現金を預けっぱなしにするのはもったいない」という言葉を目にするたびに、焦りを感じたといいます。
「現金で持っておくのはもったいないと思って、自分にとってはギリギリの毎月7万円で積み立て設定しました」
家賃や車のローン、生活費などを支払うと、手元に残る現金は数万円。それでもRさんは、証券会社のアプリで少しずつ増えていく評価額を見ることで、将来への備えができていると安心していました。
急な出費に耐えられずマイナスで泣く泣く売却するはめに
しかし、積み立てを始めてから半年後、予想外の事態が起こります。
毎日の通勤に使っている車の車検が想定以上に高額になったことに加えて、同じ時期に歯の治療で自費診療を受けることになったのです。請求された金額は合わせて約30万円でした。
「手元の口座にはその月の生活費しか残っていないので、どう計算してもお金が足りませんでした」
親に頼ることもできず、RさんはNISAで積み立てていた投資信託を売却して現金を作ることにしました。しかし運の悪いことに、その時期は海外の経済指標の影響で、一時的に株価が下落しているタイミングでした。
「マイナスが出ている状態で売るのは悔しかったです。でも、支払い期限が迫っていたので選択の余地はありませんでした」
泣く泣く手続きを行い、結果的に積み立てた元本を下回る金額で売却することに。手元に戻ってきた現金は、投資した額よりも少なくなっていました。
「いざというときのための現金を用意せずに、無理をして投資に回した自分が甘かったです。結局、ただ損をしただけでした……」
少しでも資産を増やそうと始めたNISAでの投資でしたが、生活の土台となる現金がなかったことで、自ら損失を確定させる結果になってしまったのです。Rさんは今、投資をいったんストップし、まずは何かあったときのための貯金作りに専念しています。
普及が進むNISAと「現金軽視」のリスク
金融庁が発表した「NISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点(速報値))」によると、NISAの口座数は約2,825万口座に達し、前年比で10.4%の増加を見せています。非課税制度を活用した資産形成が幅広い世代で定着する一方で、Rさんのように手元の現金を確保しないまま投資に資金を回してしまうケースは少なくありません。
金融広報中央委員会が実施した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、単身世帯が金融商品を選択する際に「収益性」を重視する割合は38.4%となっており、およそ4割の人が利益を求めていることがわかります。一方で、「流動性(現金への換えやすさ)」を重視する人は20.2%にとどまっています。
投資信託などはいつでも売却して現金化できると思われがちですが、相場には波があるため、お金が必要になったタイミングで元本割れを起こしているリスクが常にあります。Rさんのように手元の現金の流動性を軽視して収益性を追い求めてしまうと、急な出費の際に不利なタイミングでの売却を余儀なくされてしまいます。
投資を始める際の基本は、病気やケガ、急な出費に備えるための「生活防衛資金」を、銀行預金などの安全な形で確保しておくことです。一般的には生活費の3〜6ヵ月分が目安とされています。そのうえで、当面使う予定のない「余裕資金」の範囲内で投資することが、長く安定して資産形成を続けるための大切なポイントです。
[参考資料]
金融庁「NISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点(速報値))」
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」

