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2021年4月に高年齢者雇用安定法が改正・施行されてから、定年を65歳や70歳までに引き上げる企業が増加しています。そのようななか「人間には、60歳を超えても成長する機会が、まだまだたくさん残されている。『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』と感じている」と語るのは、外務省主任分析官の経験を持つ作家・佐藤優さんです。そこで今回は、佐藤さんの著書『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』より一部引用・再編集し「定年後が一番楽しい」を手に入れるための方法をご紹介します。

【書影】知の巨人がたどり着いた人生の最終結論とは?佐藤優『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』

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定年後は公営住宅に

日々の生活費を切り詰めることとともに、固定費を見直すことも検討する必要がある。たとえば定年後も住宅ローンの支払いが続いているのであれば、住み替えを決行する。そうして毎月の支出を一気に減らす。都心のマンションに高額な賃貸料を払っているケースでは、郊外のマンションに引っ越すべきだろう。

現役時代は住宅手当もあり、さほど家賃が生活を圧迫することはなかったかもしれない。しかし定年後、それがなくなると、いきなり重荷になる。

そのため定年を迎えたとき、思い切って、都営住宅や区営住宅、あるいは県営住宅や市営住宅に移ることを考えるべきだろう。東京郊外なら、2万円から5万円で、それなりに満足できる部屋を借りることができる。

たとえば東京都住宅供給公社のサイトを参考にすると、東大和市の物件ならば、2DKから3Kの物件を、約4万円から6万円で借りることができる(2025年6月時点)。

であれば、定年後に住宅ローンが残っている人は住居を売却し、思い切って住み替えを決断すべきだろう。都心の賃貸住宅に住み、家賃を20万円以上も払っている人も同様である。

定年後にネットを使えないとどうなる

加えて、これから定年後の人たちにとって重要になってくるのが、ネット環境への対応力だ。

ネットを使いこなせると、コミュニケーションの幅が一気に広がる。それによって、人間関係も円滑になる。

現在の若者は、テレビなど観ない。その代わり、ユーチューブやネットフリックス、あるいはアマゾンプライムビデオなどを観ている。ということは、同じメディアを観ていれば、子どもや孫と話をする際の共通の話題を見つけることができる。

近年に大ブレイクしたアニメやドラマ、たとえば『鬼滅の刃』や『愛の不時着』などを観れば、それが共通の話題となるだろう。

現在の定年後の人たちは、ネット環境に順応できる人と苦手な人、その二つに大きく分かれている。難なく順応し、これらを使いこなしている人がいる一方、ネットどころかパソコンも満足に使えない人もいる。これが新たな格差となっている。

趣味や娯楽の分野だけならまだしも、銀行や行政とのやり取りなどでネットへの対応が必須になっている。それは『韓国 行き過ぎた資本主義』(金敬哲著・講談社現代新書)で紹介されている韓国の事例だ。ネットに親和性のない高齢者が長距離バスの切符を買うために行列したり、銀行でおカネを引き出す際に高い手数料を取られたり……。

こうした実用的なこと以外にも、ネットを活用できる人は周囲とのコミュニケーションを深めることができるので、不安や孤独を感じることもなくなる。一方、ネットを活用できない人は、経済的にも社会的にも不利益を被る。そうして不安感や孤独感が増していく可能性が高い。

定年後の「ナマケモノ戦略」

コロナ禍の自粛生活では、おカネをほとんど使わずに暮らせたことに驚いた人も多いだろう。とことん節約していると思っていた人も、コロナ禍のおかげで、実はさらに切り詰めることができると悟った。

おそらくこの経験は、コロナ禍が収束したあとの生活にも影響を及ぼすはず。それが厳しい時代に定年を迎える人の、いわば「ナマケモノ戦略」のヒントになる。


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定年以降は、現実をリアルに見極めることが必要になる。これからも少子高齢化が加速する日本では、経済が縮小することを止めるのは難しいかもしれない。すると中流層は減少し、富者と貧者の二極化が進む。しかし、そうした状況を子細に分析し、自分の生活に取り込むことこそが重要だ。

「生活保守主義」を徹底しながら、守りを固める。そのなかで新しい生活の仕方や人間関係を模索する。

守りに徹するためには、新しい価値観を受け入れる姿勢も欠かせない。つまり、「積極的消極主義」とでも呼ぶべきフロンティア精神が必要なのだ。それが、「ナマケモノ戦略」かもしれない。

おカネの問題で親族と争わないために

そして定年後の人たちが遭遇する生前贈与の話……そこには贈与税がかかってくるケースがある。

贈与を受ける額が年間110万円までは非課税。ゆえに、分割して何年かに分けて贈与を受け取る方法もある。また、孫が贈与を受け取る場合、目的が教育資金であれば、一人当たり1500万円までは非課税になる。

相続争いでストレスを抱え込まないようにするには、話し合いを事前にしておくことだろう。その結果を明示する書類も作成しておくべきだ。おカネの問題で親族との絆を失うほど虚しいことはない。

キリスト教徒の私は、貧困に陥っている人や健康に不安のある周囲の人の問題にも心を寄せるべきだと思っている。こうした人たちを社会が助けるのは当然である。人間は人間であるだけで、かけがえのない存在なのだ。

そのため、本当に困ったときには行政に相談して生活保護を受けてほしい。そうしたセーフティネットも日本には整備されており、これは誇るべき制度なのだ。

※本稿は、『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。