嵐莉菜「自分の声を少し好きになった」アニメ声優初挑戦で切り拓く表現の境地

嵐莉菜
映画デビュー作『マイスモールランド』で国内の映画賞を席巻した俳優・嵐莉菜が、劇場アニメ『パリに咲くエトワール』(3月13日公開)で声優の門を叩く。彼女が息を吹き込むのは、武家の家系に育ちながらも、1912年のパリでバレエという未知の夢に身を投じる少女・園井千鶴だ。かつて自身もバレエに打ち込んだ経験を持つ嵐が、自らの「声」と真摯に向き合い、新たな表現の境地を切り拓いた。異国の地で葛藤する千鶴の姿に、今の自分を重ね合わせた彼女が見つめる「夢の行方」とは。制作の舞台裏から、共演する當真あみとの絆まで、その想いを聞いた。(取材・撮影=村上順一)
声だけで感情を表現する難しさに苦戦
――台本を初めて読んだ時の感想を教えてください。実写の台本とは異なり、キャラクターの心情や状況が非常に細かく書き込まれていたことに驚きました。併せていただいた絵コンテを見ながら読み進める作業がとても新鮮で、千鶴とフジコの友情や、二人が夢に向かって突き進む展開にワクワクし、「早く演じてみたい」という気持ちでいっぱいになりました。――演じられた「千鶴」に共感する部分はありましたか?
私自身、幼少期にバレエを習っていたので、千鶴が練習に打ち込む姿にはとても共感しました。実は、私がバレエを辞めた理由は「先生が怖かったから」なのですが(笑)、今回調べてみると、当時の先生もロシアバレエの方だったんです。劇中で千鶴を指導するオルガ先生もロシア出身の元バレリーナなので、不思議なシンパシーを感じました。――初めての声優仕事として、ご自身の「声」と向き合ってみていかがでしたか。
元々は自分の声があまり好きではなく、オーディションのお話をいただいた時も「なぜ私が?」と驚いたほどです。でも、完成した作品を観た時、自分の声を少し好きになることができました。最初は照れくささもありましたが、物語が進むにつれて自分の声であることを忘れ、ストーリーに没頭できたのが嬉しかったです。――役作りにおいて、特に意識した技術的なポイントは?
千鶴は物静かな性格ですが、薙刀(なぎなた)の使い手という一面もあります。そのため、普段の控えめなトーンと、演武の際のお腹から声を出す発声とを使い分けるよう意識しました。声だけで全ての感情を表現する難しさに苦戦し、滑舌や語尾のニュアンスなど、今まで意識していなかった部分に細心の注意を払いました。この経験は、実写のお芝居におけるモノローグの表現などにも確実に活きていると感じます。元々は苦手意識があったのですが、今作を経て少し自信がつきました。周囲から「上手だったよ」と声をかけていただけると、この作品を経験したからこそなのだと実感します。――憧れの声優さんはいますか。
津田健次郎(矢島正一役)さんです。出演されると聞いた時は、ご一緒できるだけで光栄で、本当に嬉しかったです。津田さんの声が聞こえてくると、その場の雰囲気を飲み込むというか、すべてをさらっていくような圧倒的な存在感がありました。そのシーンの重みが増す感覚があり、まさに「声のスペシャリスト」だと憧れを抱きました。
「発音」に集中し、リラックスして挑めた
――當真あみさんとはドラマ『ちはやふる−めぐり−』でも共演されていますが、本作の収録が先だったそうですね。そうなんです。当時は二人とも人見知りを発揮してしまい全然話せなかったのですが、今では当時のそわそわした様子を笑い合えるほど仲良くなれました。――アフレコ現場での印象的なエピソードを教えてください。
スタッフさんがスタジオに木刀や薙刀を用意してくださったことが強く印象に残っています。武術の「動きを止める時の力の入り方」を実際に体験することで、声の出し方が劇的に変わりました。――お気に入りのシーンや、手応えを感じたセリフはありますか。
お気に入りのシーンは、千鶴が自身の高身長について「エッフェル塔みたいに、背が高いのもいいなァって」と話すシーンです。それまでコンプレックスだった背の高さを、パリという場所で自分の武器や誇りとして捉え直す姿には、私自身も勇気をもらいました。
もう一つは、少し地味なシーンなのですが、オルガ先生の厳しい指導の後にフジコが「こわそうな人だったねぇ」と話しかけられ、千鶴が「習い事だから…」という一言です。落ち着いた日常的なシーンだからこそ、発音に集中してリラックスして挑めたので、自分でも納得のいく表現ができたと思っています。――最後に、作品を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
今作は、夢を追いかける中で壁にぶつかり、葛藤している全ての方に届いてほしい物語です。自分自身の人生のあり方を考えさせてくれる、深いメッセージが込められています。フジコや千鶴の生き方を通して、幅広い世代の方々に一歩踏み出す勇気を感じていただけたら嬉しいです。(おわり)ヘアメイク:TSUKUSHI TOMITA(TRON)スタイリスト:内田理菜衣装クレジット:ワンピース86,900円/コルコバード(フィルム)問い合わせ先フィルム(03-5413-4141)
嵐莉菜(アラシ リナ) プロフィール
2004年5月3日生まれ。埼玉県出身。母親が日本とドイツにルーツを持ち、父親がイラン、イラク、ロシアのマルチルーツを持つ。「ミスiD2020」でグランプリ&ViVi賞のW受賞。2020年より『ViVi』専属モデルとして活動中。2022年5月に公開された映画『マイスモールランド』では、初出演&初主演でありながら名だたる映画祭で新人賞を獲得し、モデル、女優としての才能を発揮。TBS系『18/40〜ふたりなら夢も恋も〜』(23)、映画「少年と犬」(25)に出演し、2025年夏には、日本テレビ水曜ドラマ「ちはやふるーめぐりー」に出演。
