「楽しみだったはずが…」年金月17万円・71歳祖母が孫の来訪を手放しで喜べない理由
祖父母にとって孫の存在は大きな喜びとされます。しかし、交流の頻度や形によっては、体力的・経済的な負担を感じる高齢者もいます。総務省『家計調査(2024年)』によれば、高齢単身無職世帯の平均可処分所得は月約12.1万円で、支出が上回る赤字構造が一般的です。限られた生活費の中で、家族との付き合いに伴う出費や労力が重なると、高齢者側が負担を感じても言い出しにくい状況が生まれます。
「孫が来るのは嬉しい。でも…」
「来るのは嬉しいのよ。でもね、終わったあとがしんどくて」
そう語るのは、地方都市の団地で一人暮らしをしている久美子さん(仮名・71歳)です。夫を亡くして8年。年金は月約17万円で、貯蓄を取り崩しながら生活しています。
娘夫婦は車で40分ほどの距離に住み、小学生の孫2人を連れて月に1〜2回訪ねてきます。
「懐いてくれているし、来るのを楽しみにしていたんです」
しかし、ここ数年、その気持ちは少しずつ変化していました。孫が来る日は、朝から準備が始まります。掃除、布団干し、食材の買い出し。
「子どもが好きそうなものを買っておこうと思うでしょう。お菓子とか、ジュースとか、夕飯のおかずとか」
来訪1回あたりの食費や雑費は3,000〜5,000円ほど。頻度が増えると月1万円を超えることもありました。さらに負担は家事だけではありません。
「小さい子って元気だから、家の中で走るし、物も散らかるし。帰ったあとの片付けが大変で」
翌日は腰痛が悪化し、通院が必要になることもありました。
当初は「来てもいい?」と確認があった娘夫婦ですが、次第に連絡は簡略化されました。
「土曜行くね」
前日のLINE一文だけで決まることも増えました。
「断る理由もないし、楽しみにしていると思われているから」
久美子さんは予定を調整しながら迎える準備を続けていました。来訪が3週続いた頃、久美子さんは娘に、遠慮がちにこう伝えました。
「今週はちょっと体調が…」
娘は驚いた様子でした。
「え? もしかして無理してたの?」
久美子さんは初めて打ち明けました。
「嬉しいのは本当。でもね、お金も体も、ちょっと大変で」
娘は沈黙し、こう言いました。
「そんなふうに思ってたなんて、気づかなかった」
高齢期の家族交流と「見えない負担」
「孫は可愛い。でも生活は別」
話し合いの結果、来訪頻度は月1回程度に減り、外食や公園で過ごす形に変わりました。食費は娘夫婦が持つようになりました。
「孫は変わらず可愛いです。でもね、生活と気持ちは別だって思いました」
家族間の交流は善意で成り立っているように見えても、負担の偏りが続くと関係に歪みが生まれます。特に高齢期では、体力・経済力・住環境の制約が大きくなります。
久美子さんは振り返ります。
「来てくれるのは嬉しい。でも、嬉しいだけじゃ続かないんですね」
高齢単身世帯の多くは年金中心の生活で、支出余力は限られています。家族交流のあり方は、高齢者の生活基盤と調和している必要があります。
「孫に会うのが負担になるなんて思ってもみなかった。でも、正直に言えてよかった」
久美子さんの言葉は、家族関係における「距離」と「配慮」の重要性を示しています。孫との時間は喜びである一方、持続可能な形で続けるための調整もまた必要なのです。
