[2.15 J1百年構想WEST第2節 G大阪 0-0(PK2-3) 名古屋 パナスタ]

 まさに圧巻のパフォーマンスだった。名古屋グランパスのGKシュミット・ダニエルはこの日、前後半の90分間で7本のセーブを記録し、2試合連続のクリーンシートを達成すると、特別大会限定で行われるPK戦でも2本のPKをストップ。ケガに泣いた昨季からの完全復活を印象付ける活躍で「勝ち点2」をたぐり寄せた。

 0-0で迎えたPK戦の直前、元日本代表の楢崎正剛GKコーチから熱い言葉をかけられた。「ダンがいなかったら0-0じゃないし、今日はダンの日だと思うから自分を信じてデータを気にせずやっていいと。強く背中を押してもらいました」(シュミット)。G大阪は開幕戦もPK戦を戦っており、データは頭に叩き込んでいた。それでも数多くの修羅場を乗り越えてきたレジェンドGKからの金言は何より大きな支えになった。

 1本目を駆け引きに使うGKもいるなか、最初から全力で立ち向かった。MF倉田秋のキックに読みを合わせ、ボールは手をかすめながらもゴールへ。「もうちょっと甘く入れば届くという感覚があった」。止めることはできなかったが、惜しいトライは相手の後続キッカーの重圧となるもの。横幅7.32mのゴールマウスをより広く覆い隠すリーチを誇るシュミットならば、なおさらだ。

 そして2本目のキッカーは19歳のMF名和田我空。名和田は開幕節でも途中出場からPKキッカーを務め、ギリギリのコースに蹴っていたなか、シュミットはそのコースに大きく寄ってアピールした後、中央のポジションに就いた。そこで名和田が選んだコースは“ど真ん中”。シュミットは誘い込んだかのようにその場に立ちはだかり、胸の正面で大事にセーブした。

「これに関しては情報を与えたくないので……。でも自分なりに考えた結果でした」(シュミット)。多くを語ろうとはしなかったが、シュミットにとっては見事な駆け引き勝ち。その後は味方のキッカーもクロスバーやGK東口順昭に阻まれ、拮抗した展開になったが、4人目のDF中谷進之介のキックもセーブ。最後は5人目のFW唐山翔自に枠を外させて勝利が決まり、チームメートによる歓喜の輪に包まれた。

「いい景色でしたね。(チームメートが)駆け寄ってくれて。PKじゃない試合で勝っていければもっと勝ち点を積み上げられるし、そこを目指してやってはいきたいけど、今大会に関してはこういう試合がこれからもある。PKに絶対はないし難しいけど、できる限り相手を惑わせて、蹴るのを難しくさせられるように。今日止めたことによって、もし次の相手もPKになった場合は多少考えてくると思うし、考えさせられることが一番大事だと思うので、そこを頑張ります」

 シュミットのPKストップと言えば、記憶に残るのがカタールW杯直前の2022年9月、ドイツ遠征で組まれたエクアドル戦だ。0-0で迎えた後半38分に味方のファウルでPKを与えてしまい、決められれば敗色濃厚というなか、自身の読みを信じてFWエネル・バレンシアのキックをセーブ。W杯を控えるチームを敗戦から救う大仕事を成し遂げていた。

「あれはドンピシャだったので全てがスローモーションに見えたセーブでした。でも確かにあそこからPKに関しては自信が多少は増していますね。僕としてはPKはそういう成功体験の積み重ねなので。今日もいい成功体験として、今後の自分に活かせるかなと思います」。Jリーグの舞台で再び成功体験を重ね、“PKに強い”キーパーという評価を印象付けた。

 もっともPK戦にはそんな良い思い出も残る一方、悔しい記憶のほうが強く心に刻まれている。エクアドル戦の3か月後、順当にW杯メンバーに選出されてカタールの地に渡ったシュミットだったが、大会を通じて出場機会のないままベスト16で敗退。一時は“PK要員”として期待する声も上がっていたものの、クロアチア戦でも出番を掴み切れず、その無念がPK戦にかけるモチベーションを人一倍強いものにしている。

「カタールでPKで負けた時もその場にいた一人だし、PKで勝つことの重要さ、W杯においてはそこがすごく大事なので、そこに向けてアピールするためにも間違いなく大切な大会だと思っています」

 狙うは北中米W杯での逆転メンバー入りだ。「Jリーグから何人入るかはわからないけど……」と厳しい争いは承知の上だが、23年9月以来の復帰を諦めてはいない。「PKで場数を踏んでいけば緊張感も紛れてくるし、減っていく気もするけど、自分はチームを勝利に導くために毎試合いい準備をして試合に向かえれば」。カタールW杯の敗戦を原点に導入された特別大会のPK戦は、国内組にのみ与えられた貴重な場。そのチャンスを最大限に生かすつもりだ。

(取材・文 竹内達也)