『花より男子』作者・神尾葉子。周囲からは猛反対!それでも続編を少年漫画のアプリ『少年ジャンプ+』で連載したワケ
世界累計発行部数6100万部を超えるという、少女漫画の金字塔『花より男子(だんご)』。実写ドラマも大ヒットし、松本潤演じる道明寺にときめいた記憶のある方も多いのではないでしょうか。そんな『花男』の作者・神尾葉子が、漫画家生活30年超の歩みと創作の裏側を初めて「言葉」で綴りました。『花男』完結後、続編を少女漫画雑誌ではなく、アプリ『少年ジャンプ+』で連載した理由とは?初のエッセイ集『花より漫画』より、一部を抜粋して紹介します。
「道明寺」か「花沢類」か。最後の分岐点は、NYのブルックリン橋で…
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花のち晴れ〜花男 Next Season〜
『花より男子』の続編になる、『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』という漫画を描いたのが、2015年。この作品はTBS でテレビドラマにもしていただいた。
実は、『花より男子』の続編を、私が自由に漫画を描けるうちに作らなくてはとずっと思っていた。『花より男子』は自分の中ではちゃんと完結しているのだけど、イメージとしては宝箱にカギをかけてしまっている感じだった。その宝箱がガタガタと動き始めて、登場人物が出てきたがっている気がしていた。
この連載で実現できて本当に嬉しかった。この作品の後半で、15年ぶりに描いた牧野つくしに、自分でもびっくりするくらい心臓がドキドキした。
この漫画は、少年漫画を無料で読めるアプリ『少年ジャンプ+』で約5年間連載された。「なんで少年漫画で?」「なんでアプリで?」と当時よく聞かれた。
その頃、「私はいつまでこの仕事できるかなあ……」と考えていた。30年間漫画家として仕事をしてきて感じていたこと。
漫画の在り方が今までと大きく変わり始めた世の中。近所にあってよく通っていた本屋さんが2軒閉業した。コンビニに行くと、必ずあった少女漫画雑誌が置かれなくなった。
電車に乗ると、数人はキオスクで買ったであろう週刊漫画雑誌を読んでいたのに全然見なくなっていたし、その代わり、ほとんどの人が携帯で動画を見たりゲームをしたりしていた。「あ、もう時代が完全に変わった」と感じた。
同時にその頃、少女漫画を描くことにもう限界を感じていた。少女漫画界で必要とされなくなってきた気がしていた。雑誌は新陳代謝が必要だとわかっている。「淘汰されるのは仕方がないことだし、これから何をしよう……」と思っていたところに、一人の編集者Mさんが現れた。
「スマートフォンで、無料で読める漫画アプリを作ろうと思っているのですが、ご興味ないですか?」
そう聞かれ、詳しく話を聞くことにした。

『花より漫画』(神尾葉子:著/KADOKAWA)

(写真:stock.adobe.com)
まず、今、時代が大きく変化しているということ。紙の雑誌の売り上げが下降線をたどっていること。スマートフォンの画面を下にスクロールして、1コマずつ読み進めていく「縦読み」の漫画を好む人が増えていること。
縦読みの漫画なんて、もう同じ漫画ではないと思った。漫画のストーリーは見開きで作るもの、という固定観念があって、私たち漫画家はそれを最初に叩き込まれる。それに比べて、縦読み漫画はシステムが全然違う。
デジタル漫画も基本は1ページずつめくっていく。問題は、スマホで読むということは、画面が小さい。読者が読みやすいように字もコマも大きくして迫力が必要。
「無料で読める漫画アプリなんてやめたほうがいい」と、周囲からは猛反対された。決めかねていた私を前にして、編集Mさんは、「今やらないと、漫画の文化が縮小されるのは目に見えています」と語気を強めた。熱意のあるプレゼンと、この時代の変化を感じていた私。
「やります」と返事をした。
紙の漫画の文化はまだ続くけど、間違いなくこれが新しい漫画文化になると思った。この話をいただいたとき、すごくドキドキした。SNS とも直結していて、0時を過ぎるとアプリに掲載される。すぐに反応がある。面白かった、つまらなかった、もっとひどい反応もあるし、当たり前だけど読まれないことももちろんある。
今までは読者アンケートがあって、人気は白日の下に晒されない仕組みになっていたけど、読まれた数がはっきりと記される。この緊張感はかなりのものがあった。
『花のち晴れ』は、F4が卒業して2年たった後の英徳学園を描いた作品だ。花男の登場人物がメインではなく、F4なき後の廃れた学園を盛り返そうと、神楽木晴(かぐらぎ・はると)という主人公が恋をしたり、学園のトップであろうと奮闘するストーリー。『少年ジャンプ+』は少年誌のアプリなので、男性が読める漫画を描かなくてはと思っていた。
何度か話したが、漫画を描くときに大事にしていることのひとつは、読者が感情移入できる主人公の存在。少年誌の主人公でかっこいいヒーローが普通に活躍しても、「あっそう」と流されてしまうと思った。
卑屈でコンプレックス丸出しの神楽木晴。F4の道明寺司が大好きで、彼を神と崇めながら必死で《漢(おとこ)》になろうとする。そして、好きになった江戸川音(えどがわ・おと)という女の子との恋愛によってどんどん成長していく。
ど真ん中で少女漫画を描いていた頃の私とは違う、全体を上から見つつ、かっこ悪くブツブツ言っている神楽木晴のお尻を叩きながら引っ張り上げ、見守るような描き方だった。
主人公が男の子というのも初めてだった。いわゆるイケてないダメな男子を描くのがとても楽しかった。
そしていつまで漫画が描けるかな、これが最後かな、と思いながら心を込めて描いた思い出に残る作品だ。後半、満を持して『花より男子』の登場人物たちが出てくる。ここをずっと描きたかったので、本当に嬉しかった。
いまや、『少年ジャンプ+』の勢いはすごい。あのときのMさんは編集長になっていると聞く。声をかけていただいて本当に感謝の気持ちしかない。
今まで自分が築いてきた場所で、同じことを続けるのをあえてやめてみた。とりあえず挑戦してみる。ダメだったらまた別の道を行けばいいと思いながら飛んでみた。飛び込んだ先は荒れた海だったけれど、とてもいい経験をさせてもらったと思っている。
※本稿は、『花より漫画』(神尾葉子:著/KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
