2025年のマーケティングおよびメディア業界は、急速な技術進化と市場構造の変化が重なり、これまで当たり前とされてきた前提が揺らぎ始めた1年だった。とりわけAIの進化は、ツールの域を越え、マーケティングにおける生産性と創造性の前提を書き換えつつある。加えて、検索、ソーシャル、コマース、生成AIといった接点が絡み合い、顧客体験の「入り口」そのものも分散・再編されはじめた。Digiday Japan恒例の年末年始企画「IN/OUT 2026」では、当メディアとゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブたちにアンケートを実施。2025年をどのように総括し、そして2026年に向けてどのような挑戦とビジョンを描いているのか。その声を紹介する。サンリオで、デジタル事業本部 デジタル事業開発部 CX推進課 顧客体験プラットフォーム戦略推進担当を務める田口歩氏の回答は以下のとおりだ。

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――2025年のもっとも大きなトピック・成果は何ですか。

最大の成果は、顧客接点のデジタルシフト促進と、ロイヤリティ施策の実効性向上です。キャラクター大賞の店頭投票デジタル化や、サンリオショップで配布していた紙製の仮カードを廃止し、アプリを中心としたデジタル接点への移行を加速させました。また、イベント申し込み時の二要素認証の導入、転売対策としてのステージ別販売制御など、ファンの不公平感を解消する取り組みを進めました。一方で、サンリオピューロランドにおけるゴールド会員限定パレードの先行お披露目など、会員ロイヤリティに応じた体験価値の提供強化も着実に実現できました。

――2026年に向けて見えてきた課題は何ですか。

2026年に向けた課題は、チャネル間のUX不整合の解消と、システム基盤の堅牢化です。EC専用クーポンが店舗で誤認される問題など、事業チャネルごとの分断が顧客の迷いを生む要因となりました。デジタルシフトを進める中では、顧客が混乱しない統合された体験設計が不可欠であると再認識しました。また、年初に発生したグループ会社のセキュリティインシデントや、今後強化されるゲーム、教育、映像といった新領域での大規模データ連携に伴う負荷懸念など、将来的なグローバル展開にも耐え得る、堅牢で柔軟なデータインフラの再構築が大きな課題となりました。

――2026年にチャレンジしたいことを教えてください。

Sanrio+を、「サンリオ時間」創出のエンジンへと進化させるため、2026年はまずUI/UXの改善に力を入れ、データドリブンな顧客体験の個別最適化に挑戦したいと考えています。会員ランク制度であるハートあつめを拡充し、一人ひとりの嗜好や行動履歴に基づいた、最適なコンテンツや特典の提供を実現します。また、NFCタグを全国店舗に展開するなど、リアル店舗でのデジタル体験をさらに進化させ、エデュテインメント事業やゲーム事業など、他事業とのID連携にも注力します。デジタルとリアルの境界、物販と体験の垣根を溶かし、ファンが安心してつながることのできるサンリオエコシステムの強化を目指していきます。