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鈴木健 氏 「AIが意思決定と実行に踏み込みはじめた時代に」
鈴木健 氏 「AIが意思決定と実行に踏み込みはじめた時代に」
鈴木健 氏 「AIが意思決定と実行に踏み込みはじめた時代に」
2025年のマーケティングおよびメディア業界は、急速な技術進化と市場構造の変化が重なり、これまで当たり前とされてきた前提が揺らぎ始めた1年だった。とりわけAIの進化は、ツールの域を越え、マーケティングにおける生産性と創造性の前提を書き換えつつある。加えて、検索、ソーシャル、コマース、生成AIといった接点が絡み合い、顧客体験の「入り口」そのものも分散・再編されはじめた。Digiday Japan恒例の年末年始企画「IN/OUT 2026」では、当メディアとゆかりの深いエグゼクティブたちにアンケートを実施。2025年をどのように総括し、そして2026年に向けてどのような挑戦とビジョンを描いているのか。その声を紹介する。マーケターの鈴木健氏は、個人としての見通しを以下のメッセージにまとめた。◆ ◆ ◆
――2025年のもっとも大きなトピック・成果は何ですか。 インフレと株価上昇でふくらんだが、問題だらけの「穴の開いたチーズ」2025年はその前から予兆があった大きな変化について、それが顕在化した年でもありました。マーケティングとしてはテクノロジーの変化が直接消費者レベルまで影響を与えているのがAIツールの普及化です。通常イノベーションの普及は高機能で高価格なものがエンタープライズを対象に徐々に進むものですが、OpenAIのChatGPTの例にように、一気に生成AIがモバイルアプリで使え、それが日進月歩の勢いで進化していくさまは目を見張るものがあります。マーケティングに限らずホワイトワーカーである知的労働が主体のビジネス層にとっては、このようなAIツールはパソコン、ビジネスソフトウェア、インターネット、モバイルと同様の日常の生産性向上ツールとして活用されつつあります。消費者側にとってはインターネットの検索エンジンに代替されるAIサーチが従来のウェブトラフィックを奪いつつあり、「ゼロクリック」問題としてすでにデジタル上のマーケティングにおけるカスタマージャーニーにも影響を与えつつあります。また、このようなAIの勢いとは別に、日本やアメリカの政治経済状況は思ったほどは安定しているとは言えません。露ウクライナ、中東のガザ地区をめぐる闘争も続き、年末にかけては日中関係が東アジアに緊張感をもたらしていますし、トランプ関税にはじまった物価高や円安の進行は、コメの価格の高騰とともに個人消費に影を落としていています。一方でアメリカを中心とした株価と金利の上昇は、企業業績を見た目にはよく見せており、問題があちこちにあるという意味では「穴の開いたチーズ」のような様相といえるでしょう。――2026年に向けて見えてきた課題は何ですか。 AI主導での変化の潮流はどこへいくのか近年のAIテクノロジーの進化は目覚ましいものがあり、それが2020年代のパンデミック以後のビジネス世界を塗り替える基調になっています。それはつまり、AppleとMetaの戦略ミスから始まり、Microsoft やGoogleの引こうとする業界ルールがどのようにAI振興勢と競争していくかというところでしょうか。日本に限らず米国欧州中国のマーケティング業界は、この20年間のデジタル化がもたらしたプラットフォーム競争と国際政治混乱の余波で、グローバルでの競争がある意味単純化しているようにも見えます。つまりAIの覇者が国家経済と結びついている場合には、自国にとってプラスでも他国にとっては必ずしも良い方向に響かないという意味です。2025年には単なる妄想だった事象が、2026年には急速にリアルな避けられない課題になるかもしれません。AIによる競争は今後も続いていくとは思いますが、テック業界にとっての危機はリアルな業界にとって国家レベルの危機に結びつく可能性はあります。AIについてのトレンドや進化は日進月歩の勢いですが、面白いことにテック業界ではAIは話題でも、今年の流行語では「チャッピー」が唯一入っているように、消費者およびワーカーレベルではツールのひとつにしか過ぎません。AIがリアルビジネスを凌駕していく未来とは、AIそのものが話題になるのではなく、AIを先駆的に使って既存の業界地図を変えるようになる新しいリーダー企業やブランドが勃興するフェーズです。それは26年では確実に現れるはずだと思います。そうでなければ、今年のアサヒビールのようにデジタルに起因した新たな業界のセキュリティ課題やブランドセーフティなどの悪い意味でのテクノロジー問題によって、業界自体がある意味変革されることになるかもしれません。――2026年にチャレンジしたいことを教えてください。 マーケティングの思考プロセスを超えたAIによる新しい未来2026年の展望として、AIとマーケティングについて、AIに尋ねてみれば必ずパーソナライゼーションのようなアイデアが出てきます。確かに個々のニーズに合わせて価値を提供することは一つのシナリオではありますが、AIが助けるのは個別化されたニーズとその解決策なので、出たアイデアをどのようにスケールさせるかは別の話です。このようにAIがマーケティングとして提供するのは、思考プロセスの短縮化と解決策の提示であり、単に効率化されたのは作業時間であって解決策や意思決定の良し悪しではありません。現時点でGoogle YouTubeアワードでノミネートされたBest Use of AI部門の各事例は、このようなマーケティングの思考プロセスにどうAIが関わっているかを知るには良い例です。プロセスに人間が介入すればAIはツールとして役立ちますが、人間が意思決定するシステムそのものは変わりません。これを変革するために、AIが人間なしに自立的に実行する条件としては、ミラーワールドとしての現実世界の疑似世界(ミラーワールド)をAIで構築した上で、その疑似世界でのインプットとアウトプットをAIで直結させ、解決策の実行結果を事前に予測したうえで人間に代わって自ら意思決定と実行するエージェンティックAIの登場を待つ必要がありそうです。
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