2025年のマーケティングおよびメディア業界は、急速な技術進化と市場構造の変化が重なり、これまで当たり前とされてきた前提が揺らぎ始めた1年だった。とりわけAIの進化は、ツールの域を越え、マーケティングにおける生産性と創造性の前提を書き換えつつある。加えて、検索、ソーシャル、コマース、生成AIといった接点が絡み合い、顧客体験の「入り口」そのものも分散・再編されはじめた。Digiday Japan恒例の年末年始企画「IN/OUT 2026」では、当メディアとゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブたちにアンケートを実施。2025年をどのように総括し、そして2026年に向けてどのような挑戦とビジョンを描いているのか。その声を紹介する。講談社で、ライツ・メディアビジネス本部 局次長を務める長崎亘宏氏の回答は以下のとおりだ。

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――2025年のもっとも大きなトピック・成果は何ですか。

2025年、当社のビジネス情報メディアである、「Cステーション」「ADステーション」「マンガIPサーチ」「講談社SDGs」を全面リニューアルいたしました。情報のクオリティー、ユーザビリティー、商談機能を向上させています。こちらに海外ライセンシー向けの英語版サイト「Kodansha Licensing Website」を加えて、情報発信とともに国内外のさまざまなプレイヤーとのビジネスマッチングを推進しています。いずれも設立時に目標として掲げた「コンテンツマーケティングの民主化」をめざすための取り組みです。

――2026年に向けて見えてきた課題は何ですか。

2025年の秋、世界中のマーケティング関係者のなかでもっともシェアされた記事のひとつは、「Financial Times」 が配信した「Have we passed peak social media?(ソーシャルメディアのピークは過ぎたのでしょうか?)」ではないでしょうか?そこで紹介された、リサーチ会社GlobalWebIndex(GWI)が行った大規模調査では、2022年を分岐点に、とくに若年層からSNS利用時間のピークアウトが起きているそうです。その一方で、私自身が得た近年のインプットのなかで一番印象に残っているのは、米国大手画像生成AIプラットフォーム「Civitai」のエグゼクティブプロデューサー、マティ・シムラ(Matty Shimura)氏が語った「皆さん、世の中にこれ以上のコンテンツは必要ですか?」というコメントでした。いずれも示唆するのは、世の中に溢れる人工的なコンテンツに対する懸念と、テクノロジーとは本来、コンテンツの価値向上に使われるべきという良識だと思います。その意味で現在の状況は、AIを使う人の意識によって、アウトプットの善し悪しが左右されているのではないでしょうか? 広告産業もその例外ではありません。私はAIによってもたらされる最大の価値は「お金」ではなく「時間」だと捉えていて、新たな可処分時間を得たマーケター、クリエイター、メディアプランナーが何に取り組むのかが課題だと考えています。

――2026年にチャレンジしたいことを教えてください。

ここ数ヶ月においてホットだったのは、大手パブリッシャーと各AI企業との間で始まった対立と協調のエピソードだと思います。そして現在、「ゼロクリック検索」という脅威は、広告主、広告会社、メディアへ等しく課されています。これらでわかることは、マーケティング活動にとってのバリューは、もはやトラフィックでなく、質の高い情報へ移行するということです。いわば、原点回帰ですね。そのなかで私は改めて、コンテンツメディアとしての求心力を信じたいと考えています。そのためにはメディアとしてのキャラクターを明確化し、そこに共鳴するユーザーと繋がり、情報、サービス、プロダクトを統合的に提供していく必要があります。試行錯誤中ではありますが、ご期待ください。