年収500万円と年収800万円、どちらが本当に「得」なのか? 手取り(可処分所得)で比較
年収500万円と800万円の手取りを比較
仮に40歳独身の会社員で、給与所得控除や社会保険料を一般的な水準で試算すると、おおよそ図表1のようになります。なお、令和7年度税制改正により、基礎控除や給与所得控除の一部に見直しが行われています。
改正内容は所得水準などによって影響が異なるため、本記事では比較を分かりやすくする目的で、令和6年分の控除額を用いて試算しています。
図表1
※全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和7年度保険料額表(東京都)や国税庁の所得税の速算表などから筆者試算
手取りベースで見ると、年収差300万円に対して手取りの差は約201万円です。すべての増収部分に高税率がかかるわけではありませんが、結果として増えた年収のうち約3分の1は税金や社会保険料で消えてしまう計算となります。
「所得税率の上昇」が効いてくる
日本の所得税は、累進課税制度です。所得が増えるほど、税率が上がります。加えて、住民税の税率(所得割)は一律10%(自治体によっては超過課税を上乗せしている場合がある)ですが、健康保険や厚生年金、雇用保険などの社会保険料も比例的に増加します。
このため、試算したように「年収が1.6倍になっても、手取りは1.5倍程度」という現象が起きます。
特に独身世帯では、税負担の軽減措置(配偶者控除や扶養控除)が使えないため、実質的な可処分所得の伸びが鈍化しやすくなります。
家族構成による「可処分所得」の違い
一方で、家族がいる場合は話が変わります。例えば、年収800万円の会社員が専業主婦や子ども2人を扶養しているケースでは、児童手当(1人あたり年12万円程度)や扶養控除などによって税負担が軽減されます。
また、共働き夫婦で世帯年収500万円の場合は、配偶者も一定の収入を得ていれば世帯全体の手取りが安定し、税金の効率も良くなります。つまり、単に個人の年収を上げるよりも、共働きや控除の活用によって世帯全体の可処分所得を増やすほうが「得」な場合もあります。
「支出」を見直すことも大事
収入以外にも重要なのは「手取りの使い方」です。年収が増えるほど、住居費や教育費、交際費など支出水準が自然と上がりやすく、結果的に貯蓄率が下がる傾向があります。一方で、固定費を抑え、収入の一部を計画的に運用できる人は、資産形成で年収の高い人を上回ることも珍しくありません。
例えば、貯蓄率の違いから年間の貯蓄額を図表2で比較してみます。
図表2
筆者作成
収入が増えても貯蓄率を維持できれば年収に応じた貯蓄額の差は生じますが、実際には収入が増えるにつれて支出も膨らみ、貯蓄率が10%以下に落ちる人も少なくありません。
高収入が得とはかぎらない
年収800万円あれば確かに生活の選択肢が広がりますが、税や社会保険料負担が重く、また支出の管理を怠ると「思ったほど貯まらない」ことになる可能性があります。
一方で、年収500万円でも、制度や控除を上手に使い、支出をコントロールできれば、可処分所得の効率は非常に高くなります。最終的に「得」かどうかを左右するのは、収入そのものより「手取りの使い方」と「税や社会保険といった仕組みの理解」です。
会社員で高収入を目指すこと自体は素晴らしいことです。ただ、それと同時に、次の3点を意識することで、年収の大小にかかわらず、豊かさを感じられる家計を実現できるでしょう。
・税や社会保険の仕組みを理解する
・家計全体の支出バランスを最適化する
・将来の資産形成を計画的に行う
まとめ
年収500万円と800万円の差は、額面上は300万円ですが、実際の手取りの差は約200万円前後です。税や社会保険の「見えにくいコスト」を踏まえれば、「高年収=得」とは言い切れないかもしれません。
大事なのは「収入」だけでなく、「手取りの使い方」や「税や社会保険といった仕組み」を意識することが、最終的な「得」を決めることになるといえるでしょう。
出典
全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.1199 基礎控除
国税庁 No.1410 給与所得控除
執筆者 : 小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

