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刑務所を出た人などを受け入れる「更生保護施設」や「自立準備ホーム」に対する国の委託費が不足している。

この問題を東京新聞を除いて大手メディアの報道は確認できないが、弁護士ドットコムニュースは直近1カ月で4本の記事を配信した。

記者がなぜ、委託費の問題を繰り返し取り上げるのか。その原点は、5年前に福岡で起きた15歳の少年による殺人事件にある。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

少年院を出た2日後に面識ない女性を殺害

2020年8月28日、プロ野球ソフトバンクの本拠地に隣接する大型商業施設「マークイズ福岡ももち」(福岡市中央区)で、買い物に来ていた女性(当時21歳)が、面識のない少年(当時15歳)に突然刃物で襲われ、命を奪われた。

確定刑事記録などによると、少年は幼少期から児童養護施設などを転々としてきた。暴力トラブルを繰り返し、2019年に少年院へ。実家に戻る方向で調整が進んでいたが、親が引き取りを拒否したため、少年院を出る直前に急きょ、九州の更生保護施設に入ることが決まった。

少年は2020年8月26日に仮退院し、施設に入所したが、翌日に脱走。その翌日に事件を起こした。少年院を出て、わずか2日後の凶行だった。

●多様な「受け皿」が足りないという現実

この事件は、虐待を受けた子どもへの支援のあり方や少年院の機能など、複数の社会的課題を浮き彫りにした。その一つが、社会に戻った後の「居場所」の問題だった。

「更生保護施設」や「自立準備ホーム」は、刑務所少年院を出て行き場のない人を一時的に受け入れ、寝泊まりできる場所や食事の提供、就職活動の支援など、社会復帰を支える拠点だ。再犯防止の観点からも不可欠な存在となっている。

しかし、これらの施設は、受け入れ人数に応じた国の委託費やボランティアの寄付で運営されており、そもそも資金に余裕がないところがほとんどだ。

親元に帰らずに施設を頼るような少年は、支援が難しいケースも多く、積極的に受け入れる施設は少ないのが実情である。

福岡の事件を取材する中、「もし親族以外にも多様な受け皿が整っていれば、被害者は生まれなかったのではないか」という思いを強くした。

●国の「再犯防止」方針に逆行する委託費不足

こうした経験があったため、今年10月に、更生保護施設や自立準備ホームの委託費が切り詰められているという話を聞いたときは耳を疑った。

関係者によると、法務省の予算が不足し「原則6カ月まで滞在できる」とされているにもかかわらず、1〜2カ月ほどで施設を出てもらうよう求める運用が示されたという。

高止まりする再犯者率を前に、国は「息の長い支援」を呼びかけてきた。また今年6月には、「立ち直り」を重視する新たな刑罰「拘禁刑」も導入された。

今回の委託費切り詰め問題は、こうした再犯防止政策の流れに明らかに逆行している。

●重大事件の加害者もいずれ社会に戻る

愛媛で今年3月に起きた傷害事件。路上で面識のない女性をナイフで切りつけた男性は、刑務所を出てから、わずか8カ月しか経っていなかったという。

松山地裁は懲役4年6カ月の実刑判決を言い渡したが、数年後には社会に戻ってくる。

記者が取材している中には、過去に子どもを2人殺害し、出所後に再び事件を起こして服役した受刑者もいる。彼も近く刑期満了を迎える見通しだ。

これらは極端な例かもしれない。しかし、全国の刑務所では、毎日のようにさまざまな背景を抱えた受刑者が出所している。

家族や親族に見放され、帰る場所のない人も多い。何度も裏切られながら、そうした人たちを受け入れているのが、更生保護施設であり自立準備ホームである。

委託費不足については、平口洋法務大臣が11月21日の衆院法務委員会で「補正予算をすでに要求した」と明らかにした。今年度分については補填される可能性が出てきたものの、「そもそも現在の水準が低すぎる」という声は根強い。

重大事件が起きるたびに厳罰化が叫ばれるが、再犯者を生まないための環境作りの重要性にも、もっと関心が向けられてほしい。