『放課後カルテ2025秋』©︎日本テレビ

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 あの偏屈学校医が帰ってくる。『放課後カルテ』(日本テレビ系)のスペシャルドラマの制作が発表された前日に、公式SNSで牧野(松下洸平)の白衣とメガネの写真が投稿されたのを見たときは、続編の予感だけで胸が高鳴った。

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 『放課後カルテ』は、日生マユによる同名漫画を原作とし、2024年の秋クールに放送されたドラマ。学校医として小学校の保健室に勤務する牧野を主人公としながら、ドラマ版が丁寧に描いたのは小学生の多種多様な病気とそこに関わる大人の葛藤だった。ナルコレプシーや場面緘黙症などの知名度の低い病から、ストレスによる破壊衝動など理解されにくい精神的な病も丹念に描き出した作品で、学校を舞台にしながら医療的な側面も強く、知識を授けるような作品として当事者への寄り添いもみせた。

 そして、何よりも言及したいのは子役たちの名演だ。ナルコレプシーを患う野咲ゆきを演じた増田梨沙や心臓病により小学校への登校が叶わない冴島直明を演じた土屋陽翔、破壊衝動に苦しめられる水本羽菜を演じた小西希帆など、各話でメインを担う子役たちの大人顔負けの繊細な芝居が素晴らしかった。『放課後カルテ』以降も活躍している子役も多い。そして、俳優たちの演技を引き立てる構成や演出も含め、『放課後カルテ』という原作の魅力を伝えるために手を尽くした作り手の熱意を感じる作品であった。

 小学生の病という目が向けられにくかった題材を扱いつつ、次世代の名優の発掘をしたという大きな価値のあるドラマであったことを考えれば、スペシャルドラマの制作決定は必然なのかもしれない。ドラマ放送時は、配信限定コンテンツとして6.5話と7.5話が制作されていること、原作が全17巻あることを踏まえると、実写化して届けたいエピソードを選びきれないという悩みもあったのだろう。

 ドラマの最終回で、小学校を離れて病院の小児科医に戻った牧野。スペシャルドラマでは、牧野が勤務する病院と小学校、ドラマでメインとなった6年2組の生徒たちが進学した中学校が舞台となる。原作にも収録されている中学生になった藤野一希(上田琳斗)の家庭の変化による悩みや小学2年生になった冴島直明の悩みを中心に、オリジナルエピソードも含めて制作されるようだ。小学校から中学校へと進学すると環境が大きく変化し、心身の成長も目まぐるしい。そんな中で家庭にも変化があると、大きなストレスになりうる。小学校を舞台にしているだけでは見えてこなかった、よりバリエーション豊かな問題が描かれることになるだろう。また、子役たちが身体面でも芝居面でも、どんな成長をしているのか楽しみだ。

 また、本作は牧野の医師としての成長もしっかりと描かれていた作品だ。成長したとはいえ、無愛想で言葉足らず、コミュニケーションがあまり上手くないことには変わりない。小学校という生徒の内面まで触れなければならなかった環境から、病院という医師として病気によりフォーカスする医療の現場に戻ったことで、新たな壁にぶつかる可能性もあるだろう。学校医を経て成長したとはいえ、完璧ではない牧野が今度はどんな変化をみせてくれるのかにも注目だ。

 『放課後カルテ』の変わらない魅力と変わったからこその魅力の両面が味わえるスペシャルドラマになることを願いたい。(文=古澤椋子)