岐阜県美濃市が挑んだ“完全地域移行”とは？ 全国初の部活動改革に見る地域と学校の新たな関係

YouTuberであり作家、そして元教師のすぎやま氏が、自身のYouTubeチャンネルで公開した動画『【全国初】部活の完全地域移行に成功した岐阜県美濃市の教育長にインタビューしてきました』では、全国で初めて部活動の完全地域移行を達成したとされる岐阜県美濃市の島田昌紀教育長に、その真相と成功の秘訣について鋭く切り込んでいる。

全国の自治体が頭を悩ませる部活動の地域移行問題。そんな中、美濃市では「昨年の9月から」「平日も含めて教職員が部活動を指導することはもう一切ない状態」と島田教育長は断言する。この「完全地域移行」は、一体どのようにして成し遂げられたのだろうか。

島田教育長によると、美濃市では以前から部活動の全員加入制ではなく、クラブチームに所属する生徒も多かったという。また、少子化の影響で部員が集まらず、特にソフトボール部のように人数が必要な部活動は運営が困難となり、廃部に至るケースもあった。こうした背景から、保護者同士の話し合いにより、市内二つの中学校が合同でチームを組むといった動きが自然に生まれ、これが地域移行の大きな下地となった。「保護者の方のご理解と指導者の方のご理解があった。もうそれに尽きる」と島田教育長は語る。

大会への参加は「美濃市中学生地域クラブ」という統一名称で行われ、中体連の大会にもこの形で出場している。注目すべきは、大会運営についても「学校から切り離すということはそういうこと」「ある程度割り切らなきゃいけない」と、地域の人々が主体的に関わっている点である。指導者の確保についても、もともと土日は保護者が運営し、地域の指導者へ依頼していた経緯があり、新たに探す必要のある指導者の数が比較的少なかったことが幸いした。現在の指導者は「ほぼボランティア」の状態で、国の補助金も十分とは言えないが、それでも子どもたちのためにと活動してくれる地域の人々の熱意が改革を支えているという。

美濃市の教育改革は、部活動の地域移行にとどまらない。小1・小2の通知表を廃止し、評価方法を変更するなど、先進的な取り組みを次々と打ち出している。島田教育長は、これらの改革に対し「誹謗中傷もたくさんあった」としながらも、「批判ばかりじゃなくて応援してくださることもたくさん見えますし」「新しいことに挑戦するっていうか、やってみようよっていうことは誰かがやらなきゃいけない」と力強く語る。

部活動の地域移行は「誰かがやらなきゃいけないんだ」「じゃあどうするか？を考えていこう」という教育長の強いリーダーシップと、それを支える保護者や地域の協力体制が、美濃市の「全国初」を成し遂げた原動力と言えるだろう。