LVMH 、関税リスクに備え米国での生産拡大を検討 懸念点は人材面か

記事のポイント
LVMHは2025年第1四半期決算報告にて、「売上が5%減少したが、関税の影響は現時点では小さい」と説明した。
トランプ政権の関税政策に対し、LVMHは生産拠点移転も検討するが短期実現は困難としている。
関税によるコスト増対策として、米国生産強化やマーケティング費削減などへの注力を進める考えだ。
LVMHは2025年第1四半期決算報告にて、「売上が5%減少したが、関税の影響は現時点では小さい」と説明した。
トランプ政権の関税政策に対し、LVMHは生産拠点移転も検討するが短期実現は困難としている。
関税によるコスト増対策として、米国生産強化やマーケティング費削減などへの注力を進める考えだ。
4月14日午後に行われたLVMHの2025年第1四半期決算報告で、同社は売上高が若干減少したことを明らかにした一方で、ジバンシィ(Givenchy)のデザイナーとしてサラ・バートン氏がデビューしたことや、タグ・ホイヤー(Tag Heuer)のF1スポンサーへの復帰など、最近の成功例を強調した。
LVMHの最高財務責任者であるセシル・カバニス氏は、投資家との電話会議でアナリストから関税に関する多くの質問を受けた。LVMHの売上高は前四半期から5%減と小幅に落ち込んでいるが、関税とはほとんど関係がないと同氏は述べた。
生産拠点の移動は可能だが、すぐにはできない
しかし、その状況はすぐに変わるかもしれない。カバニス氏は、近い将来には「不確実性を考慮して、リソースをどう配分するのか細心の注意を払わなければならない」と語っている。これは米国での商品価格の上昇につながる可能性があるが、LVMHにとって値上げは、米国のラグジュアリー商品の需要の減速に対処する手段のひとつに過ぎないと同氏は強調している。
もうひとつ別の選択肢は、マーケティング支出を削減することだ。これは、米国市場の熱気が冷めそうな時期に費用を管理するのに役立つだろう。LVMHは米国以外の市場にも目を向けており、たとえば日本を訪れる中国人観光客に特に力を入れている。
トランプ大統領の関税政策は、表向きは製造業を米国に戻すことを意図しており、カバニス氏はそれに対するLVMHの見解に関する最新の情報も提供した。ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)は米国に3カ所の製造施設を所有しており、米国で販売される製品の約3分の1を米国で生産している。ティファニー(Tiffany & Co.)も米国で販売する製品の大半を米国内で生産しているが、どちらのブランドも他国から輸入した材料に頼っている。
「まだ生産を増やす余地があり、欧州から米国に生産を移す余地もある」とカバニス氏は述べた。「もちろん検討しているが、一夜にしてできることではない。準備にはかなりの時間がかかる。どのようなペースで進化させたいかは、これから検討することになる」。
カバニス氏のコメントは、ブランドにとって生産と製造の米国への移行が可能だとしても、それはすぐにできることではないという業界全体の意見を反映している。スイムブランドのアンディ(Andie)の創業者兼CEOであるメラニー・トラヴィス氏は4月上旬、米Glossyの取材に対し、「新しい工場を立ち上げて稼動させるには6カ月〜9カ月かかる」と語った。
関税の影響は……
LVMHのような大企業であれば、米国での生産能力を拡大しながら、関税に伴う余分なコストを吸収することが可能かもしれないが、小規模なブランドやスタートアップ企業は、こうしたコスト増を管理するのがはるかに難しいだろう。
以前、LVMHのCEOであるベルナール・アルノー氏は、関税が同社に与える影響を過小評価し、米国での生産を増やしたいという意向を示す発言をしていた。「我々が米国当局からさらなるプレゼンスの拡大を強く求められていることは明らかだ。今の状況下で、我々としても真剣に検討している」とアルノー氏は1月に述べている。
しかし、4月14日のカバニス氏の発言で、その見通しははるかに不確かなものとなった。「生産拠点を移すとなると、人材のトレーニングなど十分な経験や専門知識を確保する必要があり、多くの制約が伴う」とカバニス氏は述べている。「現時点では戦略を根本的に変えるつもりはないが、そうする可能性はあり得るだろう」。
[原文:LVMH mulls moving more manufacturing to the US amid continuing tariff chaos]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:島田涼平)
