に注目<今中能夫の米国株ハイテク・ウォーズ>
例えば、トランプ外交の結果、ドイツを先頭に欧州各国が軍備増強に動き出したわけだが、客観的に見れば、ロシアの人口1億5000万人足らずに対しEU(欧州連合)の人口は4億人であり、経済力でも大きな差がある。果たしてこのまま欧州が軍備を増強していくことはプーチン大統領が望んでいることなのだろうか。もちろん、そんなはずはない。強大な欧州軍が確立されるのは、ロシアにとって最も望まないシナリオのはずだ。つまり、トランプ政権はロシア寄りではなく、やはり「アメリカ第一主義」に基づいて動いているに過ぎないのだ。
ともかく乱暴に見えるトランプ大統領の政権運営だが、ここにきてその狙いと本質がようやく見え始めてきた、というのがここ数週間の流れを見ての正直な感想だ。とは言え、現時点で株式マーケットはそうしたトランプ政権の本質を読み切れていないだろうし、読み切るのにはまだ時間がかかるだろう。
◆1カ月で大きく調整した米国株、そろそろ底入れか?
では、トランプ政権の動きに翻弄される米国株マーケットと今後の投資戦略について考えてみよう。確かにこの1カ月、大きく調整したのでそろそろ底入れの兆しも出ている。一回買ってみることも考えたいが、深入りすることも避けるべきだろう。当面の注目材料は、4月1日に行われるフロリダ州、その後のニューヨーク州という2つの下院議員補選の状況だ。共和党の牙城であるフロリダ、民主党の牙城であるニューヨークでどのような結果となるのか。世論調査によるとこの2カ月でトランプ大統領への支持率がじりじりと下がっているが、得票率も含めたこれらの補選の結果によって、世界を騒がすトランプ政権の初動期に対するアメリカ国民の信任状況が垣間見えるだろう。
そもそも歳出削減というのは、世界中のどの政府にとっても難しい政策だ。必要なことであるとは理解しながらも、なかなか踏み来ることはできない。実際、アメリカでは「株式の死」と言われた1970年代の不況を乗り越えて以来、80年代から今日に至るまで景気拡大と株価上昇が続いてきたが、その背景の一つが、要所要所で行われた歳出拡大による景気支援策だった。
今後、トランプ政権が本気で歳出削減を進めていくとなると、長期金利が下がり、事業が行いやすくなり、家も買いやすくなるなどアメリカの景気にとっては良いことが多くなろう。しかし一方で、公共投資は少なくなる。公共投資が多い場合は、幅広くその恩恵を受ける企業群が出てくる。しかし、公共投資が少ない自由な経済では勝者もいれば敗者もいる。このことを考えると、これからのアメリカは過去30年以上株価が上昇した時とは違った経済になるかもしれない。この視点で株式マーケットを見ることが必要なのではないかと感じる。
そんな中、まず当面は "長期にこだわらない"分散投資を進めることが得策だろう。例えば主要指数に連動したインデックス・ファンドや、よりリスクを抑えたMMF(マネー・マーケット・ファンド)などに資金を投じることだ。依然として潜在的な成長率はハイテクセクターが高いと考えるが、正直、現段階でハイテクセクターだけに資金を集中させるのは時期尚早かもしれない。
◆調整続くAI関連セクターでいま、注目すべき銘柄は?
マグニフィセント・セブン(M7)については前回も記したが、過剰投資が指摘されるAI(人工知能)開発関連のマイクロソフト やAI半導体の企業はいったん外しておくべきだろう。なぜなら、あくまで現時点でだが、「チャットGPT」を始めとした生成AIモデル自体は多額の投資に見合う収益を稼ぐビジネスモデルになっていないからだ。評価の高いAIモデル、メタ・プラットフォームズ の「Llama(ラマ)」は無料で提供しているし、「ディープシーク」登場以降、低コストで提供する生成AIモデルが続々と開発されつつある。すでに価格競争が進んでいるAIモデルだけで収益を得ることは難しいのだ。
