だが、今後の展開については現時点では"白紙"だ。いま、同社周辺は目まぐるしい動きを見せている。半導体設計事業とマーケティング事業についてはブロードコムが買収を検討中と報道された。ブロードコムではAI半導体の顧客が急増しており設計能力を増強したいのだろう。だが、半導体設計に熟知したタン氏が就任することによってインテル側がどのような判断を下すか。

 一方、苦戦が伝えられる製造部門は、台湾積体電路製造(TSMC) と合弁会社をつくり、建設が予定されている新工場の運営をTSMCが担うというスキームが有力視されている。さらにここに来て、エヌビディア、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD) 、クアルコム など、アメリカの代表的なファブレス半導体メーカーに対してTSMCが合弁会社に加わるよう要請したことが伝わっている。

 TSMCとしてはトランプ関税の影響を考えれば、アメリカ進出を積極的に進めなければならないが、かと言って外国企業にインテルを委ねることをトランプ政権は良しとしないだろう。そこでTSMCと密接な関係を築いている各社の出資を募って話を進めようとしているわけだ。

 インテルの工場は国内半導体業界を支援するCHIPS法の対象だが、はっきり言って現在のインテルにはそれを生かす能力はなかった。だからこそ、TSMCが主導するこのスキームが成功すれば、CHIPS法を一定の成果に結び付けることにつながるかもしれない。もっともこのCHIPS法自体が、"補助金嫌い"のトランプ大統領によって取り下げられる可能性もあるのだが。

 スマートフォンへの対応や微細化の流れに乗り遅れ、24年12月期には創業以来最大となる180憶ドル超の巨額赤字に陥ったインテル。トランプ政権の意向があるとは言え、なぜ、各社が同社に興味を示すのだろうか。これはやはり、同社がCPU(中央演算処理装置)では、以前ほどではないにせよ大きな市場シェアを占め、すでに世界中に顧客を有していることが大きい。そんな中、タン新CEOがどのような立て直し策を採っていくのか。この結果いかんによっては、今後の半導体セクターの"一筋の光明"となるかもしれない。


【著者】
今中能夫(いまなか・やすお)
楽天証券経済研究所チーフアナリスト 

1961年生まれ。大阪府立大学卒業。岡三証券、シュローダー証券、コメルツ証券などを経て2005年より現職。1998~2001年、日経アナリストランキングソフトウェア部門1位、2000年、同インターネット部門1位。ハイテク業界、半導体業界を対象にした綿密な企業分析に定評がある。楽天証券の投資家向けサイト「トウシル」で注目企業の詳細な決算分析動画およびレポートを随時、公開中。


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