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 自動車運転免許を取得するためには、運転の技能教習はもちろんのこと、交通法規を習得するための筆記試験があります。それらは、公道を走行するにあたって必要不可欠なスキルです。
 ところが、めでたく免許を取得したにもかかわらず、いざ公道デビューをすると自動車教習所では習わなかった出来事に直面することが少なくありません。今回取材に応じてくれた初心者ドライバーもその1人でした。

◆急遽転勤を命じられて運転免許が必要に

 畜産関連の輸入商社に総合職として勤務していた鎌田さん(仮名・24歳)。入社後1年間は総務部に所属していましたが、2年目を迎える直前に地方への転勤を命じられました。

「ある日、総務部長が私の席までやって来て『鎌田くん、君はとてもコミュニケーション能力がありますね。何度か飲み会での君を見ていて、そう感じていたんですよ』と言われました。

 一体何のこと?と思いましたが、要するに『人当たりが良いから営業職が向いている』とのことでした。総務部は自分のペースで仕事もできて居心地が良かったのですが、4月からなんと営業部へ転籍となりました。しかも、東京とは真逆の地方営業所への異動なんです」

 まさに青天の霹靂だったそうですが、異動の打診の最後に「あと、会社持ちで自動車運転免許を取得してほしい」と言われた鎌田さん。その日から都内の自動車教習所に通うことになったそうです。

◆ようやく免許は取れたものの……

 学科試験は問題なくパスしていたのですが、路上教習で手こずり、同期の教習生より多く追加試験を受けたという鎌田さん。なんとか免許は交付されたものの、全く自信がなく、8歳年上の兄に助けを求めたそうです。

「某自動車メーカーの営業をしている兄は、学生のころ自動車部に入っていた大のクルマ好きなんです。

 私が免許取得の報告をすると、とても喜んでくれて『そうか、おまえもクルマデビューだな。俺のクルマをしばらく貸してやるから、プライベート教習付き合ってやる』と言ってくれました。とてもじゃないですが、1人で運転なんて全く想像できなかったので、兄には感謝です」

 それからというもの、週末を利用して鎌田兄弟は都内の幹線道路や首都高で運転の練習に励んだといいます。

◆教習所で習わなかった兄からのアドバイス

 赴任までの日が迫るにつれ、鎌田さんの運転技術も少しずつ上達し、運転中も兄との会話ができるほど余裕が出てきたそうです。

「兄の提案で、赴任先まで高速道路で行くことになりました。今までは、高速といっても首都高止まりで、あの混雑した合流や車線選びなどについては習得できていたのですが、本格的な高速道路は初めてだったので、少し緊張しました」

 それまでは、時速60キロを出すことが精いっぱいだった鎌田さんですが、赴任先のインターチェンジまでは瞬間的に100キロのスピードを出すことにも挑戦したといいます。

「ハンドルにかぶりついて制限速度いっぱいの100キロ走行にチャレンジしている時、兄がいきなり『ほら、左前方を走っている白のクラウン、あれには気をつけなきゃいけないんだよ』と言ってきました。

 最初は何を言っているのかわからなかったのですが、追い抜きざまに目をやると、青い制服とヘルメットを被った警察官が乗車している光景が見えたのです。

 兄は続けて『あの白いクラウン、”覆面パトカー”といって取締りをやってるから気をつけろよ!』と教えてくれました」

◆前方の車をあおったらまさかの…

 兄と一緒に臨んだ短期間の運転教習を終え、赴任の少し前に単独で新天地へ向かう際、鎌田さんは悲劇に見舞われます。

高速道路走行はずいぶん慣れてきたので、その日は少し調子に乗って追い越し車線を走行していると、制限速度で走行する前方車両に追いつきました。