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英国の法を侵さない速度域でも運転が楽しい

「誰しも妥協のないクルマを目指すと思います。しかし、結局は妥協があるんです」。リマックの主任技術者、マティヤ・レニッチ氏が話す。エンジニアらしい、現実的で率直な意見だと思う。

【画像】1904psの電動ハイパーカー リマック・ネヴェーラ 超高性能なBEV 日本発オウルも 全121枚

だとしても、英国の法を侵さない速度域でも、リマック・ネヴェーラは運転が楽しい。穏やかなドライブモードのままで。


リマック・ネヴェーラ(欧州仕様)

彼が続ける。「ソフトウエアを変えるだけで、幾つもの個性を与えられます。それが、わたしたちがお見せしたかったことの1つです」

「予め設定した数種類のモードを実装しています。前後のトルク分配やダンパーの減衰力、アクティブエアロ、ステアリングホイールやアクセルペダルのレスポンスなどが変わります。小さなことですが、実際に変化を感じ取れると思います」

カタログ上の航続距離、547kmへ近づけるには、レンジ・モードを選ぶ必要がある。リアモーターのトルクが制限され、ほぼ前輪駆動状態になるが、運転は楽しいままだ。

回生ブレーキには3段階の強さがある。レニッチはミディアムが好きだというが、筆者も丁度いいと思った。

ステアリングは極めて鋭い。車高が低くシャシーは強固で、2150kgある車重を完全に制御下においている。電気モーターらしい、ヒューンという甲高い響きが聞こえる。リマックは音響にもこだわっている。

ドライブモードは5つあり、クルーズ、スポーツ、トラック(サーキット)、ドリフトと、徐々に本来のパワーが開放されていく。ドリフト・モードが最もアグレッシブな特性なものの、フロントモーターのトルクは制限されるそうだ。

4基のモーターで最高出力1904ps

「クルマをゼロから開発する時は、まずタイヤからスタートします。どれだけグリップ力を得られるのか一定のデータがあるので、それを僅かに上回るパワートレインの設計を導けるのです」

ネヴェーラには、ミシュラン・パイロットスポーツ4が選ばれた。フロントが275/35 R20、リアが315/35 R20という、スーパーカー・サイズだ。


リマック・ネヴェーラ(欧州仕様)

リアの駆動用モーターは、1基当たり635psを発揮。フロント側は299psと、リアの半分以下のパワーしかない。これがそれぞれ2基づつ載り、システム総合で1904ps、電気的な表現では1400kWを実現している。

フロントタイヤは、クルマの進路を変える役割も担う。加速時は、重心がボディ後方へ移動する。リアタイヤの方が、より多くのパワーを受け止められる。

「鋭く加速する状況では、ほぼすべての荷重がリアタイヤに掛かるため、多くのトラクションを得られます。フロントモーターのパワーとトルクを増やしても、トラクションが足りず、フルスロットル時には活かしきれません」。レニッチが説明する。

ネヴェーラの能力を、完全に引き出してみたいところ。後日、改めてクルマをお借りするしかない。

圧倒的なパワーをいとも簡単に展開

「ドリフト・モードが1番楽しめると思います」。レニッチが笑みを浮かべながら続ける。「よほど深いドリフトアングルでは、僅かにフロントモーターもトルクを生み出しますが、通常はフロントが0%、リアが100%になります」

「スタビリティとトラクションのコントロールはオフです。ドリフト時のスモークの量にも配慮しました。前後のタイヤに相互関係があり、フロントとリアのタイヤの速度差が80km/h前後で、1番多くスモークが出るんです」


リマック・ネヴェーラ(欧州仕様)

一般道でそれを試すつもりはないが、ステアリングは正確に反応し、ペダル類の重み付けは理想的。フィードバックも豊かで、一体感が高いことは間違いない。ドリフトの制御も難しくなさそうだ。

0-160km/h加速を4.3秒でこなす能力を発揮すれば、さほど遠くまでは走れないだろう。それでも乾燥した路面であれば、圧倒的なパワーをいとも簡単に展開してみせる。ドライバーの具合が悪くなるほど。

スペックの数字には、どこかで見覚えがあるかもしれない。実のところ、ピニンファリーナ・バッティスタはネヴェーラとベースを共有している。筆者は、以前にサーキットで試乗した経験がある。

レニッチも、それを隠すことはない。「シャシーなど、このネヴェーラと(バッティスタは)共有部分が多いことは事実です。しかし、フィーリングを変える違いも少なくありません」

「サスペンションやブレーキのチューニングのほか、トルクベクタリング機能など、異なる部分は多岐に渡ります。クルマの印象も違いますし、顧客層も若干違うのです」

急進的なリマック・グループの成長スピード

クロアチアには、自動車産業がほぼ存在しなかった。ところがリマック・アウトモビリは、世界最高峰の電動ハイパーカー、ネヴェーラを150台生産する計画を立てている。ピニンファリーナにも、同数を提供する予定だという。

技術力は極めて高く、ケーニグセグやポルシェなどをクライアントに抱える。フォルクスワーゲン・グループは、自動車部門のリマック・アウトモビリを買収。ブガッティとの合弁企業が誕生している。


左からリマックの主任技術者、マティヤ・レニッチ氏と、筆者

「リマック・グループは、2つの会社で成り立っています。ブガッティとリマックのハイパーカーを提供するブガッティ・リマックと、電気自動車用コンポーネントを供給するリマック・テクノロジーという構成です」

リマック・グループの成長速度は、ネヴェーラと同等に急進的といっていい。しかし、晴れた午後を心地よくドライブできるネヴェーラと同じくらい、素晴らしい企業だともいえるだろう。レニッチもその1人だ。

彼を介して1台注文できるか聞いてみた。「もちろん。担当人物を知っていますから」。と笑ってくれた。もし筆者に充分な口座残高があれば、このまま商談を進めたはずだ。

リマック・ネヴェーラ(欧州仕様)のスペック

英国価格:240万ポンド(約3億8640万円)
全長:4750mm
全幅:1986mm
全高:1208mm
最高速度:415km/h
0-100km/h加速:1.95秒
航続距離:547km
電費:3.2km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2150kg
パワートレイン:クワッド永久磁石同期モーター
バッテリー:120kWhリチウムイオン
最高出力:1904ps(システム総合)
最大トルク:240.2kg-m(システム総合)
ギアボックス:シングルスピード・リダクション